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56話 私たちのギルドはまだ始まったばかり……!

 「奏翔、大問題が発生したんだけど」

 「……その前に俺から離れてくれないか?」

 

 柚羽は不満そうに「むぅ〜」と声を上げながらゆっくりと俺から離れていった。

 

 「実は私、奏翔に抱きついてないと押し倒しちゃう病気にかかってるんだよ?」

 「……せめてこっちが包丁持ってる時は我慢してくれ」


 LEOでギルドを作ってからの翌日の昼。

 夕飯の余った素材で昼飯を作ろうと包丁を持った直後に柚羽が抱きついてきた。

 これが何かを切ってる時なら大惨事になるところだった。


 「安心して、指切ったら私が奏翔の指をちゅーってしてあげるから!」

 「……それだけで済む程度ならいいけどな」


 そう言いながら俺はひき肉と卵焼きを細かく刻んでいきながら、話を続けることにした。


 「で、何が大問題なんだ?」

 「ギルド作ったのに全く人が入隊希望が入らないことと、今すぐ奏翔に抱きついてクンカクンカとペロペロしたい欲求」 

 「前半は色々と対策はあるから後でやるとして、後半に関しては我慢しろとしか言えないな」

 「うーん、むしろ後半のほうが重要度高いんだけどなあ」


 昼飯の準備ができたので、テーブルの上に作った料理を置いていく。

 その間に柚羽はダイニングテーブルの指定席につきながら、こっちをじっと見ていた。


 「ってかそのパーカーないと思ったらお前が着てたのかよ……」

 「うん、奏翔が一緒に寝てくれないから仕方なくパーカーで妥協した。返してほしければ後で私と一緒に寝ること!」

 「……いいからさっさと飯食え」

 「むぅ……」


 柚羽は納得いかないといった表情を浮かべながらも、テーブルに置いたサンドウイッチを食べていく。


 「で、ギルドのメンバーについてだが」


 俺が話を始めると柚羽は黙ったまま首を縦に振っていた。


 「待ってるだけじゃなくて、ゲームでの声掛けや呟きったーなどのSNSを使って勧誘をしないとダメだろうな」


 おそらくだが、ギルド機能追加されてからかなりの数のギルドが作られたと思う。

 他のネットゲーでもあることだが、ユーザーがよく集まる場所で勧誘するのは当たり前のことになりつつある。

 LEOでもユーザーが集まる中央都市と呼ばれる場所にはフレンドやクエスト募集などが行われている。ギルドのメンバー勧誘もそこでやっている人が多いだろう。


 「SNSは設定とかが面倒なのですぐできると言ったら、ゲームでの声かけぐらいか」

 「ってことは私たちも中央都市で勧誘をしなくちゃダメってこと?」

 「そういうことになるな」

 「もしかしてずっと?」

 「さすがにそれは疲れるから時間を絞った方がいいかもしれない」


 ネットゲーが賑わう時間はだいたい22時から遅くても1時ぐらいまでだと言われており、その時間帯はかなりの人数がログインすると言われている。

 現にその時間帯のLEOの中心となる街、通称『中央都市』では町中がプレイヤーで埋め尽くされている。

 

 「やるとしたら、その時間でやった方が効率がいいかもしれない」

 「わかった、とりあえず22時までは……」

 

 そう言って柚羽はニコニコとした表情で俺の顔をじっと見る。


 「もう一つの問題の今すぐ奏翔に抱きついてクンカクンカとペロペロしたい欲求を——」

 「……それは自分でどうにかしてくれ」

 「えー! むしろこっちが私にとっての大問題なんだよ!」


 下手にツッコむと倍以上になって返ってきて、疲れも倍増以上になるためため息で返すことにした。



 そして時刻は俺が指定した時間になり、昨日と同じ様に柚羽のウイッチをテレビに接続してからLEOを開始した。

 俺の読み通り、この時間の中央都市にはユーザーのキャラが溢れており、そのキャラたちを獲得しようとギルドのリーダーかと思えるキャラが必死に全体チャットで勧誘をしていた。


 「……あのさ、奏翔?」

 「どうした?」

 「勧誘するのはいいとして、何で私のサブキャラなの?」

 「……そのキャラの見た目とか服装に釣られないかなって」

 


 柚羽が使用しているのはライガではなく、サブキャラ。

 俺の好みを反映させたキャラなのか定かではないが、全体的にスタイルの良いキャラとなっており、服装も露出度の高いものとなっていて、柚羽がよく使う言葉で現すなら、「えっちぃ」というが合っていた。


 「それなら奏翔のセシリアちゃんでもよくない? お胸大っきいし、可愛らしい感じになっていると思うけど」

 「そもそも服装がほぼデフォルトのままだからな」


 俺の使っているキャラの服装は始めた当初からほとんど変わっていない。

 能力に影響があるなら、いろんなパターンのものを用意するが、このゲームにおいて服装はあくまでアバター要素としてなので変更したところで能力に影響はでない。そもそも俺はそう言った要素に興味がない。


 「むぅ……たしかにいろんなユーザーがキャラの前に集まってきてる気がするけど」

 

 画面には柚羽のサブキャラに釣られたのかわからないが、ユーザーが集まりだしていた。

 効果はあったのかもしれないな。


 「うぅ……なんかこっちまで恥ずかしくなってきたよ、こういうの何て言うんだっけ?」

 「共感性羞恥だっけ?」

 「うん、それそれ! だからそれを和らげるために後ろでぎゅっと抱きしめてくれない? ついでに耳元でえっちぃ感じのウィスパーボイスで囁いてもらえると——」

 「……それ、余計に恥ずかしくなるだろ」

 

 と、いうか和らげるとか言ってるが、こいつの単なる要望だ。


 しばらくの間、柚羽のサブキャラでチャットを送り続けていた。

 キャラを見るために立ち止まるユーザーはいるが、入隊希望を出すまでには至っていない。


 「そろそろログイン数も減ってくる時間になるし、今日はやめとくか」

 「うん、そろそろやめないと恥ずかしさのあまり、奏翔の布団に潜り込んじゃうかもしれない」

 「……潜り込むなら自分の布団にしろ」


 柚羽の言うことに思わずツッコんでしまっていると、テレビのスピーカーからピロンと甲高い音が聞こえてきた。

 画面を見ると……


 「柚羽、入隊希望来たぞ」

 「……やっぱそうだよね?」


 おそらく入隊希望を送ってきた相手らしきキャラクターが柚羽のサブキャラの目の前に立っていた。


 「ねぇねぇ奏翔……これってさぁ」

 「……やっぱお前も同じこと思ったか?」

 「うん……」


 そのサブキャラは『究極勇者ライガ』に登場する主人公ライガのライバルキャラのフウヤにそっくりだった。

 そして送られてきたメッセージには……


 『チーム名に惹かれて送っちゃった ワイもあのアニメ大好きだよ〜!』

 

 と書かれていたのだった。

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