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30/103

30話 離れていく友人(SIDE SOUICHIRO)

 「和田塚さん、いっつも藤野くんのそばにいるよね?」

 「そういえば、富水さんが藤野くんに告白したとき、後ろで嘲笑ってたみたい」

 「マジー? あんなおっとりした見た目なのに、中身ドス黒いじゃん!?」


 あれから数日が経ったある日、クラスメイトたちがしきりに和田塚さんのことを噂していた。

 

 あの時、俺は富水香凜と一緒に計画を企ててしまった。

 お互いの意中の相手を自分の物にするため——


 「おはよー!」


 そんな中、渦中の相手である和田塚さんが奏翔と一緒に教室の中へ元気な挨拶をしながらやってきた。

 いつもなら、挨拶を返すところだが……


 誰1人、彼女に言葉を返す人はいなかった。

 それどころか、彼女を軽蔑するような目で見るようになっていた。


 これは富水香凜が企てた計画の一部だった。

 まずは、和田塚さんを孤立させること。そのために香凜は奏翔にフラれた時の話に色々着色をして、自分自身を悲劇のヒロインに仕立て上げた。

 最初聞いた時は、そんな都合よくいくかと思っていたが……オーバーなぐらいの演技力に定評があったのか、成功していた。今考えてみれば、このクラスには奏翔に告白してフラれているのが数人いる。その人間に共感できればと話していた。


 「柚羽ちゃんはね、自分が嫌われてるとわかれば……奏翔くんに迷惑がかかると思って離れていくわよ、あの子はものすごく周りに気を使う子だから」


 1人になったのを見計らって、卒業式後にでもそっと優しい声をかければ落ちるわよ……とも話していた。

 何故、卒業式後なのかというと今の状態で下手に声をかければ俺も攻撃の対象になってしまうからだ。


 そして、卒業式が終わり、担任の最後の挨拶が終わり……

 担任が教室から出ていったから事件は起きた。


 ——香凜を始めとした女子と一部の男子が和田塚さんに向けて口撃をしはじめていた。


 「何で、藤野くんのそばにアンタがいるのよ、すっごい目障りなんだけど!」

 「そうよ、奏翔くんにフラれた私たちを見て、裏で笑ってたに決まってる!」

 「ってか和田塚さんって奏翔とベッドで乳繰りあってるって聞いたぜ」

 「マジかよ……! 俺、和田塚さんに興味あったのに、藤野のヤロぉ!!!」


 それぞれ、根も葉もない話を彼女にぶつけていった。

 逃げる場所もなくそれを聞かされていた和田塚さんは何度も違うと話す。


 だが、彼女が否定すればするほど口撃は増していった。

 次第に彼女はその場で泣き出してしまう。


 それを見た俺は胸が締め付けられるような気分になっていった。

 これだけ傷つけられた彼女にかける言葉なんてみつかりはしない。

 中心に立つ香凜へやめるよう伝えるが、彼女は悦に浸っており、止めれる状態ではなかった。


 意を決して俺がやろうとしたところ、教室のドアがバンと大きな音を立てて開いた。

 そこにいた全員がドアの方へと振り返る。


 そこに立っていたのは藤野奏翔だった。


 「柚羽……!!!!」


 奏翔は泣いている和田塚さんをみつけ、彼女の元に駆け寄ろうとしていた。

 それに気づいた1人の男子が奏翔をとめようとするが、その直後、その男子は机や椅子と一緒に倒れていった。

 どうやら奏翔が殴りつけたようだ。


 それを見ていた他の男子が奏翔に殴りかかろうとするが……。


 「ぐほっ!?」

 「がはっ!!!」

 「ぐぇ!!!」


 奏翔の裏拳で倒れる者、勢いの乗った蹴りで腹を蹴られ悶絶するやつ、顔面を殴られるやつ。

 殴りかかろうとした全員が返り討ちにあい、それぞれ教室内の床へと沈んでいった。


 奏翔は和田塚さんの元に駆け寄ると、抱きしめていた。

 女子生徒からすれば彼女の行動に火がついたのか、さらに口撃をしようとするが奏翔の睨みにビビってしまう。


 「奏翔くん、何で柚羽ちゃんのそばにいるの……私じゃダメなの!?」


 奏翔の姿を見て、怖気付くことなく香凜が訴える。

 その様子は文化祭などで行われる演劇部による劇をみているかのようなオーバー演技力だ。


 香凜の問いに対して奏翔は……。


 「きゃあ!!!!!」

 

