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100話 欲望解放へのカウントダウン?

 「ふぇ……!?」


 俺の言ったことに柚羽は目を大きく開けていた。

 日も沈んだのと岩陰で辺りは真っ暗になっているが、彼女の顔ははっきり見えていた。


 「い、今のっても、もしかして……お願いもう一回言って!」

 「……一度しか言わないって言ったろ」

 「えー! 言ってよー! 帰ったら何でもするから!」

 「……今、何でもって言ったな?」

 「うん、一緒にお風呂に入れでもいいし、寝る時に服脱げっていうのでもいいよ!」


 それは俺というよりかは柚羽の願望な気がするな。

 ……もう、逆の立場になってもいいかもしれないが。


 「……暗くなってきたから、そろそろ戻るぞ」


 わざとらしく空を見上げながら岩陰から出ようとするが、勢いよくパーカーの袖を引っ張られた。

 振り向くと、柚羽が「むぅ〜」と猫の様な唸り声を上げながら俺のことを睨んでいた。


 「……何だよ?」

 「……もう一回言ってくれなきゃ離さない」

 「どんな理屈だよ……」


 ため息をつきながら、柚羽に近づき……


 「続きは家に帰ってからな」


 素早く柚羽の耳元でつぶやいた。


 「みぎゃ!?」


 その直後、これまで聞いたことない声が聞こえてきた。

 顔もリンゴのように真っ赤になっていた。


 「……ってことだからアリア待たせるとうるさいから戻るぞ」

 

 俺も顔が燃えているのかと思えるぐらい熱くなっていた。

 

 ——何か、今日の俺おかしいな。

 きっと夏の海のせいだろうと1人で納得しながら、柚羽の手を取って海の家へと戻って行った。



 「あ、おかえりー! その様子だとうまくいったみたいだね」


 海の家に戻ると、入り口付近で俺と柚羽の荷物を持ったアリアが立っていた。

 俺たちの姿を発見すると、すぐにニヤニヤとした表情でこちらを見る。


 「……言っとくが礼を言うつもりはないからな」

 「別にそんなこと望んでないよ、私は2人が幸せになれたならそれだけで充分」

 

 心底そう思っているのか、アリアの顔は満面な笑みに変わっていた。


 「……ねぇ、奏翔?」

 

 俺の隣で柚羽が不思議そうな顔をしてこちらを向いていた。


 「どうした?」

 「うまく言ったってどういうこと?」

 

 そういえば柚羽には何も言ってなかったな……。

 こうなった以上、これまでのことを話そう。

 

 ——やっと伝えることができると思った瞬間、気分が軽くなった様な気がしていた。


 「……家帰ったら話すから」


 小声で答えると柚羽は「わかったよ」と俺に合わせる様に小声で返した。


 「それじゃ、そろそろ帰ろうか! あ、せっかく海に来たんだしお刺身とか食べたい!」


 アリアはそう言いながら、俺と柚羽に荷物を渡すと、歩き出して行った。

 ——最寄の駅の方ではなく、飲食店エリアがある方へ。


 「……置いていくか?」

 「私もお腹すいたから食べていきたいかも! それに……」

 「それに……なんだよ?」

 「帰ったらすぐ奏翔とまったりしたいし!」

 

 柚羽の言葉に俺はため息で返した。

 

 

 「ただいま……」

 「ただいまあ!」


 玄関を開けると同時に声を上げる俺と柚羽。

 

 「ごはん美味しかったね〜」

 「……できることなら今度は1人だけで行きたい」

 「なんで!?」


 あれから、飲食店エリアで遅めの夕飯を済ませたのはいいが、相変わらずアリアの注文した海鮮丼の量を見て、胃もたれを起こしそうになっていた。

 さらに、俺の隣では柚羽が頼んだ魚のみで作った『海鮮ハンバーグ』の物量も想像以上にあり、思っていた以上に胃へのダメージが大きかった。

 それもあってか俺は並盛りの海老天丼で満腹になっていた。


 アリアの家がある最寄駅は各駅停車しか停まらないため、途中の乗り換え駅で別れた。

 手を振りながら「送り狼にならないでよ〜」と思い出すだけでイラッとするような顔で見送られたのは忘れないからな……。


 数分前のことを思い出しているうちに先に家の中に入った柚羽が、ダイニングへとドアを開けていた。


 「帰ってきたぞ、ソファー!」


 帰ってきた安堵感なのか、久々に外にでた開放感が抜けきってないのか、ずっとテンションが上がりっぱなしの柚羽が勢いよくソファーへと飛び込んでいった。

 そしてすぐにソファに腰掛けるとこちらを向いて両手をこちらへと伸ばしていた。


「ほら、ここ空いてるからすぐに来るんだ!」

「……その前に風呂入ったらどうだ?」

「もしかして、遠回しに一緒に入ろうってこと?」

「……いや、汗かいてるだろ」


 着替える時にシャワーを浴びているとは思うが、日が沈んでも湿気のせいでそれなりに汗をかいていた。

 

