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サラさんが戻ってきた時に手にしていたものはワンピースになっているパジャマと、大量の布おむつだった。


「ぬ、布オムツ….!!」


存在は知っているものの使ったことがないので驚いた。こんなに便利な魔術があるのにも関わらずめちゃくちゃ原始的…!!

肌触りはふわふわしているので、肌には優しそうだが、今まで使っていた紙オムツとは違うので、望がどう反応するかが不安だった。

これは夜眠れないかもしれない…


今日着ていた服はお風呂に入るついでに手洗いしてしまおうと思う。何もかもやってもらうのは申し訳ない。乾かなかった時はサラさんに洗浄魔法をかけてもらうようにお願いしておいた。


入浴中に何か分からないことがあるかもしれないので、サラさんには残ってもらい、シリウスさんには退室いただいた。流石に私もそれくらいの恥じらいはある。


お風呂は、みんな憧れ猫足バスタブ。まるでお姫様にでもなった気分になり、少しだけ気分が高揚した。

と言っても、子供と入るお風呂はゆったりたっぷりのんびりできない。

子供2人を洗い、自分を洗い、洋服を洗い…何とか湯船に浸かる頃には、一日の疲れがどっと襲ってきた。

気を抜くと寝てしまいそうなので早めに上がって、早めに寝る事にする。

お風呂から出るとサラさんが待っていた。


「サラさん、ドライヤーってありますか?」


「…ドライヤーですか?」


私は髪が短いし、望もぽわぽわの薄毛なのでドライヤーは使わないが、愛は髪が長い。ドライヤーがないと乾かないのだ。

そもそもこちらにはドライヤーがあるのだろうか?


「すみません、書くもの借りてもいいですか?」


サラさんに紙とペンを用意してもらうように頼むと、自分のマントの中からノートとペンを貸してくれた。

そのノートをありがたくお借りして、ドライヤーの絵を描く。

ちなみにそこまで上手ではない。


「えっと、こんな形をしてて、温かい風とか冷たい風が出てくるもので…」


本物のような絵が描けたわけではないが、ある程度特徴の分かる絵は描けたと思う。

サラさんに見せようとした瞬間、ボンっと煙が出て来た。反射的にノートとペンを落としてしまったのだが、ノートとペンとは違った落下音がした。

ゴトンって感じの。


足元にはドライヤーが転がっていた。





「ええええええええ!?」





サラさんと私は今日一番の大声を出して驚いた。

なんでどうしてこうなった?


「ヒカリ様…!これはスキルが発動してるのでは!?」


スキル…確か、私のスキルは創造だった。


「ええ!?創造って、そゆこと!?いやお手軽すぎんだろ!?怖いわ!!」


「私も初めて見ました…」


これは非常にまずい気がする。

とりあえず出てきたドライヤーを手に取り、よく観察してみる。

確かに私たちがよく使っていたドライヤーにそっくりだ。しかし、電気コードは見つからない。

電気コードがなければ当然動くこともないので、スイッチを押しても何も起こらない。


宝の持ち腐れじゃん。


ものすごくがっかりした。しかしよく見てみると、電池を嵌めるところに類似した箇所がある。なんか嵌めるのか?

そこでふと思い出した。

ルウさんがもぎ取った魔法石のことを。


「サラさん、魔法石って持ってます?」


「私のはこれですが…」


そう言って、少し小ぶりの魔法石を渡してくれた。

この小さいのなら入るかな。

試しにはめてみるとピッタリとはいかなかったが、まぁなんとか収まった。

サラさんにお礼を言いながらスイッチを入れる。

ブオオオオオオオオンっと大きな音をたてて、ドライヤーは回り始めた。


やはり。

私たちの世界は基本的に電気に頼った生活をしている。一方こちらの世界では電気ではなく魔術によって生活をしているので、それを代用するのではないかと思ったのだ。


「サラさん…これがドライヤーです…」


こんなものを出現させてしまったことに、自分でも頭の理解が思い付かずに苦笑いしながらサラさんに見せる。

サラさんも言葉が出ないようだ。

どうしようか迷っていると、愛がくしゅんっとくしゃみをした。

すっかり忘れてしまっていたが、愛の髪はびしょ濡れだった。


「サラちゃん!まほうで、かみのけかわかしてー!」


…確かに。

ドライヤーいらないわ。

結局、役目がないドライヤーではあったが、問題は私が描いたものが実体化して、しかも使えるものだったということだ。用途は無いにしても。

サラさんに愛の髪を乾かしてもらって、とりあえず明日まではこのことは内緒にしてもらう事にした。

じゃないといつまで経っても休めん…!!

きっとシリウスさんと、ルウさんに見つかったら終わりだ。

サラさんはそれはできないと言って首を横にブンブンと振っていた。ミルドレッドさんから何かあったら報告する様に言われたそうだ。

ミルドレッドさんは魔術師団で一番偉い人だもんな。そしてサラちゃんはおそらく下っ端…

仕方ないので、ドライヤーを持ってミルドレッドさんに報告してもらうが、私が話をするのは明日という事に決めた。そして、シリウスさんと、ルウさんには明日まで絶対に言わないことを約束してもらった。

サラさんはシリウスさんにいつも振り回されているので、私の気持ちも分かってくれたようだ。


しかし、なんとなく描いた絵でも実体化してしまうのだからこれからお絵描きも気をつけなきゃいけない。

あれ、でも描いちゃえば欲しいものが手に入るってこと…?





「あ!サラさん!もう一回紙とペン貸してくださいー!」


私には今すぐ必要なものがあったじゃん!!!

私はサラさんから借りたノートにまた絵を描いていく。最後まで描き終えると、先ほど同様ボンっと煙を出して、欲しいものが出てきた。



そう、紙オムツだ。



「やったーーー!!」


これなら今夜もいつも通り休める!!小躍りをし始めた私を見て、愛と望は大笑いしている。

サラさんはポカーンと口を開けたままだった。


読んでくださりありがとうございます!

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