 無言で近くにあった机を蹴り飛ばすと周辺の机を巻き込み倒れていった。

 それを見ていた一部の女子が悲鳴をあげる。


 「……あぁ、おまえらみたいなやつには傍によってもらいたくねーよ! 俺にも柚羽にも!」

 

 奏翔はそれだけ告げ、和田塚さんの手を取って教室から出ていこうとしていた。


 「奏翔……!」


 俺が名前を呼ぶと奏翔はこちらへ振り返るが……

 先ほどと変わらない怒りの形相でこちらを睨みつけ、何も告げずに和田塚さんを連れて教室から出ていってしまった。

 

 ——ここにいる時点で奏翔の中で俺のことは友人ではなくなってしまったと悟った……。

 

 そのあとは、興が冷めたと言わんばかりに次々とクラスメイトがいなくなっていった。

 残ったのは俺と香凜のみ。


 香凜は奏翔に言われた言葉がショックだったのか、その場に立ち尽くしていた。

 

 「……俺たちも帰ろうぜ、そうだ! 久々にファミレスでもいって飯でも食おうぜ」


 香凜の肩を叩くがパシッと振り払う。

 そして……。


 「あの子のどこが良いって言うのよ……」


 下を向き、体を震わせながら呟いていた。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 俺はドリンクバーコーナーでコーラを注ぎながらスマホの画面に目を向ける。


 「俺は吹っ切れてんだろうか……」


 画面には笑顔でこちらを見る和田塚さんの画像が映っていた。



 「遅いわよ」

 

 席に戻ると香凜は不機嫌そうな顔で見ていた。


 「人が増えてきたんだから仕方ないだろ」


 そう言って俺は彼女の目の前にカフェラテの入ったマグカップを置き、自分の席へと座った。

 

 「それでよく奏翔に会えたな」

 「偶然よ、隣駅のショッピングモールでセールやっていたから行ってみたら、見つけたのよ」

 「で、奏翔の反応は?」

 「最初は無視されたわよ。 でも何度も呼びかけたら反応してくれたわ」

 「ちなみになんて言われた?」

 「『うるせぇよ』って言われたわ」

 「嬉しいか、それ?」

 「奏翔くんがいう言葉なら、何でも嬉しいわよ。 『このメス豚』と言われても喜ぶわね」


 筋金入りのマゾっぷりだな。


 「先に言っておくけどアンタがそんなこと言ったら、大事なものを握りつぶすわよ?」

 「何だよ俺の大事なものって?」

 「教えてあげるから、1回蹴っ飛ばしてみていいかしら?」


 香凜の言葉を聞いてゾクっと寒気を感じ、何のことを言っているのか理解できたので断りを入れた。


 「そ、それで……どうするんだ? もう前みたいなことはごめんだぞ」

 「前みたいに共感させれそうな駒はいないから、アンタと2人でやるしかないわ」

 「……俺、協力するとは一言も言ってないけど?」

 

 それを告げると香凜は俺の右手を掴み、自身の方へと誘導していくと、俺の手を自信の胸に押し付けていった。

 その直後、手から何とも言えない柔らかい感触が……!

 

 「ちょ、ちょ……! な、何をしてんだよ!?」

 「ふふっ……これで私が叫んだらどうなると思う?」


 香凜はにっこりと微笑みながら俺をみていた。


 「わ、わかった、協力するから手を離せ!」

 

 俺が叫ぶと、香凜は掴んでいた手を離し、埃を振り払うかのようにパシンと手の甲を叩く。


 「気持ちよかったかしら? ちなみにあんたが中学の時からだらしない顔でチラ見していたのは知っているわよ」

 「……最高だったけど、違う形で触りたかったし揉みまくりたかったよ」


 俺の返答に香凜はふふっと不適な笑みを浮かべていた。


 「それじゃ、奏翔くんを手に入れる方法を考えて頂戴ね」


 俺はとんでもない悪魔と血の契約をしてしまったような気分になりながらコーラを飲んでいった。★★★ここから文章が重複してます★★★ここから文章が重複してます★★★ 「和田塚さん、いっつも藤野くんのそばにいるよね?」

