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気分転換と初めまして



馬車の中では愛がずっと話していたため、魔術師団に着いてから今後のスケジュールについて大まかなことを教えてもらった。

シリウスさんの家から家庭教師とダンスの講師をそれぞれ1名ずつ派遣してもらうことになったそうだ。座学が週に1回、ダンスは週に2回で、他の日はスキルの研究に当てるらしい。もしそれで不足があるようならば、スキル研究の分を一時的に減らして様子を見ると

のこと。私は頷きながら、きっとダンスで補習が必要になるのだろうなと思った。ただでさえ運動音痴なのに加えて運動不足が著しい。怪我をしないようにだけ気をつけようと心に決めた。


シリウスさんが仕事に戻った後、私は団服に着替えた。午後は今のところ予定がない。いつもならばライドンさんのところへ向かうが、今はちょっと落ち着いて過ごしたいと思った。ただ、子供がいるとそうも言っていられない。

私は先程シリウスさんのお家で愛と一緒に草花でケーキ屋さんごっこをしていたことを思い出していた。同じように草花で遊んでみてはどうかと思い、私はノートにシロツメクサの絵を描いて写真を出現させると、アンネさんに見せた。

こちらの世界にもシロツメクサはあるとのことだったので、咲いているところに連れて行ってもらえるか聞いてみた。しかし、魔術師団の中での生息地は分からないそうなので一旦サラさんに聞いてこようと思って図書館へ向かった。


1人で図書館まで行くのは初めてだったので無事に着けるか不安だったが、迷いながらもなんとか到着した。

扉を開けて覗き込むと、図書館で働く人達は大きく肩を震わせた。突然来てしまったので驚かせたようだ。私は一番近くにいた隊員に、サラさんを連れてきてもらえるようにお願いした。

思ったより早くサラさんに会うことができたので、早速シロツメクサの場所を教えてもらい子供達とアンネさんと一緒にその場所に向かうことにした。

サラさんから教えてもらった場所は、雑木林のすぐ近くだった。昨日も雑木林に行ったのに、シロツメクサが咲いているかなんて全く気にしていなかった。

着いた先では一面シロツメクサに埋め尽くされた土地があった。どうして気付かなかったのか不思議なくらいだ。

私はアンネさんに愛と望の相手をしてもらえるよう頼んで、私は一人で黙々とシロツメクサで花冠を作ることにした。


私は幼い時、母と一緒に花冠を作っていた時のことを思い出しながらシロツメクサを編んでいく。

長い茎のものを2本選んで、交差して持ち、片方をクルンと巻きつける。それをどんどん繰り返して好きな長さまで編んでいく。

ぼーっとしながら編み続けると案外すぐに編み終わった。最後に、花の最初と終わりを重ねて、まとめる用の花で繋げて結ぶ。余ってしまった茎は目立たなくなるように差し込んでいき、隠したら出来上がりだ。


「愛ちゃーん。ちょっとおいでー。」


「なーーーーにーーーー?」


アンネさんと望と一緒に追いかけっこをしていた愛を呼び寄せる。まだまだ子供らしい走り方をしている愛を目を細めて眺める。

私の元に到着して、ちょこんと座る愛の頭に出来上がった花冠を乗せてあげると嬉しそうにしながらポーズを取っている。少々不恰好ではあるが、久々に作ったにしては上出来だ。

今度は愛と一緒にアンネさんの分と望の分を作る。


「こーやって、こー?」


「そうそう、上手だよ。」


最初は茎を短くしてしまっていた愛も、段々とコツを得てきたのか上手に作れるようになってきている。少し緩めに編んでいるので壊れやすそうではあるが、なんとか望の頭に乗りそうなくらいの小さな花冠を作ることができた。

この世界は科学がない代わりに、自然が豊かだ。幼い頃に暮らしていた田舎を思い出す。あの頃はなんでもおもちゃになったし、なんでもおやつになった。通学路にあった酸っぱい野いちごやグミの実は成長するにつれて目にすることがなくなっていった。きっとこの世界にはそういうものがまだ沢山あるのだろう。

私は改めて、この世界のことを知らないし、この世界でやらなくてはならないこともやりたいことも沢山あるんだなと思った。何よりも、楽しそうにしている子供達の笑顔を守らなければならない。きっとこれからもたくさんの人から色々なことを言われていくのだろうと思う。その度に、じっくり考えて、気持ちの整理をしていけるようにしたい。

私と愛は出来上がった花冠を持ってアンネさんと望の元へと走った。








愛からもらった花冠を、望があっという間に壊してしまうというハプニングはあったが、思いっきり遊んで、おやつを食べたくなってきた頃だった。

突然、猛スピードでライドンさんが駆け寄ってきたのだ。猪のような勢いだったのでびっくりして娘達を抱え込む。息を切らしたライドンさんは、頬を赤く染めて嬉しそうにしている。


「ユキが起きた!!」


「ええ!?」


ずっと眠り続けていたユキの目が覚めたそうだ。私たちが午前中に外出している間に目が覚めて、ミルドレッドさんにはすでに報告してあり、第二部隊医療部の人にも健康状態を診てもらってあるらしい。やはり栄養状態に問題はあるものの、体力はだいぶ回復したらしい。ユキが目が覚めて突然の環境の変化に驚いて怯えていたようだが、ユウが一連の流れをしっかりと伝えてくれたおかげで、今はだいぶ落ち着いているらしい。ライドンさんはユキが落ち着いたのを見計らって、私達を呼びにきてくれたらしい。

私は大慌てでユキの元へ向かった。子供達はアンネさんがおやつを食べさせてくれると言うので任せることにした。ご飯を食べたら連れてきてくれるらしい。


ライドンさんについて行こうと頑張って走るが、運動神経ゼロの私の足ではとてもじゃないが追いつけなかった。そんな私を見かねたのか、待ちきれなかったのか分からないが担ぎ上げられて運ばれている。私はライドンさんの左肩にタオルのように乗せられて、落とされないようにライドンさんの背中にしがみついた。どうか振り落とされませんように…!!


読んでくださりありがとうございます!

評価、ブックマーク、感想、レビューも喜んでおります!

誤字報告も助かってますー!

これからもよろしくお願いします!

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