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25話 奏翔、苦渋の告白

 Kotaro.Onda

 『お願いだ心の友よ! 今すぐ補修(補習)に行かなくていい方法を教えてくれ』


 テスト休みが始まり、1週間目の朝、朝食を食べているとスマホが震え出した。

 画面を見ると、絶賛補修(補習)中の虎太郎から悲痛のメッセージが送られていた。


 テスト休みは2月初旬のテストが終わり、赤点対象者にならなければ3月中旬の終業式までとなっている。

 ただし、1教科でも赤点があった場合は2月全て補修(補習)で学校に行かなければならない。

 みんなが休んでいる中、いつも通り朝から学校に行かなければならないのは苦痛といっても過言ではない。


 Kanato.Fujino

 『補修(補習)が嫌なら赤点をとらなければいいじゃない かなを』


 だが、毎回補修(補習)になるやつに関してはよほど学校が好きなのだろうと思っているので慰めの言葉など必要はないだろう。

 ちなみに先ほどのメッセージを送った後、虎太郎からは『終』と書かれた、テレビで見かける画像が送られてきた。

 虎太郎がこれを送るってことは論破されて何も言えなくなったってことだ。


 「さてと、そろそろ起こすか……」


 スマホをテーブルに置いてから立ち上がり、2階へと続く階段を上がっていく。

 そして辿り着いた先は自分の部屋……の真正面にある柚羽の部屋の前。

 同居人とはいえ、いきなりドアを開けるのはよくないため、二回ほどノックをする。


 「……反応なしか、それじゃ遠慮はいらないな」


 勢いよく部屋のドアを開けて中へ入る。

 俺と同じ部屋の作りになっており、部屋に置かれているのは机とベッドと本やCD、人形などが置かれた棚。

 そのベッドの上ではふとんを頭からかぶり、心地良さそうな顔で柚羽が寝ていた。

 

 「柚羽、いつまで寝ているんだ、もうすぐ昼になるぞ!」


 部屋の時計ではもうすぐ長針と短針が重なり合おうとしていた。

 朝方近くまで2人揃ってLEOをプレイしていたにもかかわらず俺はいつも通りの時間に起きている。

 

 大声でベッドの虫に話しかける。

 

 「……これからライガと2ラウンド目が始まるから無理〜」


 布団の中から呻き声に近い声で何か話していた。


 「せっかく天気いいのに布団干せないだろっ!」


 被っていた布団を勢いよく持ち上げると、体をくの字に曲げている柚羽の姿があった。

 寒いのかプルプルと体を震わせていた。


 「奏翔のえっち……」


 寝ぼけた顔で柚羽は掠れた声でつぶやくと、ゆっくりとベッドから降りていった。

 その隙にベッドのマットと枕を持って部屋を出ていこうとするが……。


 「……離れろ」

 「やだ、奏翔の体が暖かいのが悪い〜」

 

 突然柚羽が後ろから俺の体に抱きついてきた。


 「動けないだろ……」

 「動けないなら私のベッドで一緒に寝ればいいじゃない ゆずを」


 柚羽は「すやぁ」と口にしながら俺から離れようとはしなかった。

 仕方ない、最終手段を出すとするか。


 「柚羽、さっき、コンビニでプリン買ってきたぞ」


 その直後背中のくっついていた柚羽の気配が消えた。

 気がついた時にはドタドタと音を立てて階段を降りていく姿が……。


 「プリン♪ プリン♪ ふわふわとろとろぷーりーん〜♪」

 

 階段を降りると鼻歌交じりにダイニングのドアを開けて中へと入っていった。

 それを見て、俺はゆっくりと階段を降りていくのだった。


 

 「奏翔、今日の夕飯はなにー?」


 柚羽はリビングでウイッチをプレイしながら話しかけてきた。


 「そろそろそんな時間か……」


 昼間に干した布団を元通りにしてからダイニングでネットサーフィンをしていた。

 言われてみれば、窓の外はうっすらと暗くなっていた。

 何で休みの1日はこんなに早く終わってしまうのだろうか……。


 「あえて聞くが、夕飯の希望は?」

 「ハンバ——」

 「却下だ、2日連続で食べたら胃がもたれる」

 「えー! それなら大根おろしと一緒に食べればいいじゃん!」


 ゲームを一時停止してソファから身を乗り出すように俺を見る柚羽。

 そんな彼女の顔を見て俺はため息が出てきてしまう。


 「……今日は適当に残飯整理だな」


 そう独りごちた俺は冷蔵庫をあけていく。


 

 「いっただきまーす!」


 柚羽は手を合わせて食事の挨拶を済ませるとすぐに目の前にあったミニハンバーグを摘んでいく。


 「なんだかんだ言っても奏翔は優しいね、ハンバーグ出してくれてるし」

 「しょうがないだろ賞味期限ギリギリだったんだ」

 「えへへ〜」


 柚羽は嬉しさのあまり、顔がとろけてるのかと思えるぐらいニヤけていた。

 俺も大皿の上に置いた、焦げ目のついた分厚いハムを摘んでいった。

 それぞれ目についたものを食べていくうちに、茶碗に装ったご飯も、味噌汁、おかずがなくなり2人揃って食後の挨拶をして、夕飯を終えた。


 「奏翔、何か飲む?」

 

 使用した食器を洗っていると、柚羽が冷蔵庫に顔を入れながら声をかけてきた。


 「この前買ってきた炭酸水で」

 「わかったよー」


 冷蔵庫から御用達のアイスミルクティと俺の炭酸水、2つのペットボトルを取り、テーブルの上に置く。


 「あ、そうだ! この前買ってきたチョコクッキーが——」

 「柚羽……ちょっと座れ」


 食器を洗い終え、水道を止めると自分の席に座った。

 柚羽は棚からコップだけ取り出してからいつもの席に座った。


 「どうしたの? すごい真剣な顔してるけど」

 「言いたいことがある」

 「も、もしかして……『今日、両親がいないから泊まっていかないか』って言おうとしてる!?」

 「……いまの状況でわざわざそれを言う必要があるか?」


 そもそも両親と一緒に住んでたとしてもいない隙にコイツにそんなことを言うつもりは一切ない。


 「それとも、ストレスで溜まりまくって爆発しそうだから、柚羽ちゃんのお胸に吸いつきたいとか、わかった! お風呂入って念入りに洗って——」

 「悪い、結構真面目な話だ」


 そう告げると柚羽は口を閉した。


 「テスト休み入って1週間が経った……ずっと言おうかどうか迷っていたんだが、おまえのためだから俺は心を鬼にして言うことにした」

 「な、なななな……なにを!? も、もしかして……ちょっと待って! 急すぎて心の準備が!」


 慌てふためく柚羽。

 俺は大きく深呼吸をしてから、彼女に言いたい事を伝える。


 「柚羽……」

 「は、はい! え、えっとね……うん! いいよ、私……奏翔にだったらいつでも——」

 「——おまえ顔が丸くなってきてるぞ」

 「…………ふぇ?」


 柚羽に思っている事を伝える。

 だが、言われた本人はしばらくの間、微動だにしなかった。

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