第一幕
AD2045.7.4 カチッカチッカチカチカチッカチッ、
「残りゲート二箇所で侵入できます。神経伝達器官、侵入成功これよりナノマシン放出開始確認致しました。」
「お疲れ様。」
「現時刻12時をもって日本政府を帝へ大政奉還した! 撃ち方始め! 目標、中国北京! さて100年前の消された真実を取り戻そうか!!! 撃てぇ~」「ミサイルはアメリカからの弾道ミサイルだと中国側AIが認識しました。」
「了解した!」
AD2021に起こったパンデミックを契機に各地で紛争が勃発し、世界人口削減の為にばら撒かれたとされるウイルスの効果もなく、人口は増え続け、各国々で食糧確保が最重要課題とされていた。
かつて世界第三位の経済大国であった日本国も超少子高齢化の歯止めをする事もせず、自分らの保身の為の政策を優先する高齢者が選ぶ腐敗しきった政治家どもが、日本をここまで恥ずかしい国に貶めていた。
アメリカの安全保障に守られ、少ない子供達の学力低下、運動能力低下、全ては1945年の第二次世界大戦の敗北でアメリカに占領され、ウォーギルトインフォメーションプログラムと呼ばれる国民の精神的育成を元から変えて戦いを二度とさせなくする政策、歴史文化の偽りの教育を子供達に植え付けたアメリカのもくろみ通り日本人の本来備わる大和心はほぼ消滅し、グローバル化と言う名の元に世界中の外国人が日本の安全神話を食い物にし、我が物顔で日本にのさばっている。
2
無人の大型ドローンJD15が六甲山系のふもとの地下シェルターに格納されてゆく。古都、京都から南西に位置するかつて平清盛が晩年期に遷都した地名、福原を日本の首都にしようと目論む者こそ、この国の歴史を根底からくつがえす事が出来る可能性を秘めた男、真田幸貞である。
次世代型量子コンピュータの開発により、人工知能(AI)が人間の頭脳を超えてから20年、世界各地の発展途上国家がAIでの国家運営に乗りだし、数々の有効的な政策を実現させて行き、各国々の民衆が飢餓で飢える事が少なくなっていった。
真田幸貞。出生は東京郊外、十代の頃から各地の紛争地帯を転々とし、彼が来れば勝利あり、不死身、死神など呼ばれているが、定かではない。
月明かりに照らされた穏やかな海面を巨大な水柱が上昇してゆく。水中から現れたその艦は浮上している部分だけでゆうに200メートルを超え、更に驚くべきは海面浮上と共に格納された潜望鏡部分が変形し操舵室となり、その前方には45口径46㎝三連装砲の大砲が二基格納されていて、浮上すれば戦艦大和その物である。通常戦艦の船体色は灰色が定番なのだが、この日本防衛軍特殊部隊が秘密裏に保有する、量子熱核原子力潜水艦真大和と真武蔵は漆塗りの様な漆黒であり夜間、月明かりに照らされた海面に映る戦艦大和の姿をした潜水艦の色は銀色に映るのである。それは京都の銀閣寺がモデルとなっているのだ。この真大和を中心とする潜水部隊を特殊部隊甲賀忍術潜団と言い沖縄諸島方面に配備されている。いっぽうの真武蔵を中心とする潜水部隊を伊賀忍術潜団と言い東側海域方面に配備されている。
大政奉還(政権交代)をさかのぼる事3ヶ月前、真田の姿は甲賀忍術潜団、真大和がドック入りするとある南洋の無人島にあった。真大和の視察と各地を点戦してきた戦友との再会の為である。
「真田室長、お久しぶりです! 元気で何よりです!」「室長はやめてくれ! 西郷も元気でなによりだ、真大和をこの目で見ると、恐ろしい程の威圧感だな!」
「ただ、全長が長いだけに取り回しに苦労してます。ですが人工知能(AI)のKing がかなりのキレ者で非常に助かります。真田さんはKINGと知り合いだと聞きましたが本当ですか?」
「亡き戦友の記憶チップの一部だよ、やつが完全覚醒したら怒るだろうなっ笑。」
「どうりで真田さんが来てからKINGの海馬レベルの数値が上昇してるわけだ!」
「そうか! 少し真大和を海に出してくれないかな?」
「そう言われると思い準備万端です。笑」
「KING! エンジン始動! 自動操舵」
「了解しました、艦長」
潜水艦とは最高の軍事機密の塊であり、潜水艦が建造できる国=(イコール)先進国家である証である。原子力潜水艦を保有する国は、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5ヶ国が公式発表しているが、日本の様に保有していても公表しない国があるのが現状である。
真大和の全長、最高出力、最深潜航距離も不明であるが、大和を名乗る艦と言う事は、紛れもなく日本の最高技術と叡知の塊である。
「西郷! 大和の最高出力は?」
「潜航距離500m時点での最高出力が約50ノット、時速約90kmです。しかし本当の出力は未知数でわかりません。」「ひと昔前の空母で戦闘機を運んで空中から攻撃する戦の時代は終わったな! 内の空母なんて今は無人の戦闘機型ロケットと無人偵察ドローンの発進発着基地としての船だからなっ!」
「その下に潜水艦部隊の陣形があると言う事だな。しかし、他国の原潜も隠密行動だから姿は見えないが、各国しのぎを削っているのだろう。」
「真大和! 浮上変形、用意!」
「真大和、浮上!」
浮上した真大和の甲板に降り立ち二人は月明かりの海面に揺らぐ銀色の船体を見ていた、
「あの準備はどれ位進んでいるんだ?」
「七割方進んでいるのですが、あと46㎝砲に配備した超電磁砲のシュミレーションの場所を探してまして!」
「それなら広島の呉港の端にとっておきの場所があるから行くか?」
「今から?」
「連絡を入れてくれKING!」
「了解致しました! ………お立ち寄り下さいとの事です。」「よしそれでは呉港に向け急速潜航。」
大東亜戦争で、戦艦大和、武蔵に搭載されていた46㎝三連装砲の大砲は前方に二門、後方に一門の合計三門なのだが真大和、真武蔵には、前方に二門だけで後方は、あらゆるミサイルが搭載可能なハッチになっている! 前大和、武蔵には主砲以外の甲板の隅々に大小の対空砲や機銃が装備され手動で狙いを定めて数人で砲撃していたが真大和、真武蔵の対空砲は超電磁で自動砲撃が可能になり、無数の弾幕をいとも簡単に張れる為、戦闘機は近づく事すらできない上に、数十機編成の戦闘機から発射される無数のミサイルを難なく撃墜する事ができる。レールガンによる合計6砲の主砲の破壊力と飛距離はそれらを凌駕する程凄まじいであろう。