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3話 互いの好きなタイプをゲームに反映してみた

 「うわ、体験版よりもキャラクリのバリエーション増えてない!?」


 柚羽はウイッチの画面をじっくり眺めながら大声をあげていた。


 「そういやキャラクリに力を入れすぎてるってのを発売当日に買ったプレイヤーがSNSで書き込んでたのをみたな」


 俺と柚羽がやっているのは『リセテーラ・アース・オンライン』という俗にいうネットワークRPGだ。

 昨日発売したのだが、諸事情があって今日買いに行くことができた。

 俺たちのように待ち遠しかったプレイヤーが多かったのか、SNSには様々な感想が書きこまれている。


 「暫くの間、じっくりネットリとキャラメイキングするから、覗かないようにね!」

 

 そう言って柚羽は黙々とコントローラーを操作していった。

 覗くってどういうことだよと思いつつも俺も自分のキャラクターメイキングに勤しんでいった。


 黙々と自分の分身であるキャラクターを作り上げること1時間弱。

 最初に完成したのは俺だった。ずっと黙々と作業をしていく柚羽を待とうと思ったが、終わる気配がわからなかったため、先にゲームを開始させた。

 冒頭のやりとりが終わると、操作方法などを説明するチュートリアルが始まる。


 チュートリアルが終わるとOPムービーが再生され、曲が終わると俺のキャラクターは他のプレイヤーたちで賑わう、ホームグラウンドに降りたった。

 週末の夜ということもあってか、多くのプレイヤーキャラでごった返していた。


 「終わったぁ! って奏翔早くない!?」


 柚羽はホームグラウンドにいる俺のキャラを見て驚きの声を上げていた。


 「時間かかりそうだったから先に進めてたんだよ、待ってるから早くチュートリアル終わらせてこい」

 「せっかく一緒に進めようと思ったのに、奏翔ってホントせっかちなんだから、早すぎるのも問題あるんだよ?」

 「何だよ問題って……」

 「うーん、不完全燃焼的な?」


 満面な笑顔で答える柚羽だが、俺にはさっぱりわからなかった。

 ……いや、なんかわからなくていいやと思い始めてきた。


 「……今のうちに飲み物とってくる、何か持ってくるか?」

 「冷蔵庫に入ってるアイスミルクティーで! タンブラーは棚にはいってるから」

 「わかった」


 部屋の外に出ると、思っていた以上に冷え切っていたため、体が震え出していた。

 急いでダイニングに行き、目的のものを取りにいく。


 「えっと、あいつのタンブラーは……これか」


 柚羽の言う通り、食器棚の定位置とも言える場所に目的の物はあった。

 手に取ってふと、タンブラーに貼られていたものに目がいく。


 「……相変わらず、このキャラ好きだな」


 思っていたことを口にしたあと、すぐに部屋へと戻って行った。


 「おかえりー、チュートリアル終わった! 奏翔のキャラどこにいる?」

 

 頼まれたものを小型のテーブルの上に置き、柚羽の画面を見る。


 「目の前にいるだろ、『セシリア』ってキャラが」


 そう言って彼女のウイッチの画面を指差す。


 「あ、ホントだ! それじゃ早速キャラクリチェックしないと!」


 待ってましたと言わんばかりに巧みな操作でメニュー画面を表示させ、俺のキャラの全体を表示させると、正面や横、真下からなど、際どい角度も舐め回すように見ていく。


 「金髪ロングにくりっとした大きめ目に身長は153cmと奏翔の好みがたっぷり詰まってるね」

 「……おまえに言われたくないな、自分のつくったキャラをよく見ろ」


 柚羽が作ったキャラクターはアニメお馴染みのツンツンとした棘のような髪型に中性的な顔立ちの男キャラだった。


 「いつまで経っても『ライガ』好きは変わんないのか」


 俺の言葉に柚羽はムッとした表情になっていた。


 「ライガは好きとか嫌いとかじゃなくて、私の未来永劫の旦那なの!」


 自慢げに語る柚羽を見てため息が出てしまう。

 ちなみにこのライガというのは俺たちが小学校の頃に見ていたアニメ『究極勇者ライガ』の主人公ライガのことだ。

 作品の内容は至って少年向けのアニメで、見ていた当初は俺もグッズを買ってもらって、真似をしていたりもした。

 理由は単純に彼自身がカッコいいと思ったからだ。さすがに今はそうは思わないが……。


 当時は少年たちに人気だったこのキャラは最近になってオタク女子に注目されているとか。

 どういう理由かは定かではないが、グッズや漫画の再販がされているのを見かけるので、それが起因かもしれない。

 柚羽もライガが好きなオタク女子の一人だが、本人曰くブームが来る前からライガは『推しの対象であり、未来の旦那さん』だと豪語している。


 「うわっ、このキャラスレンダーかと思ったら隠れ巨乳じゃん!」


 柚羽は俺のキャラを舐め回すように見ているうちに、体格を知る方法まで見つけたようだ。

 

 「それ、最初に選んだプリセットがそうなってた」


 キャラメイキングの時に俺のようにめんどくさがりなプレイヤーのために用意されたセット、通称プリセットがある。

 いくつかあったパターンの中から選んでから、ある程度変えていったので、早く終えることができた。

 ちなみに柚羽が指摘した箇所に関しては変えようと思ったが、設定が細かいのとゲームとはいえ、胸元をいじる行為に恥ずかしさがあったため、変更しなかっただけだ。


 話を聞いた柚羽はニヤニヤとしながら俺の顔を見ていた。


 「巨乳キャラに憧れを持つことはいいことだと思うよ、ましてや奏翔はまだ未経験だから仕方ないことだよね〜」


 なんか上から目線で話し始めたぞコイツ。


 「未経験なのは否定しないが、それは俺だけじゃなくておまえもだろ」

 「残念ながら違うよ?」


 柚羽の返答に俺は言葉が詰まってしまう。


 「ちょっとまて……いつの間に!? そもそも相手は——」

 「そりゃもちろん旦那であるライガに決まってるでしょ」

 「……なるほど」


 つまりはただの妄想ということだ。


 「毎晩のようにライガが迫ってくるんだよ、もちろん私も嫌じゃないから受け入れるんだけどね」


 聞いてもいないのに妄想の中の出来事を語り出していた。


 「迫られてばかりじゃつまらないから、逆に私からも迫ったりするよ! いつも強気な彼が女のみたいな顔になって可愛いんだよね〜」


 ちなみにこの後も柚羽の淫らな妄想話が続いていった。

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