51話 何故は俺はこんなところにいるんだ……
「初めまして! ボク、倉見咲奈っていいます」
「……藤野奏翔です」
開店直後のファミレスで俺は依緒ちゃんの親友、倉見咲奈と対面していた。
一人称や黒いショートボブの髪型やジーンズ系のジャケット姿から一瞬男かと思ったが、高い声で女だと認識することができた。
ってか、現実にいるんだな……ボクっ娘って。
「おいおい、もうちょっと愛想良くしろって!」
俺の隣ではほぼ完徹でナチュラルハイになっている虎太郎が俺の脇腹をこづいていた。
何で俺がこんなところにいるかというと。事の始まりは数時間前のこと。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『おっす奏翔、いやあ今日も爽やかな朝晴れだぜ!』
またもや早朝にこいつの喧しい声に叩き起こされた。
部屋の時計を見ると、学校がある時でも起きてるか微妙な時間だ。
「……今何時だと思ってんだ?」
『朝日が昇ったらもう朝だぜ? 昔の偉い奴は良いこと言ってたんだな!』
「で、何のようだ? もちろんこんな朝早くから電話してくる正当な理由があるんだよな?」
「いやさ、サナっちがファミレスでまた会おうって言ってきたんだけどさ」
「……さっさと言ってこい、それじゃ俺は寝る」
「ちょっと待ってくれって! せっかちな奴は女の子に嫌われるぞ!」
虎太郎は最後にガハハと笑っていた。
アニメや漫画以外でそんなふうに笑う奴存在したのか……。
「この前、奏翔の話をしたら会ってみたいって言い出してさ」
「そもそも何でそこで俺の話を出すんだ……」
「最近ゲームでチーム作ったんだけど、メンバーが欲しくて誘えそうなのが奏翔だったからさ」
「……言っとくが俺はソシャゲはやらないぞ」
「そういや、前も聞いたような気がするが、何でやらないんだ?」
「課金で必要以上に金を使っちゃうからだ」
前に柚羽と気になるソーシャルゲームがあってプレイしていたのだが、ガチャでそれぞれの好みのキャラを手に入れるのに相当な金額を使い込んでしまったことがある。
しかも少し経ったらそのキャラが使い物にならなくなったことを知り、一気にやる気が失せてしまった。
その時にお金を使うなら普通にコンシューマーのゲームソフトやマンガなど形に残った方がいいというのが2人の共通の認識になっている。
「それはどうでもいいや、とりあえず9時に地元のファミレスに集合な! ちなみに奏翔が来なくてサナっちの機嫌がわるくなったら墓に入るまで恨み続けるからな!」
またもや必要なことを伝えると一方的に電話を切っていった。
マジでそろそろブラックリストに入れることを考えた方が良いかもしれない。
部屋の時計を見ると、集合時間まで1時間弱となっていた。
「……後々面倒なことになりそうだし、とりあえず顔だけだしとくか」
どうせ柚羽は昼近くまで寝てると思うし。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
と、いった経緯があったのだった。
「せっかくだし、何か頼みましょうよ! ボク、パンケーキミックスで」
「そんじゃ俺はステーキ丼大盛りで!」
「……サンドウィッチで」
パンケーキミックスはともかく朝からステーキ丼しかも大盛りときいた瞬間胃がもたれるような感覚になってしまう。
「おいおいなんだよサンドウィッチって、おまえは女子か?」
「おまえと違って朝からそんなにガッツリ行けないんだよ」
「恩田家だとこれぐらい日常茶飯事だぜ? 依緒なんかこの前朝から鯵のたたき丼大盛りで食ってたぞ」
「……マジかよ」
あの子、あの見た目でそんなに食べるのか……。
今度会った時の印象が変わりそうだ。
スタッフにそれぞれ注文していくと、虎太郎と咲奈ちゃんはスマホを取り出していた。
「それじゃメシが来るまで、レイドやってるか」
「もちろんです!」
そして2人は黙々とスマホの画面へと視線を下ろしていった。
俺、何でここにいるんだっけ?
1人だけ違う島に取り残されたような気分になりつつ、スマホを取り出していつも見る情報サイトへとアクセスしていった。
「あー……寝ちゃいましたね」
注文した食事が来ると、それぞれ食べていった。
一番早く食べ終わった虎太郎はゲームの続きをしていたが、気がつけばテーブルの上に突っ伏して寝ていた。
「必要な素材がもうすぐで集まるとかで、一睡もしてないみたいですね」
「……だから、あんな時間に電話よこしてきたのか」
俺の悪態に咲奈ちゃんは笑っていた。
虎太郎の体を揺さぶって起こそうとするが、起きる気配は全くない。
よりによって隣に座っているため、俺が移動できなくなってしまっていた。
「最悪の場合、こいつを蹴っ飛ばすしかないか……」
スマホの画面をみると、入店してから1時間ほどしか経っていなかった。
柚羽に送ったLIMEのメッセージには既読がついてないので、まだ夢の中を彷徨っているのだろう。
と、いうか……この状態どうすればいいんだ?
虎太郎が起きている時は、こいつがずっとゲームの話をしていたが。
「えっと、奏翔さん……でしたよね?」
目の前に座る咲奈ちゃんが俺の名前を呼んでいた。
「そうだけど……どうしたの?」
「私、ずっと奏翔さんと話してみたかったんです!」
突如咲奈ちゃんは目を輝かせながら俺の顔を見ていた。
「あ、その前に飲み物とってきますね、よかったら何か持ってきましょうか?」
「……それじゃ、サイダーで」
そう言って彼女にコップを渡すと、軽快な足取りでドリンクバーへと向かっていった。
ってか話をしたかったって……。
「……なんか嫌な予感しかしないな」
俺はそのままため息をついていた。
お読みいただきありがとうございました!
2章に突入です!
まだまだ2人のドタバタ劇は続いていきますので是非お楽しみに!
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