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50話 早起きは決して得だけではない

 『いやあ、あの後レイドバトルがあってさ、あそこのファミレス電波が悪いから家に帰ったんだけど、さっきまでずっと話しててさあ』

 

 次の日の朝……というか早朝と言った方がいいのかもしれない。

 俺はこいつの電話で叩き起こされた。

 よほどのことかと思って真面目に聞いていたが、普通に惚気話をされていた。


 「お前はそんな話をするために、こんな朝早くに電話かけてきたのか……」

 『いやさあ、誰かに話したくてさ!』

 「……いい迷惑だ」

 『ってことで俺はこれから寝るぜ! 今日も夕方にレイドバトル控えてるから今のうちに睡眠をとっておくぜ!』


 言いたいことを話した虎太郎は一方的に通話を終了させた。


 「……当分の間、あいつをブラックリストにいれたほうがいいのか」


 ため息をつきながら、部屋を出ていった。

 せっかく早く起きたなら、やることをさっさと済ませてしまおう。


 

 「……ふう、ある程度は終わったか」

 

 ダイニングで朝食を済ませると、すぐに掃除機をかけ始めた。

 そのあとは洗濯物を……と行きたいが、柚羽が寝ているため起きるまで待つしかない。

 あとやれることと言ったら、昼飯の準備だが、材料がないので買い出しが必要になるがいつもいく商店街のスーパーの開店時間までしばらく時間がある。


 「少しゆっくりするか……」

 

 リビングに行き、ソファに座りながらテレビをつけると朝の情報番組が終わり、熟年男性俳優の散歩番組が始まっていたが、あまり興味が湧かなかったため、テレビの音をBGMにしてスマホを見ることにした。


 「……LIMEが来てる」


 ロックを解除してLIMEアプリを起動すると、依緒ちゃんからメッセージが届いていた。


 Io.Onda

 『兄の口から朝チュンとかでてきたんですけど……助けて奏翔さん!』


 メッセージだけでも彼女がどんな顔をしているか容易に想像できた。

 にしても、実の妹にそんなことを話すのか、あの男は……。

 

 『兄も成長しようとしているんだ、生暖かい目で見守ってあげよう』

 

 と、メッセージを入力して、送信ボタンをタップする。

 返信を待ってみたが、返ってくることはなかった。


 「さてと、そろそろ買い出しに行くか」


 スーパーの開店時間まであと20分。

 ゆっくり歩いていけば開店と同時に店に入れるだろう。


 別の情報番組を映していたテレビの電源をオフにしてから家を出ていった。


 外にでると、日差しが俺の顔に直撃していた。

 顔を上げれば雲一つとない青空が広がり、3月後半になったということもあってか徐々に暖かくなっていた。

 

 「……天気がいいしどっか出かけるのもアリかもな」


 コンデジを持っていけばいい写真が撮れるかもしれない。

 そう思いながら歩いていると、後ろからビィ!と突き刺さるような音が聞こえてきた。

 その音に驚きつつ、振り向くとフルフェイスのヘルメットを被った人がバイクに跨っていた。


 「おっす奏翔、こんな朝早くからどこにいくんだ?」


 声の主は話しながらヘルメットを外していく。


 「……誰かと思ったら総一郎か」


 「よっ……」と、総一郎は声をかけつつバイクから降りるとこちらに近づいてきた。

 

 「バイクの免許とったのか?」

 「そうなんだよ、最終試験3回目でやっと合格したんだぜ!」

 

 3回も落ちるものなのか……?


