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27話 駆け抜けろ青春! 誰よりも早く!

※訂正

26話と27話が逆になっていましたので修正いたしました。

大変失礼いたしましたm(_ _)m

 「ちゃんと準備運動しておけよ」

 「はーい!」


 俺も柚羽もジャージに着替えてからすぐに家を出発し、電車とバスを乗り継いで目的地のハイキングコースへとやってきた。朝も早かったせいか、電車もそこまで混雑することなく乗ることができた。


 「いっちにっ……さんし!」


 柚羽は子供のように声に出して準備運動をしていた。


 「うぅーん……!」


 体を伸ばす時には苦しそうな声へと変わっているが……。


 「……わざと変な声出してるだろ?」

 「真面目にやってるよー! もしかして遠回しにそういうことも期待しちゃってる? 結構茂みの奥にいくと気付かれないって話だよ?」

 「……頼む、せっかく自然の中にいるんだから発言内容を選んでくれ」


 屈伸をしながらため息を漏らす。

 周りに誰もいなくてよかった……。


 「それじゃ行くか、甘味処は夕方までやってるみたいだから、そこまで急がなくても平気だろ」

 

 朝早く家を出たせいか、学校の時でもまだ家にいる時間だった。

 このハイキングコースは2時間ほどで1周できるほどの長さだが、柚羽の歩くスピードを考え、倍かかる計算でいた。

 それでも充分間に合うだろう。


 「そうだ奏翔!」

 「どうした?」

 「手、繋いでいい?」

 「……何で?」

 「奏翔歩くスピード早いし、迷子にならないために!」

 「子供か……」

 「あと、それなりに寒いから奏翔の温もりを感じていたい!」


 柚羽の口からは次々と理由が出てきていた。

 これ以上聞いてても埒が開かないので仕方なく手を差し出すと、柚羽はすぐに俺の手を取った。

 そして、自身の指を俺の指の相手に絡めていた。

 

 「ふへへ〜、奏翔の手あったかーい」


 そう言いながら柚羽の顔が蕩けていった。


 「……それじゃ今度こそいくぞ」

 「うん、しゅっぱーつ!」


 

 初心者向けのコースと言われるのがわかるぐらい、平坦な道が続いていた。

 WEBページでは甘味処へ行くには途中から坂を上がる必要があると書いてあったが、多少傾斜があるだけでそこまでキツくはないと書いてあった。


 そして、コースから分岐した先にその坂道が見えてきた。

 若干ではあるが、登っている感覚にはなっているが、書いてあった通りキツさは感じなかった。

 ——少なくとも俺は。


 「かなとー……ちょっとすとっぷー〜!」


 隣を歩く柚羽にとってはこの傾斜でもキツいようだ。

 息が切れ、額には汗が付着していた。


 「少ししか歩いてないのに……運動不足がたたってるな」


 仕方なく途中で休むことにした。


 「これで顔拭いて、水分摂っておけよ」


 俺は背負っていたリュックからタオルとスポーツドリンクを取り出して柚羽に渡すと、相当喉が渇いていたのでものすごい勢いで飲んでいった。


 「ふぅ、いきかえるぅ〜!」


 さっきまでいつ倒れてもおかしくない顔をしていたが、水分を摂っていつも通りの表情へと戻っていった。


 「甘味処まであとどれくらい?」

 「坂道に入ってから1時間ぐらいって書いてあったけど、柚羽の足だと2時間はかかるかもな」

 

 それでも充分に間に合うから問題はない。


 「ゆっくりの方が奏翔と長い時間手を繋いでいられるからそれはアリかも〜」


 柚羽は俺の顔を見てニヤニヤと笑っていた。


 「それだけ元気があればもう大丈夫だな、そろそろ行くぞ」

 「もう少し休んでもいいのにー! せっかちさんは嫌われちゃうぞ」


 柚羽は指をくるくると回しながらあざとい仕草をしていた。

 

 

