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24話 続・テスト勉強 IN コタツ 実行編

 「さぁ、来週のテスト勉強に向けて頑張ろー!」


 柚羽はコタツ布団の中に足を入れると、電源を入れていく。

 

 「……あえて聞くが、本音は?」

 「テスト休みにガッツリLEOやれるように赤点取らないようにしよう!」


 思ってた通りの答えに安心してしまう自分がいた。


 「頼むからそのまま寝るなよ……」

 「大丈夫だよ、寝るのは奏翔のベッドって決めてるから」

 「自分のベッドに行け」


 正面に座る柚羽を睨むがすぐに、ノートと教科書の方へ視線を戻す。

 柚羽の本音に賛同するわけではないが、このテストで赤点があった場合、2月からの貴重なテスト休みが無駄になってしまうため、それは避けたいところだ。

 これが俺の部屋だとコイツが何をするかわからないので、この機会を大いに利用させてもらうとしよう。



 「……奏翔」

 「どうした?」


 視線を柚羽に向けると、なぜかムスッとした顔をしていた。


 「なんでコタツに足をいれないの?」

 「この方が楽だし、集中できるからな」

 

 この勉強会が始まってから俺は座布団を敷いてその上に足を組んで座っていた。

 集中できるのもあるが、足を伸ばしてしまうとくつろいでしまい、勉強会どころではなくなりそうだったからだ。


 また、先に入っていた柚羽の足が俺の膝にぶつかっているので足を伸ばせずにいるのもある。

 使っているコタツが小さいため、2人が足を入れてしまうと動くたびに互いの足を蹴ってしまう。


 「寒くない?」

 「膝から下はコタツ布団に入ってるからそこまで寒くは感じないな」

 「むぅ……」


 柚羽はなぜか唇を突き上げていた。

 こういう顔をする時のコイツは何か企んでいる時だ。


 「柚羽、一体何を企んでいるんだ?」

 

 俺が問い詰めると、柚羽は体をビクッとさせていた。

 人のことを顔に出やすいとか言っているが、柚羽も変わらない。


 「奏翔が変なこというから、体がビクっとしちゃったじゃん! これがゴニョゴニョしてる時だったら奏翔に責任取ってもらうところだったよ! いやむしろ責任取って続きを——」

 「……なんか頭痛がしてきたからもういい」


 コイツのいうことに対して真面目にツッコミ入れてたら勉強どころではなくなってしまう。


 

 始まってから2時間近く経っただろうか、2人とも黙々と教科書を見たり、ノートに足りない箇所を書き込むなど勉強会らしいことが行われていた。


 「……あれ、これどうするんだったか」

 「どうしたの?」


 俺の呟きに柚羽が反応して、こちらを見ていた。

 ふと、柚羽のノートに目が入ったがノートにはデフォルメちっくなライガが書かれていた。

 うまく書かれているが……勉強する気ゼロだろコイツ。


 「いや、数学でわからないところがあって」

 「どれー?」

 「この方程式、どうやったら解けるんだ?」


 ノートを柚羽の方へ向けて、聞きたいところをシャーペンを差していく。

 すぐに答えがでてきたのだろうか、自信たっぷりな表情になっていた。


 「ここだと説明し辛いからそっちにいくね」


 柚羽は俺の方へとやってきたのはいいが、なぜか俺の隣に座ると足を伸ばしていた。


 「……こっちに入るなよ、狭いだろ!?」

 「狭いなら体をくっつければいいんだよ?」

 

 そう告げた柚羽は俺の体にべったりとくっついてきた。


 「こうすれば足も暖かいし、体も暖かいじゃん? あとは精神的にも温かくなれば最高なんだけど?」


 何かを要求するような目で俺をみていた。


 「……なんだよ、その精神的に温かくなるって……いや、言わなくていい」


 聞いてる途中で、柚羽はニヤけた顔で俺を見ていたので、何を言いたいのか理解することができた。

 

