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62話 Be my friend!(SIDE YUZUHA)

 「鹿島田さんまじすごいわ、あのハゲ校長の話を終わらせるなんて!」

 「ホントホント! これで彼ピと一緒にお昼にいけちゃう!」


 全校集会での校長に言った一言は誰にとっても衝撃的だった。

 何せ、私を含めあの場にいた人のほとんどが、もう1時間かかることを覚悟していたのだから。


 あの地獄の時間を短くした鹿島田さんはすごいとは思うし、みんなが讃えたくなる気持ちはものすごくわかる……!

 だけど……!


 ——頼むから私の隣でやらないでほしいんだけど!


 全校集会からの帰りも彼女の周りに集まってきたし、教室についてからも、そしてホームルームが終わった今この瞬間も

 彼女の周りには褒め称える人たちでごった返していた。


 カバンを持つと、鹿島田さんに群がるクラスメイトたちをかき分けながら抜け出していく。

 早めに終わった分、奏翔に抱きついたりスリスリしたり、事と次第に寄ってはあんなことやそんなことしまくるんだ!


 「あ、ちょっとまってよー!」


 何か後ろから声がしたような気もするけど、今日は振り返ってる時間はない!

 奏翔が家で待っているんだ!



 「よかったぁ、パパもママも両方いなくてお昼どうしようかと思ってたんだよね〜」


 学校の最寄駅のショッピングモール内のファミレスに私はいた。

 そして、目の前には転入生の鹿島田有愛さんの姿。

 

 急いで帰ろうとしたところ、彼女に捕まってしまった。

 今の家には先月の終わりに引っ越してきたばかりで、周りに何があるのか分からないのでいい感じの店がないかと聞いてきた。

 で、このファミレスの場所を教えたら、1人で食べるのは寂しいから一緒にと半ば強引に連れてこられた。


 奏翔にはLIMEで遅くなると送ったら……

 『わかった』といつもの様に素っ気ない感じのメッセージが返ってきた。

 むぅ……そこは寂しいとか言ってくれたら夜にこっそりちゅーとかしてあげるのに!

 

 「……あの、鹿島田さん?」

 「あー……アリアでいいよ、日本の国籍だとママの苗字を使えって言われたんだけど、慣れなくて」

 「何で私を誘ったの?」

 「一番最初に話したのがユズっちだからさ」

 「……ユズっち?」

 「あれ? 違ったっけ? たしかユズハ・ワダヅカだよね? だからユズっち」


 鹿島田さん……もとい、アリアさんはニコニコとした表情でそう告げていた。


 「もうさ突然日本で暮らすとかパパが言い出した時はびっくりしたよ、しかも本当に実行するし、おかげであっちの友達にはろくに別れの挨拶もできなくて〜!」


 聞いてもいないことを話し出すアリアさん。

 見事なるマシンガントークっぷりだ。


 「でさ、日本の高校っていったら制服で、この高校の制服って結構可愛いって聞いたから楽しみにしてたのに、急すぎて間に合わなかったんだよね、学校からは私服でもいいとか言われたけどね」

 「……それじゃ、その制服は?」

 「前に見ていたアニメの制服、可愛いからパパに頼んでネットショップで買ったんだよ」


 道理でみたことがあると思った。


 「……海外でも日本のアニメってみれるんだ?」

 「見れるよ、パパが日本のアニメフリークで見ることができるサブスクに契約しているんだよ、そのおかげで私も昔から日本のアニメにどっぷりつかっちゃんだけど」

 「そうなんだ……」


 見た目からして、アニメを見るようには見えないけどなぁ……。

 隠れオタクに該当するのかもしれない。


 「ユズっちはアニメとか見ないの?」

 「ち、小さい頃は見たたけど、今はほとんどみないかな〜」

 「そうなんだ、知ってたら夜まで語り合おうかと思ってたのに」


 ごめん、アリアさん……。

 ガッツリ今でもアニメ見てます。リビングのHDDにまだたんまりと録画が溜まってる状態デス。

 

 「おっと、注文忘れてたね、何頼む? 私は……このサラダうどん大盛りとかにしとこうかな!」


 アリアさんはメニューに書いてある期間限定の食べ物を指さしていた。

 

 「私はホットケーキセットでいいかな……」

 「何だかかわいらしいねえ〜」


 私が注文しようとしたものを見て、アリアさんは目をキラキラと輝かしていた。

 これが奏翔と一緒ならサラダうどんの隣に載っているトマトソースハンバーグを注文するところだけど。

 