 「どうやら着いたみたいだぞ」


 先ほどの休憩から2時間ほど進んでいき、坂を登りきった先に展望台と書かれた広い地帯へと辿り着いた。

 目的の甘味処は展望台の奥に建っていた。


 「や、やったぁ〜……!」


 大量の汗をかきつつ、フラフラになりながらも坂を登りきった柚羽。

 俺が甘味処の位置を指差すと、目を輝かせていた。


 「はやくいこ〜! 疲れた時には甘いものがいちばんなんだよ〜」


 ついさっきまでフラフラになっていたのが嘘だと思えるぐらい、力強く俺の手を引っ張っていった。

 平日の昼前ということもあってか、お店にはすぐに入ることができた。店内には俺たち以外にも2〜3組ほどのお客がいた。


 席に案内してもらうと、柚羽はすぐにメニューを開いていた。


 「パフェも美味しそうだけど、きな粉餅も美味しそうに見える、この黒胡麻団子もイイ!」

 「……別にいつでも来れる場所にあるんだから、そこまで悩まなくてもいいだろ」

 「女の子にとって甘いものを選ぶってことは彼とのデートでどの服を選ぶか迷うぐらい大事なことなんだよ!」

 「……熱弁はいいからさっさと決めてくれ」

 「むぅ……」


 それから柚羽は15分ほど悩み、パフェとアイスミルクティのセットを選んだ。

 ちなみに俺はコーヒーとパンケーキのセットと、それぞれ注文をした。


 「よく考えてみたらさ〜、ここで甘いもの食べてたら運動した意味がないと思うんだけど?」

 「何だよ気付いちゃったか……と、言っても動かないで食べるのと動いてから食べるのとは全然違うけどな」


 柚羽は「そうなの?」と呟きながら首を傾げていた。


 「ってかこんな理由つけないとお前の場合動こうとはしないからな」

 

 俺の言葉に柚羽は不満そうに口を尖らせていた。


 「別にふっくらした私も充分かわいいと思うんだけどなあ……」

 「……じゃあ、服が入らなくなっても叫ぶなよ」

 「…………うん、無理」


 長い溜めのあった返事に俺は長いため息をつく。


 「まあ、それに……柚羽は今のままでいてくれた方が俺としては嬉しいけどな」

 「ふぁ……!?」

 「な、何だよ突然どうした?」


 次第に柚羽の顔が真っ赤になっていった。


 「え、ちょっと待って……それって今のままが可愛いってことだよね!? ふへへ……やばい、嬉しくて顔がすごく熱いんだけど」


 手で顔を隠したり、目の前にあったおしぼりで顔を隠そうと奇怪な行動をし始めていた。


 「……大丈夫か?」

 「う、うん……大丈夫じゃないけど、大丈夫! すごい嬉しくて……今すぐ押し倒したくなったんだけどいいよね?」

 「……俺がいいっていうと思うか?」

 「奏翔の答えは聞いてない! 私が全て! わかった! 家まで必死に我慢するから帰ったら覚悟してね、ふへへ〜」

 

 『寝落ちで部屋まで運ぶ時にこれ以上重くなるとこっちがキツくなるし』

 と、すぐに伝えたが、コイツの耳に俺の言葉が入る余地はなかったようだ。

 


 「うわ、もうこんな時間だよ」

 

 それぞれ注文したものを平らげてから寛いでいると、スマホを見ていた柚羽が驚きの声をあげていた。

 リュックの中から自分のスマホをとって画面をみると、おやつの時間となっていた。


 「いくら何でも寛ぎすぎたな、出るか」

 「うん……!」


 会計を済ませて外にでると、日差しが差し込んでいて朝よりも暖かく感じでいた。

 行きと同じように、柚羽は俺の手を掴んでいた。

 帰りは下り坂だったため、そこまで苦労することなく入り口へと戻ってきた。

 そしてバスで最寄り駅まで行き、電車に乗り、空いている席に座り、しばらく話していたが


 「……静かだと思ったら寝てたのか」


 柚羽は俺の肩にもたれかかって心地良さそうな寝息を立てながら寝ていた。


 「まあ、今日は柚羽にしてはよくがんばったな……」


 彼女の頑張りに後ろから手を回して頭を撫でる。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 「奏翔、お風呂上がったよー!」


 ダイニングからリビングに行き、ソファに座っている奏翔に声をかけるが反応がなかった。

 テレビがついていたので、聞こえなかったのかもしれないと思って彼の前に立つと……。


 「ありゃあ……寝ちゃってる」


 奏翔はソファの背もたれに全体重を乗せながら寝ていた。

 朝も早かったから疲れちゃったのかもしれない。

 このまま起こそうかと考えたりもしたけど、罪悪感があったのでその隣に座り、ゆっくりと奏翔の顔が私の膝の上にくるように持っていった。


 「……いつも寝落ちした私を部屋まで運んでくれてるお礼だよ」

 

 私もできることなら部屋に運んでそのまま一緒に寝てしまいたいところだが、非力な私には到底不可能なことだ。

 

 すぐに起きるかなと思ったけど、疲れが溜まっていたのか、それとも私の膝の上が心地よいのかわからないけど起きる気配は全くなかった。

 彼の寝息が膝に当たって、私の別の何かが目覚めそうになりそうだ。


 私の視線の先には奏翔の頬が映っている。

 指でつまむとぷにぷにと何度もつまみたくなるような弾力をしていた。

 ——触っていくうちにそれだけでは満足できなくなっていた。


 「こ、こんな時にしかできないよね……そ、それにこれはいつもワガママを聞いてもらってるお、お礼なんだからね!」


 自分の欲望に対する言い訳を呟いてからゆっくりと彼の頬に唇をあてていった。

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