 「えっと、この方程式だよね? これはこうなって……」


 柚羽は俺のシャーペンを取り、次々と式をノートに書いていく。


 「これがこうなって、この答えが出るんだよ」


 教科書に書かれた答えと同じものがノートに書かれていた。


 「って早口で言ったけど、理解できた……?」

 「すごいわかりやすい説明だった……」

 「……っていう割にはすごい腑に落ちないって顔してない?」

 「……まあな、柚羽に教えてもらうなんて今までなかったからな」


 勉強以外でだいたい困るのは、柚羽の方が多い。

 ゲームだったり、スマホの使い方であったり……その都度俺が説明をしていたのだが。

 

 ちなみに、小学校の時は基本的に俺が柚羽に勉強を教えていた。

 いつの間にかその立場が逆転するとは思いもしなかったが。


 「もしかして、天才的な頭脳の持ち主である柚羽ちゃんに惚れちゃった?」

 「……それはない」

 「そこは嘘でもいいから惚れたっていってくれにゃん」


 柚羽は手で猫のポーズをとりながらあざとくウインクをしていた。

 

 「——さてと、もう少し進めるか」

 「放置するなバカぁぁぁぁ!」

 

 柚羽は叫びながら俺の腕にしがみついてた。


 

 「さてと、今日はそろそろ寝るか……」


 スマホで時間を確認すると日付が変わろうとしていた。


 「柚羽、そろそろね——」


 寝るぞと言おうとしたが、既に夢の世界へと旅立っていた。

 ……俺の腕にしがみつきながら。心地よさそうな寝息を立てて。


 「おーい、寝るなら自分の部屋で寝ろ」


 呼びかけるが反応は全くなかった。

 今年もこうなるのかとため息混じりに思いながら、俺の腕を掴んでいた柚羽の手を離す。


 「……よっこらせ」


 咄嗟にでた掛け声におっさんくさいと思いながらも、立ち上がってから柚羽の体を抱き抱える。

 正月の不摂生が響いているのか、去年より重く感じる。

 こんなこと口にだしたら、すごい勢いで怒られるに決まってるが……。


 「荷物は後にしてまずはコイツを部屋に連れていくか」


 独りごちながらダイニングを出ようとすると、柚羽の足が俺の尻に交差していた。


 「……起きてるだろ?」


 声をかけるが、返ってくるのは寝息だけだった。

 ゆっくり階段を上がっていき、彼女の部屋に入るとベッドの上に柚羽を下ろす。


 「……そんじゃおやすみ」


 そう告げてから柚羽の部屋を出て、ゆっくりと部屋のドアを閉めてから階段を降りていく。


 「……しゅきしゅきホールドはベッドに降ろしてもらってからやるべきだったぁ!」


 階段をくだり切ったところで、うっすらと声が聞こえたような気がした。

 どうせ柚羽の寝言だろう。


 テストまでの数日間は毎晩のように、コタツで勉強会が行われていた。

 ——俺だけそれに筋トレが付随されたんだが。


 それから数日してテストが始まった。

 いつもならわからなすぎて頭を抱えることが多かったが、勉強をしていたおかげかそれなりに解答することができた。



 「うがああああああ、また赤点やっちまったああああ!」


 テストが終わり、大半の生徒が明日からのテスト休みを楽しみにしている時、廊下で虎太郎が叫び声を上げていた。

 その先にはテストの順位と補修(補習)対象者の名前が掲示板に貼られていた。

 虎太郎の名前はもちろん補修(補習)対象者の方に載っている。


 「うっわ……さすがだな和田塚さんブッチギリの1位だぜ」

 「マジかよ、才色兼備の持ち主ってあの人のことを言うんだな」


 大半が注目しているのは、テストの順位に記載された柚羽の名前。

 その隣には『1位』と書かれている。


 「……勉強中ふざけまくってたのに、どうみても不公平だろ」


 周りが絶賛していくなか、俺だけ1人不平不満をこぼしていると、ブレザーの内ポケットのスマホが小刻みに揺れていた。

 取り出して画面を見ると、柚羽からのLIMEメッセージが届いていた。


 『惚れた?』


 送られたメッセージはそれだけだった。

 すぐに周りを見渡すと、生徒の群れから少し離れた場所から自信たっぷりの表情でこちらを見ていた。

 その姿をみた俺はすぐにこうメッセージを返した。


 『全然』と。

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