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漆黒のEDGE     作者: 三谷 章吾
2/6

第二幕

TOKYO終焉の時が迫っていた。狭い土地にぎっしりと超高層ビルとマンションが建ち並び、あくせく働く事に疲れた人々が、東京を離れ地方や東京郊外に生活拠点を換えていた。致命的な状況として、電力の安定供給が出来なくなって来た事だ。国内に54基もあった原子力発電所のほとんどが老朽化と人口減少の為の人材不足に加え、電力会社の細分化で、原発への資金供給が減少し、停止していてもコストのかかる原発に頭を悩ませていた。その稼働停止している原発燃料を核転用しようとする組織が東京をいのままに操り首都の実権を狙っていた。


 五年前、真田はNATO諸国とロシアの国境付近の小競り合いの紛争地帯から帰還したばかりの身体で新たなる作戦の準備に取り掛かっていた。標的目標は、原発核転用推進評議会なる団体への潜入調査及び情報収集で、水面下で東京を狙っているあらゆる組織の収集も兼ねていた。

 「真田、まず何処から攻める?」

「そうだな、評議会NO3と噂されている三浦から探るか?」

「笑、いきなり本題に近い奴からとはお前らしいな!」「鉄は熱いうちに打てというじゃないか!」

「三浦は表の顔は不動産を手広くやっているらしいが、元は人身売買と風俗のあっせん人で今も数店舗の風俗店を経営している。」

「という事は奴の経営する店の店員になりすませって事だなっ!」

「いやそれは俺がする、江口は顔がばれている可能性があるから店の常連客になって嬢たちから三浦の情報を集めてくれ!」

「えっ? いつもと逆じゃない? いつもチャライ役は真田氏やのに! 笑」

江口亮介、潜入調査とスナイパーの技術はトップレベルで真田とは高校の同級生である。

 [江口、近況報告ヨロシク、こちらも標的の行動パターンのデータ送ったのでインプットしといてくれ以上。]

 「吉田君、三浦取締役から、吉田君の以前の仕事を聞いておいてくれと言われたんだけど、前の仕事は何をしてたのかな?」

「前の仕事ですか? かなり色々転々としましたが、ここ2、3年は人材派遣会社で、人材育成の部署に居ました、九州の小さな会社でしたが」

支配人の木村は三浦の小判鮫で全ての情報を三浦に伝えていた。


 真田は三浦の経営する店で吉田と名乗り潜入していた。

真田[今夜、三浦が赤坂方面に向かうらしい、奴の使っている手足を調べてくれ、手足が解ればおのずと三浦の次も見えてくる、わかった時点で猿に任せてくれ。]

江口[了解。]

 真田と江口とのやり取りは左耳の後ろに埋め込んであるチップで会話、データ保存にはチップにスマホなり、携帯端末をかざす事で保存できた。

「内のオーナーは不動産で成功しているのに、黒歴史なるこの業界から足を洗おうとはしないんだよ。自分を忘れない為に続けているとは言ってはいるけどねっ」

「そうですか、人はそれぞれ背負ったものがあるでしょうからねっ。」

人身売買は金になるんだよ! 風俗は表の顔なんだ! この木村と言う男は所詮、三浦に使われるだけの奴なんだなと真田はほくそ笑んだ。


 三浦を乗せたメルセデスが赤坂のひっそりと佇む料亭に入ってゆく。江口は三浦と繋がりのある店の嬢に探りを入れながら情報を入手していた。三浦もなかなか用心深い奴で人を信用しないらしい。江口はするりと身をかがめ音もなく屋根裏の暗闇に紛れ、三浦の追跡を開始した。

江口[三浦が会っている奴は、経済界の大物で宇宙ロケット開発事業を拡大している三木原徹だ! ]

真田[三木原って事は、手足は中国マフィアの哥狼会(かろうかい)だ! まず哥狼会の手下に帯を着けてくれ! ]

江口[解った! 帯を猿に換えて枝を殖やす様に手配した! ]

真田[さすが江口やるねぇー抜かりなしだなっ笑笑。]

江口[ここからしばらく通信途絶える。]

真田[了解。]


 通称、(さる)と呼ばれている真田が統率する工作集団は、日本では古くから忍者衆団やらっぱなどと呼ばれ戦国時代には各地の戦国武将が集団ごと抱えていた。真田の先祖は、甲斐の武田信玄に仕えた真田昌幸の次男、真田幸村(真田信繁)なのだが歴史の闇に紛れて本当の事は解らない。その信繁に仕えた真田十勇士の一人、猿飛佐助の名をもらい猿と名付けた真田幸貞が率いる忍者衆団である。顔も人数も性別も真田以外、誰も知らない。敵を(あざむ)くにはまず味方からが鉄則である。

 江口の合図で哥狼会に着けた帯が猿に変わった。

[そのまま枝を増やしつつ哥狼会を侵食してくれ]

[了解しました。]

真田[江口、俺は三木原を追跡していたのだが、三木原が核転用した小型ロケットを運ぶルートを突き止めた! そのロケットを頂戴する。表に出せない物をパクられても表に出ないからな、笑。]

江口[わかった! サポートする。]

相変わらず大胆不敵なやつだと真田の行動力に、いつも感心していた。


 猿が音もなく哥狼会の手下の背後を取り、確実に1人また1人と首の神経にナノマシンを注入してゆく。ナノマシンを注入された者は、24時間で完全に意識が失くなり、こちらが用意した人工知能の意識を発動させ味方にして行った。これが出来るのは、真田の猿集団かアメリカの一部の秘密機関位のもので、人を消さずして組織を手入れる真田が思い続けた理想の手法である。

[三浦はどうしましょう? ]

[三浦はまだ泳がせておけ、奴には昔の礼がまだ済んでいないので相手は俺がする。]

[わかりました、江口さんも気を付けてください。]

[解った。それでは哥狼会を全て入れ換えた後、三木原に行くぞ。]

[もう動いています! ]

[速いな! さすがだ! 笑]




 使用済廃棄物と表記された梱包を乗せた1台のトレーラーが神奈川の山中をひた走る。検問と称した猿の偽警官がトレーラーを路肩に寄せ運転手を入れ替え、隠してあった全く同じトレーラーに運転手を運び気絶をとき何食わぬ顔で偽警官の検問を通り過ぎる。中身を廃棄物に換えられたトレーラーは予定通り横須賀港から、秘密裏に上海に運ばれる。本物のロケット搭載可能核融合は富士山麓の元自衛隊基地の地下に運ばれた。

真田[お疲れ、哥狼会は猿に入れ替えたので、廃棄物である事はバレない。バレる時は上海が日本国に取り込まれた時だろなっ! 笑]

江口[俺はこれから、三浦の追跡を始める。]

真田[三浦には注意して挑んでくれ。]

江口[真田、もしもの時は理紗を頼む! あの娘はお前を(した)っているから。]

真田[やばくなったらあれを使え! 必ずお前を助ける! ]

江口[わかった、その時は頼む。]

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