 学校の人たちには私の本当の姿を知ってもらいたくなかった。

 本当の私を知ってるのは奏翔だけで充分。



 「たべすぎた〜、うどんって初めて食べたけどお腹にくるねー! 運動しないとダメかも」


 ファミレスから出ると、アリアさんは自分のお腹をさすりながら大きな声で話していた。

 用事は済んだと思うし、私はそろそろ家に帰ろ——


 「うそ!? ここにマニメイトあるの!?」


 突然アリアさんが大声を上げていた。

 私も彼女と同じ方を見ると、アニメ専門店の看板が釣り上げられていた。

 そう言えば、先月の終わり頃にオープンしたってLIME公式アカウントで連絡がきていたような。


 「ユズっち! ちょっと行ってみない!?」


 アリアさんは私の手を取ると、返事をする前に店に向かって歩き出していった。


 「ちょっと私、いくとはいってなぁぁぁぁぁぁ」


 私の叫びは彼女の耳に届くことなくただ虚しく響いていくだけだった。


 「ふぅぅぅぅぅ!!! 初めてきたけど何ここ私にとって天国だよ!」


 アリアさんは店の入り口に立ち、周辺の商品を見ながらまたもや大声をあげていた。


 「しかもこれは、アニメ『パッフェルベル』の主題歌が流れてる! このアニメ大好きなんだよね! 何で主人公はいとこの雪名ちゃんじゃなくてあの謎の少女を選んだんだろうか」


 アリアさんはこちらに問いかけてきたが、私は知らないふりをする。

 ちなみに私もこの『パッフェルベル』は見てたし、ゲームもプレイ済でいとこの雪名ちゃんも捨てがたいがやっぱり謎の少女のみゆが正ヒロイン。もちろん異論はみとめよう。CVの堀牧さんの声が可愛すぎる件。


 「お、『あちらこちら』のマンガがある! お、こっちはパパの好きなロボットアニメのプラモもある! 今度パパを連れてきてどさくさに紛れて買ってもらおう」


 それからもアリアさんは興奮気味に店内を廻っていった。


 

 「いやあ、天国すぎてずっと中にいたい気分だよ!」

 「……う、うんたのしそうでよかった」


 外に出る頃には空が微かに赤くなっていた。

 ずっとマニメイトで彼女に連れまわされていたため、私の体はぐったりとしていた。

 早く奏翔の体に抱きつかないと干からびてしまうかもしれない。


 「さてと、こんな時間だしそろそろ帰ろうか!」

 「そ、そうだね……それじゃ、またあし——」

 「——その前に!」


 え……まだ何かあるの!?


 「せっかくだからLIME交換しない?」

 「私と?」

 「そ、日本で初めての友達の証として!」


 そう言ってアリアさんはスマホを取り出し、画面にLIMEの登録用のQRを表示させていた。

 

 「……友達」

 「うん、ユズっちならいい友達になれそうな気がするんだよね!」


 アリアさんは屈託のない笑顔でそう答えていた。

 友達か……。

 あの時以来、奏翔だけで充分だと思っていたけど。

 さすがに無碍に断るわけにもいかず、私は彼女のQAコードを読み込んで登録完了させた。


 「センキュー! また今度一緒に遊びに行こうね!」

 

 そう言ってアリアさんは手を振りながら走り出していった。


 「……友達かぁ」


 何とも言えない気分になりながら、私は駅のホームへと向かっていった。




 「ただいまぁ〜」


 玄関のドアを開けると、ダイニングのドアが開いた。

 その奥には今日一番会いたかった奏翔の姿があった。


 「おかえり、随分と遅かったな」

 「うん……アリアさんに連れまわされてた」

 「……誰かとおもったら、あの転入生か」

 

 私は「うん」と答えると奏翔の体に抱きついていった。


 「はぁ〜……奏翔の体気持ちいい〜」


 彼の体に抱きついた瞬間、安堵や安らぎなど最高の心地よさを感じていた。


 「……あれ?」

 

 何か違和感を感じていた。


 「どうした?」

 「……いつもならすぐにため息つくのに」

 

 こうやって抱きつくたびに奏翔は呆れたと言わんばかりにため息をつくのだが、今日に限ってはそれがなかった。

 

 「……お望みながらいますぐため息ついてやろうか?」

 「ため息よりも奏翔の喘ぐ声が聞いてみたいかも」


 さすがにこの返答には盛大にため息をついていた。


 「もっと抱きつきたいから着替えてくる! 何で抱きつかれるのがいい? キャミ? 下着? それともはだ——」

 「——いいからさっさと着替えてこい!」

 

 結局いつものTシャツにハーフパンツ姿でずっと奏翔に抱きついていた。


 「……ねぇ奏翔?」

 「何だよ?」

 「何かあったの? いつもなら重いとか疲れたとか文句言うのに何も言ってこないなんて」

 

 ソファで彼の膝に座りながら抱きついているが、嫌がるそぶりを見せなかった。


 「……うるせーよ、黙ってこうしてろ」

 

 奏翔は私の体自分の方へと引き寄せると力強く抱きしめていった。

 今までなかったことだったので、私の欲求不満度が爆発寸前になりかけてしまっていた。

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