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5話 2人の休日

 「今日はこの季節には珍しく暖かい陽気で過ごしやすい1日となるでしょう」


 ダイニングの先にあるリビングのテレビから今日の天気を告げるニュースキャスターの声が流れ出していた。

 映像を見ることなく、朝食を作る際のラジオがわりとして聞いていた。

 

 「パンの消費期限が迫ってるからホットサンドでも作るか……」


 食糧棚から厚めの食パンを取り出し、冷蔵庫から取り出したスライスチーズとベーコンを挟んでホットサンドトースターで焼いていく。

 ちなみにこのトースターはバーベキューやキャンプで使う本格的なものだ。

 何年か前に俺と柚羽の父親がキャンプにハマっていた時期があり、その時に購入したものだ。

 互いの仕事が忙しくなり、キャンプどこではなくなったので、こうして時たま家で使っている。


 「……暖かくなったらキャンプとかやってもいいかもな」


 そんなことを考えながら焼いていると、ダイニングの外でドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきた。


 「私寝ちゃってた!? 何で起こしてくれなかったの!!!」


 ドアを開けると同時に叫ぶ柚羽。いつもはスラっと整えられた黒髪は寝相の悪さを示すかのごとく四方八方へと飛び散っていた。


 「何でってあまりにもおまえが気持ちよさそうに寝落ちしてたからだよ」


 そう告げると柚羽はがっくりと肩を落としていた。

 

 「奏翔を先に寝かせてからベッドに忍び、奏翔が目覚めたら『昨日は激しかったね』って顔を赤らめてドッキリをさせる計画が水の泡になっちゃったじゃん!」

 

 必死に自分がやろうとしていたことを語る柚羽だったが、寝起きで脳がまだ覚醒していないのか、何を言っているのかほとんど聞こえなかった。

 まあ、これまでの経験則からどうしようもない計画を企んでいたと言うことは理解できた。


 「朝メシつくったから、顔洗って髪整えてこい……」


 ため息混じりに柚羽に告げると肩を落としたまま、ダイニングから出ていった。


 


 「いただきまーす……うわっチーズが飛び出してきたんだけど!?」


 柚羽は真っ先にホットサンドかぶりついたのはよかったが、切れ端から飛び出したチーズに驚いていたが、伸びたチーズをパンの外側に巻き付けていった。


 「奏翔、今日はどこかでかけるの?」

 「出かけたいけど、今日は色々とやることがあるからな……行くとしても夕方ぐらいか」

 

 行くといっても夕飯の買い出しに商店街のスーパーにだが。

 

 「やることって?」

 「掃除洗濯、どっかの誰かが手伝ってくれればもっと早く終わるんだけどな」

 「手伝ってもどっかの誰かがドラマにでてきそうな小姑みたいに文句言うでしょ!」

 「洗濯機をお願いしたら洗剤と洗濯槽クリーナーを間違え、掃除を頼んだら丸くしかかけないから隅にゴミが残ってるのをみれば誰だって文句をいいたくなるだろ……」


 これまであった経験談を口にすると、柚羽はそれ以上反論してこなくなった。

 その代わり、犬のように小さく唸り声をあげながら無言で俺を睨んでいた。


 「そういう柚羽はどうなんだ?」

 「せっかくの休みだからもちろん『LEO』プレイしまくる!」


 元気よく答えたのはいいが、俺の顔色を見てすぐにしゅんとしてしまう。

 ちなみにLEOというのは昨日プレイしたゲームの略称のことだ。

 

 「そうだ、いいこと思いついた!」


 それも束の間、何かを閃いたのか、柚羽は右手の人差し指を立てていた。

 

 「奏翔も一緒に今日はLEOやって、掃除や洗濯は明日やればいいと思うよ」

 「そう言って明日も同じことを言うつもりだろ」


 ため息混じりに返すと図星だったのか、柚羽は不貞腐れた顔で黙々とホットサンドを食べて行った。

 こうなると色々と面倒なことになるので、仕方なくコイツの案を受け入れることを話す。

 すると不貞腐れていた顔が嘘のように溢れるばかりの笑顔になっていった。

 つくづく自分も甘いなと感じてしまう。


 「ただ、洗濯物が溜まってるからそれだけは片付ける」

 「えー……洗濯物って乾くまで時間かかるじゃん」

 「だから奥の手を使うことにした」

 「何、奥の手って」

 「……コインランドリーだ」


 家の近くに元々は営業時間と名前が一致していたコンビニがあるが、それと並列するコインランドリーがある。

 そこにはかなりの量が入る大型乾燥機があり、外で干すと半日以上かかるのがたった1時間という短時間で乾いてしまうという個人的には桃源郷のような場所だ。

 だが、そこを使うにはそれなりのリスクもある。

 

 「時間短縮のために柚羽にも協力してほしい」

 「わ、私でできることなら何でもする!」

 「それじゃ1000円だしてくれ、俺も出すから」


 そうリスクというのは大型乾燥機を使うための時間だ。

 洗濯もできるからそれと合わせると2000円近くかかってしまう。

 これでゲームをする時間が確保できるなら安いぐらいだ。


 「わかった! 後で持ってくるよ」


 そう言って柚羽は残ったホットサンドを平らげていく。


 「ごちそうさまでした! それじゃ着替えてくるから待ってて!」


 足早に柚羽が部屋に戻っていった。

 その間に俺は使った皿を洗い、水分を拭き取ってから食器棚の中にしまって行った。


 「おまたせー!」


 その間に柚羽は着替えを終えてダイニングへと戻ってきた。

 ファスナーのついていない青のパーカーにそして真っ黒のジーパン姿。

 外に出る時用のキャップをかぶっていた。

 

 それにしても着ているパーカーはどこかでみたことあるような気がする。

 サイズもあっていないのか、手首がすっぽりと埋まっているような……。

 

 「そのパーカーサイズあってなくないか?」

 「うん、だってこれ奏翔のだし♪」

 「……どっかでみたことあると思ったら俺のかよ、何で着ているんだよ」

 「この前、着た時に着心地がよくてすごく気にいっちゃったんだよね〜」


 嬉しそうに語る……ってか前にも着ていたのかコイツ。

 

 「脱げっていうなら別にいいけどさ……」


 柚羽は両手を俺の方へと伸ばす。


 「それなら奏翔が脱がしてね」

 「……もういい、着たければそのままどうぞ」


 大きく息を吐き出しながら告げると、柚羽はこうなることがわかっていたのかニヤニヤと笑っていた。

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