 「そういえば、富水さんが藤野くんに告白したとき、後ろで嘲笑ってたみたい」

 「マジー? あんなおっとりした見た目なのに、中身ドス黒いじゃん!?」


 あれから数日が経ったある日、クラスメイトたちがしきりに和田塚さんのことを噂していた。

 

 あの時、俺は富水香凜と一緒に計画を企ててしまった。

 お互いの意中の相手を自分の物にするため——


 「おはよー!」


 そんな中、渦中の相手である和田塚さんが奏翔と一緒に教室の中へ元気な挨拶をしながらやってきた。

 いつもなら、挨拶を返すところだが……


 誰1人、彼女に言葉を返す人はいなかった。

 それどころか、彼女を軽蔑するような目で見るようになっていた。


 これは富水香凜が企てた計画の一部だった。

 まずは、和田塚さんを孤立させること。そのために香凜は奏翔にフラれた時の話に色々着色をして、自分自身を悲劇のヒロインに仕立て上げた。

 最初聞いた時は、そんな都合よくいくかと思っていたが……オーバーなぐらいの演技力に定評があったのか、成功していた。今考えてみれば、このクラスには奏翔に告白してフラれているのが数人いる。その人間に共感できればと話していた。


 「柚羽ちゃんはね、自分が嫌われてるとわかれば……奏翔くんに迷惑がかかると思って離れていくわよ、あの子はものすごく周りに気を使う子だから」


 1人になったのを見計らって、卒業式後にでもそっと優しい声をかければ落ちるわよ……とも話していた。

 何故、卒業式後なのかというと今の状態で下手に声をかければ俺も攻撃の対象になってしまうからだ。


 そして、卒業式が終わり、担任の最後の挨拶が終わり……

 担任が教室から出ていったから事件は起きた。


 ——香凜を始めとした女子と一部の男子が和田塚さんに向けて口撃をしはじめていた。


 「何で、藤野くんのそばにアンタがいるのよ、すっごい目障りなんだけど!」

 「そうよ、奏翔くんにフラれた私たちを見て、裏で笑ってたに決まってる!」

 「ってか和田塚さんって奏翔とベッドで乳繰りあってるって聞いたぜ」

 「マジかよ……! 俺、和田塚さんに興味あったのに、藤野のヤロぉ!!!」


 それぞれ、根も歯もない話を彼女にぶつけていった。

 逃げる場所もなくそれを聞かされていた和田塚さんは何度も違うと話す。


 だが、彼女が否定すればするほど口撃は増していった。

 次第に彼女はその場で泣き出してしまう。


 それを見た俺は胸が締め付けられるような気分になっていった。

 これだけ傷つけられた彼女にかける言葉なんてみつかりはしない。

 中心に立つ香凜へやめるよう伝えるが、彼女は悦に浸っており、止めれる状態ではなかった。


 意を決して俺がやろうとしたところ、教室のドアがバンと大きな音を立てて開いた。

 そこにいた全員がドアの方へと振り返る。


 そこに立っていたのは藤野奏翔だった。


 「柚羽……!!!!」


 奏翔は泣いている和田塚さんをみつけ、彼女の元に駆け寄ろうとしていた。

 それに気づいた1人の男子が奏翔をとめようとするが、その直後、その男子は机や椅子と一緒に倒れていった。

 どうやら奏翔が殴りつけたようだ。


 それを見ていた他の男子が奏翔に殴りかかろうとするが……。


 「ぐほっ!?」

 「がはっ!!!」

 「ぐぇ!!!」


 奏翔の裏拳で倒れる者、勢いの乗った蹴りで腹を蹴られ悶絶するやつ、顔面を殴られるやつ。

 殴りかかろうとした全員が返り討ちにあい、それぞれ教室内の床へと沈んでいった。


 奏翔は和田塚さんの元に駆け寄ると、抱きしめていた。

 女子生徒からすれば彼女の行動に火がついたのか、さらに口撃をしようとするが奏翔の睨みにビビってしまう。


 「奏翔くん、何で柚羽ちゃんのそばにいるの……私じゃダメなの!?」


 奏翔の姿を見て、怖気付くことなく香凜が訴える。

 その様子は文化祭などで行われる演劇部による劇をみているかのようなオーバー演技力だ。


 香凜の問いに対して奏翔は……。


 「きゃあ!!!!!」

 

