55話 ここが私たちのハウスね
「かなとー、LEOにギルド機能追加だって!」
「そう言えば、公式のLIMEで来てたな」
3月もあと数日となった日の夜。
風呂からあがった柚羽は『俺の嫁』と書かれたTシャツにジャージのズボン姿でダイニングに戻ってきた。
いつも風呂に入りながら専用のカバーにスマホを入れているので、そこで先ほどの情報を知ったのだろう。
「最近やることがなくなってたから、これは楽しみだよね〜」
購入してからほぼ毎日、LEOは柚羽とプレイしていたため、ストーリーはクリア済み。レベルに関してもどの職業も現状カンストしているため、今はやることがないに等しかった。
やることと言ったらたまにフィールドに出ては、初心者のフォローをしたり、突然発生する緊急クエストに行って周りと協力しながらボスを倒すぐらいか。
俺たち以外のやりこんでいるユーザーも同じようだったので、誰もがこのギルド機能追加は待ち遠しかったに違いない。
「見た感じだと、ギルド作ったらギルドルームが作れて、モンスターを倒してもらえる素材を使って増築とか家具を作って配置したりできるみたいだよ」
「最近のネットゲーの基本的なものができる感じだな」
「ってことは、ゲーム内で私と奏翔の2人だけの空間が……」
「……言ってることが気持ち悪いし、ギルドだから他のユーザーも来るんだぞ?」
「えー、私と奏翔だけでいいよ」
「それだと作る意味ないだろ……それにギルドレイドとかもあるからメンバーは多い方がいいに決まってるだろ」
そう告げると柚羽は不満そうに口を尖らせていた。
「むぅ……とりあえず作るだけ作ってみようよ!」
「そうだな、先に風呂入ってくるから準備だけしておいてくれ」
「うん、やっぱり下着は黒い方がテンション上がったりする?」
「……悪い、お前が何をいってるのかよくわからないんだが、マジで」
今度は頬を膨らませていた。
風呂から上がってリビングに戻ると柚羽がウイッチをテレビに接続してLEOをプレイしており、ギルドに関するチュートリアルを進めていた。
俺が来たことに気づくた柚羽は振り返ってこちらを見ていた。
「なんか、ギルド作るのにお金がかかるみたい」
「お金といってもゲームのお金だろ?」
「そうだけど、この金額見てよ」
テレビにはギルド作成料金と表示され、結構な金額が要求されていた。
「前にこれぐらい持ってなかったか?」
「サブキャラ用の服を買うのにほとんど使っちゃった……」
「……なるほど」
やることがなかった期間に柚羽はメインのライガの他にサブの女キャラを作っていた。
たしか『奏翔が喜ぶようなキャラを作って見せるから!』と意気込んでいたな。
「わかったよ、俺がお金出すよ」
「ありがとう! 借金の肩代わりに柚羽ちゃんおいとくから好きにつかってね……?」
「……のんびりでいいからゲーム内通貨で返せ」
「そこはテレビに出てくる借金とりのように私で何をしようか考えてほしいんだけどなあ」
「……ゲームのお金送ったら早く作成してくれ」
テレビには柚羽のキャラにお金が贈られたログが表示されていた。
「それじゃ、ギルド権利ゲットしたから早速ギルドを作ろうと思ったけど、ギルド名どうする?」
すぐにテレビにはギルド名を入力する画面が映し出される。
「何か思いつく名前あるか?」
「そうだなあ……」
柚羽はウイッチのコントローラーとは別にUSBで接続しているキーボードで入力していく。
「これならどう?」
自信たっぷりに答える柚羽。
テレビ画面には『愛の巣』と書かれていた。
「却下だ!」
「何でよー!」
「それじゃ聞こう、おまえならこんなギルド名のところに入りたいと思うか?」
「……絶対やだ」
間をおいて答える柚羽だった。
「それなら奏翔が考えてよ!」
柚羽は俺の方へとキーボードを渡してきた。
「しょうがない、柚羽が一発で納得するような名前をつけようじゃないか」
意気込んでキーボードを叩いていった。
「……あのさ奏翔」
「何だよ今度こそ素晴らしい名前だろ?」
「ずっと言わないでおこうかと悩んだけど、我慢できないからもう言わせてもらうとさっきから厨二病っぽいのばっかじゃん!」
「『愛の巣』よりはずっとマシだと思うけど?」
「他のユーザーが入ってきた時に、チーム名の由来聞かれた時恥ずかしいでしょ! 恥ずかしさから変な気分になっちゃったらどうするの!」
「……前半はいいとして、後半は俺はまったく関係ないよな?」
ちなみに俺が考えたのは『漆黒のナハト』『始祖なるノスフェラトゥ』『闇に葬られしアプカリプス』
全て却下されたしまったので、最後に『闇夜に羽ばたくラーべたち』と入力したがこれもダメだった。
「やっぱりここは『愛の巣』で!」
「いや、『漆黒のナハト』だ!」
2人とも一歩も退こうとしないまま、かなりの時間が経っていた。
「……結構時間経ったけどどうする?」
「むぅ……奏翔が『愛の巣』でオッケー出せばいいだけなのに」
「それを言うなら『始祖なる』……いや、やめよう堂々巡りになる」
少し疲れたので、柚羽が持ってきたお菓子を摘もうとした時、あるものが目についた。
「……柚羽、いいのが思いついた」
「先に言っとくけど、『ブラッドロンド』とか却下だよ?」
厨二病っぽいと言っておきながらおまえもだろと言いたくなる気持ちをグッと抑える。
「『ライトニングナイツ』とかどうだ?」
「それってライガがつくった騎士団だよね?」
「そうだな」
お菓子を取ろうとした時に柚羽の使っているタンブラーに貼られたシールが目についたと同時にこの名前が浮かんできた。
柚羽の言う通り、アニメ『究極勇者ライガ』にて主人公ライガがつくった騎士団のことだ。
そもそも、柚羽が使っているキャラがライガをイメージしたものだし、違和感はないだろうと判断した。
「私の『旦那』が作ったものなら断れないからそれに決定で!」
ギルド名戦争が終結を迎えた瞬間だった。
柚羽がキーボードで名前を入力すると、画面がギルドハウスの中へと変わっていった。
「さてと、これからだけど……ものすごい疲れたよ〜」
「……奇遇だな俺もだ」
「ほんと!? 私たち相性ぴったりかもね! 次は体の相性も確かめるために——」
「——そんじゃ自分の部屋にいくから」
「最近流すこと多すぎだよ、奏翔のばかあああ!」
柚羽の叫びを聞き流しながら俺はリビングを後にした。
お読みいただきありがとうございました!
2章に突入です!
まだまだ2人のドタバタ劇は続いていきますので是非お楽しみに!
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