「そうだけど、奏翔なら大丈夫だよ!」

「……どういう根拠なんだよ」


 この流れは柚羽がたまに口にする『甘えたがりの猫モード』なのだろう。

 できることなら、何とかして風呂に入ってからにしてもらいたいが、この状態でそんなことしたら、確実に風呂に乱入してくるにちがいない。

 そうなったら確実に俺が我慢できなくなる。そろそろ我慢も必要ないかもしれないが、本音言わせてもらうと風呂ぐらいゆっくり入りたい。

 

 「……わかったよ」


 どうにかして回避する方法を模索してみるが、行き着く先が同じだったので諦めて柚羽に従うことにした。

 俺がソファに座ると、自分の定位置だと言わんばかりに俺の膝の上に座る柚羽。


 「ふわぁ〜この瞬間がたまんねーぜ! アリアさんと奏翔のことで感情グチャグチャにさせられたから今日はいつもよりもすごいから覚悟してよ!」


 柚羽は猫のように顔を俺の体に擦り付けていた。

 

 「……怒りの矛先は俺じゃなくてアリアに向けてくれ、俺だって巻き込まれたんだよ」

 「でも、よかったんじゃないの? アリアさんの爆乳を堪能できたんだし〜」


 柚羽は顔をあげてこちらをみると、イタズラしそうな子供の様にニヒヒと笑っていた。


 「さっきも言ったけど、俺は——」


 さっき言ったことをもう一度口にしようと思うが、恥ずかしさで言葉が詰まる。


 「どうしたの? もしかしてさっきの感触を思い出そうとして——」


 恥ずかしさに耐えきれなくなった俺は勢いに任せて柚羽の体を抱きしめた。

 突然のことだったので、柚羽は驚きの声をあげていた。

 

 「ど、どうしたの?」

 

 声を震わせながら柚羽が声をかけてくる。


 「もしかして、奏翔も私の’わがままぼでー’に甘えたくなっちゃった?」


 ワガママボディってどんなのだと考えていると思わず吹き出してしまう。


 「むぅ……何で吹き出すかなぁ、寛大な心をもった柚羽ちゃんでも傷つくよ? そうなったら体で慰めてもらうよ?」

 「さらっと、自分の欲情さらけだすな」


 ツッコミを入れると柚羽はムスッとした顔でこちらを睨んでいた。


 「……でも、俺にとってはそんな柚羽がいいんだ」

 「ふぇ……!?」


 俺の言葉に柚羽は海岸で伝えたときの様に目を大きく開けていた。

 そして、柚羽の体を抱きしめる力を強めていく。


 「柚羽のそばにいるのは俺だ……誰にも渡したくない」

 「か、かなと……!?」

 

 ——柚羽とずっと一緒にいる時が楽しい

 ——胃がもたれようが俺が作ってくれた食事を美味しそうに食べてる柚羽がかわいい!

 ——何かに理由つけて俺に甘えてくる柚羽が愛おしくて仕方ない!


 決壊したダムの様に脳内では柚羽への想いが次々へと溢れ出していた。

 今まで我慢して分の自分の欲望が爆発しそうになっている。


 ——柚羽の全てがほしい。

 

 「……ことある理由をつけて俺に甘えてくるよな?」

 「う、うん……奏翔に抱きついてると気持ちいいし」


 今、俺がそんな感じだよ。

 

 「なら、たまには立場が逆転してもいいよな?」

 「ふぇ……!?」

 

 柚羽を抱きしめたまま、ソファの上へと押し倒した。


 「う、うわわわわっ……ちょっとまって、ここから先はお風呂入ってからの方がいいんじゃない?」


 柚羽は声を震わせながら訴えかけるが、それを無視して俺は——


 「……やっば、落ち着く」


 柚羽の胸に顔を埋めたのだった。

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