 無言で近くにあった机を蹴り飛ばすと周辺の机を巻き込み倒れていった。

 それを見ていた一部の女子が悲鳴をあげる。


 「……あぁ、おまえらみたいなやつには傍によってもらいたくねーよ! 俺にも柚羽にも!」

 

 奏翔はそれだけ告げ、和田塚さんの手を取って教室から出ていこうとしていた。


 「奏翔……!」


 俺が名前を呼ぶと奏翔はこちらへ振り返るが……

 先ほどと変わらない怒りの形相でこちらを睨みつけ、何も告げずに和田塚さんを連れて教室から出ていってしまった。

 

 ——ここにいる時点で奏翔の中で俺のことは友人ではなくなってしまったと悟った……。

 

 そのあとは、興が冷めたと言わんばかりに次々とクラスメイトがいなくなっていった。

 残ったのは俺と香凜のみ。


 香凜は奏翔に言われた言葉がショックだったのか、その場に立ち尽くしていた。

 

 「……俺たちも帰ろうぜ、そうだ! 久々にファミレスでもいって飯でも食おうぜ」


 香凜の肩を叩くがパシッと振り払う。

 そして……。


 「あの子のどこが良いって言うのよ……」


 下を向き、体を震わせながら呟いていた。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 俺はドリンクバーコーナーでコーラを注ぎながらスマホの画面に目を向ける。


 「俺は吹っ切れてんだろうか……」


 画面には笑顔でこちらを見る和田塚さんの画像が映っていた。



 「遅いわよ」

 

 席に戻ると香凜は不機嫌そうな顔で見ていた。


 「人が増えてきたんだから仕方ないだろ」


 そう言って俺は彼女の目の前にカフェラテの入ったマグカップを置き、自分の席へと座った。

 

 「それでよく奏翔に会えたな」

 「偶然よ、隣駅のショッピングモールでセールやっていたから行ってみたら、見つけたのよ」

 「で、奏翔の反応は?」

 「最初は無視されたわよ。 でも何度も呼びかけたら反応してくれたわ」

 「ちなみになんて言われた?」

 「『うるせぇよ』って言われたわ」

 「嬉しいか、それ?」

 「奏翔くんがいう言葉なら、何でも嬉しいわよ。 『このメス豚』と言われても喜ぶわね」


 筋金入りのマゾっぷりだな。


 「先に言っておくけどアンタがそんなこと言ったら、大事なものを握りつぶすわよ?」

 「何だよ俺の大事なものって?」

 「教えてあげるから、1回蹴っ飛ばしてみていいかしら?」


 香凜の言葉を聞いてゾクっと寒気を感じ、何のことを言っているのか理解できたので断りを入れた。


 「そ、それで……どうするんだ? もう前みたいなことはごめんだぞ」

 「前みたいに共感させれそうな駒はいないから、アンタと2人でやるしかないわ」

 「……俺、協力するとは一言も言ってないけど?」

 

 それを告げると香凜は俺の右手を掴み、自身の方へと誘導していくと、俺の手を自信の胸に押し付けていった。

 その直後、手から何とも言えない柔らかい感触が……!

 

 「ちょ、ちょ……! な、何をしてんだよ!?」

 「ふふっ……これで私が叫んだらどうなると思う?」


 香凜はにっこりと微笑みながら俺をみていた。


 「わ、わかった、協力するから手を離せ!」

 

 俺が叫ぶと、香凜は掴んでいた手を離し、埃を振り払うかのようにパシンと手の甲を叩く。


 「気持ちよかったかしら? ちなみにあんたが中学の時からだらしない顔でチラ見していたのは知っているわよ」

 「……最高だったけど、違う形で触りたかったし揉みまくりたかったよ」


 俺の返答に香凜はふふっと不適な笑みを浮かべていた。


 「それじゃ、奏翔くんを手に入れる方法を考えて頂戴ね」


 俺はとんでもない悪魔と血の契約をしてしまったような気分になりながらコーラを飲んでいった。

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