 「それよりもどうしたんだよ、こんな朝早くに?」

 「夕飯の買い出しだ、そういうお前こそどうしたんだ?」

 「バイクとったら真っ先に乗せたいやつがいるから、今からそいつの家に行くんだよ」


 総一郎は待ちきれないと言わんばかりの顔をしていた。

 一体誰を乗せようとしているんだろうか。


 「ってことで俺は行くぜ、また近いうちファミレスで駄弁ろうな!」

 「『バイクで仲間がタヒったとてもいいやつだったのに』とか言われないように気をつけてな」

 「前置き長いし! こんないい日に縁起の悪いこと言うな!」


 総一郎はこちらに向かって叫びつつ、何度かアクセルを回してから発進させていった。


 「……バイクか、そういや全然乗ってないな」



 開店直後だからか、店の中に客は俺1人だけだった。

 そのおかげでレジで並ぶこともなくすんなり買い物を終わらせることができた。


 「ただいまー」


 真っ直ぐ家に帰り、ドアを開けて声をかけるが反応が返ってくることはなかった。

 どうやら同居人はまだ夢の中のようだ。

 ダイニングに行き、買ってきた食材を冷蔵庫の中に押し込んでいった。


 「……まだ昼まで時間はあるか」


 ここにいてもやることもないし、あいつが起きるまで部屋でゆっくりすることにしよう。

 

 ちなみに人間とは不思議な生き物で、寝床を目にしてしまうと、どうしても楽な姿勢を取りたくなってしまうもの。

 少しだけと思ってたらガッツリ寝てしまってたというのはよく聞く話だ。

 この時の俺もどっかの誰かのせいで普段よりも朝早く起こされた且つやることもなくて暇だったのでついついベッドの上で横になってしまっていた。

 後にあんなことが起きてしまうなんて……。



 「……ふわ〜あ! ってあれ?」


 あれ、俺……何してたんだっけ?

 たしか買い物に行ってから、やることがなかったので部屋に戻って……。

 枕元に置いてたスマホで時間を確認すると、もうすぐ日が沈む時間になりかけていた。

 どうやら、ガッツリ寝てしまっていたようだ。


 「さすがに起きないと……」

 

 体を起こそうとするが、自分の右腕に何か重みを感じ、目を向ける。


 「……何でお前がここにいるんだよ」


 俺の腕には心地よさそうな寝息を立てている柚羽の姿があった。

 何度か寝返りをうったのだろうか、長い黒髪がボサボサになっており、『これで勝つる!』と書かれた白いTシャツがめくれ上がり、ヘソのあたりまで露出していた。


 「おまえには警戒心ってものがないのか……」


 ため息混じりにTシャツを戻そうとすると柚羽は「うぅーん」と声を上げながら目を開けていった。

 何でこのタイミングで目を覚ますんだよ……

 

 「あ、やっと起きたんだ〜」


 寝起きののんびりした声で挨拶をしつつも柚羽の視線は自分のお腹付近へ。


 「……奏翔がその気になっているなら、いいよ?」


 柚羽は顔を赤らめながら俺の目を見てそう告げる。


 「……何か勘違いしてないか?」

 「あ、できるならカーテンを閉めて、あと布団をかけてほしいかも……」


 まったく話を聞こうとしないというか、する気配すらなかった。


 「服がめくれ上がってから直そうとしただけだ」


 体を起こし、ベッドから降りると、柚羽も体を起こしていく。


 「むぅ……こんな可愛い子の服がめくれ上がってたらそのまま脱がしてあげるのが普通だよ常識的に考えて!」

 「……そんな常識捨ててしまえ」


 投げ捨てるように言うとそのまま部屋から出ていくと、柚羽も追いかけるように部屋から出ていた。


 「一緒に起きるなんて、朝チュンならぬ夕チュンっていうのかな〜」

 「……俺に聞くな」


 早起きは三文の徳という言葉。

 早く起きすぎて結局は寝てしまい、損した気分にはなるので学生生活の習慣っていうのは偉大だということを身をもって思い知らされた1日だった。


 ちなみに夜まで爆睡して依緒ちゃんの友達からこっぴどく怒られたと泣き顔付きのLIMEメッセージが送られてきていた。

お読みいただきありがとうございました!


2章に突入です!


まだまだ2人のドタバタ劇は続いていきますので是非お楽しみに!


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