シリウスさん家行ってみた
昨日は色々なことが一気にあったので疲れてしまい、シリウスさんの家に持っていくハーバリウムを作ってから、すぐに眠ってしまった。今朝もなかなか起きれず、アンネさんに起こしてもらってしまった。
寝ぼけた頭のままアンネさんに今日の服について相談する。
正直なところ、私はチャーリーさんに作ってもらった学ランドレスを着て行きたいのだが、シリウスさんのお家からもらったドレスが大量にあるのだ。
たくさんもらったのにも関わらず、ほとんど袖を通していない。
愛と望の服はありがたく使わせてもらっているのだけれど、私のドレスはすっかり箪笥の肥やしになってしまっているのだ。
「流石に失礼ですよねぇ…?」
「そ、うですねぇ…。」
アンネさんも言いづらそうにそう言ったので、今日はシリウスさんから頂いたドレスを着ていくことにした。正直気が重いけれど、初対面だし仕方がない。
アンネさんとクローゼットの中を覗き込んで一緒にドレスを選んでもらうことにした。
「この赤のドレスなんていかがですか?」
「…赤かぁ。」
私は第三部隊で赤いドレスを提案された時のことを思い出した。その時はシリウスさんに青にするように言われたのだが、何故赤なのだろうかと不思議に思う。私は生まれてこの方赤い服を着た記憶がほぼ無い。自分に似合う色だとは思わないからだ。
「なんで赤なんです?」
「坊ちゃんの瞳の色なので。」
ああ、そういうことか。
私はジトっとアンネさんを責める目で見つめた。アンネさんは悪戯が成功した子供のようにニヤニヤしている。私は、深くため息をついて、第三部隊でのことを伝えた。アンネさんは頷きながら話を聞いて、そのまま何かを考えるようにドレスを選び始めた。
アンネさんはエンパイアラインの上品なドレスを選んでくれた。紅碧というのか、かすかに紅かがった淡い空色で露出も少なく、落ち着いた印象だ。
「深い青のドレスもあったのですが、私個人としてはヒカリ様にはこちらがお似合いかと。」
私にドレスを当てて、アンネさんはにっこりと笑った。私はそのドレスに決めて食事を済ませた後に着替えることにした。愛と望もいつもよりもおめかししている。
洋服もメイクもいつもはダリアさんにやってもらっているので、アンネさんにやってもらうのは初めてだったが、短い髪を綺麗に纏めてくれて、化粧もシミやそばかすもしっかりとカバーしてくれている。
「すごい…!アンネさんすごい上手ですー!!」
私は興奮気味にアンネさんに言うと、アンネさんは嬉しそうに胸を張った。
愛が私が久しぶりにドレスを着ているのが嬉しいのか、一緒にくるくると回って踊りながら笑っている。望は不思議そうにその様子を見ていたのだった。
しばらくそうしているとノックの音がしたのでアンネさんに扉を開けてもらった。シリウスさんが迎えに来てくれたのだろう。
私はハーバリウムを持って、シリウスさんに見せた。ハーバリウムは真っ白のバラとカスミ草を入れて、大人っぽく仕上げてみた。シリウスさんに感想を聞こうと思ったが、黙り込んで固まっている。
「…あれー…このハーバリウムダメだった?ちゃんと花言葉も聞いたんだけど…」
「あ、いや、いいと思いますよ〜すみません。ドレスだったもので、びっくりしてしまいまして〜…」
シリウスさんはいつもの団服を着ていたので、私も団服で来ると思っていたそうだ。せっかく貰ったドレスだったので着てみたのだと話すと、パッと目を逸らして褒めてくれた。
私は不安になってアンネさんの方を見ると、アンネさんはニヤニヤしながら親指を突き立てている。アンネさんが大丈夫だと言うなら大丈夫なのだろう…。
私は小さくため息をついて、愛と望を連れてシリウスさんのお家に向かうことにした。
「想像以上にでかい…」
シリウスさんの家に着いての1番最初の感想はそれだった。
王宮や魔術師団を見ていたので、立派な建物はもう驚かないだろうなと思っていたが、やはりここまで大きくて民家だと言うのだから驚いてしまう。
庭も随分と大きいので、子供達を遊ばせていたら迷子になってしまいそうだ。
キョロキョロしながらシリウスさんの後についていき、家の中に入る。
扉が開くと従業員らしき人たちがずらっと並んで迎えて下さった。ある程度は予想していたものの、実際にその光景を目にすると圧倒されてしまう。
チラリとシリウスさんを見ると、思ったよりも上機嫌そうだ。
執事らしきおじさまがシリウスさんと和やかに会話しているなか、他の人の視線が痛い。悪意を感じることは無いものの、久しぶりに好奇の目を向けられて居心地の悪い思いをする。愛も望も緊張しているのか、私にしがみついている。
「では、ヒカリ様、行きましょうか〜。」
緊張していて、全く話を聞いていなかったが、移動することになったらしい。シリウスさんのところに愛が駆け寄って、抱っこをせがんでいた。
シリウスさんはニコニコしながらいつも通りに愛を抱っこしていた。
「ちょ!シリウスさん、歩かせても大丈夫ですから!」
「いえいえ〜アイ様も疲れたでしょうから〜。」
そう言ってシリウスさんは歩き出してしまった。私が気にしているのは周りからの視線なんです…従業員の皆様もプロなのであからさまに見ることはしないものの、チラチラと見てきている。
執事らしきおじさまは驚いた表情をしてこちらを見ていたので目が合ってしまった。
「すみません、シリウスさんにこんなこと…」
「いえ、お気になさらないでください。こちらこそ申し訳ありませんでした。シリウス様があんなに楽しそうにしているのを見るのは久しぶりで…」
おじさまは嬉しそうに微笑んでいた。白髪混じりの眉が下がって、目尻には皺が深く刻まれている。
望は人見知りをしているのか私の胸元に顔を押しつけて隠れている。私はそのままおじさまと話しながらシリウスさんの後を歩いていく。
「シリウスさん、そんなにつまらなそうにしていたんですか?」
「魔術に触れている時はあのように楽しそうにしていらしてましたが、人と関わってるところではなかなか…」
何かを思い出したようにクスクスと笑っている。私もアンネさんが言っていた昔話を思い出して苦笑していた。
そんな私たちをシリウスさんは少しムッとしながら見ていた。
「着きましたよ〜?」
ムッとしたままのシリウスさんが指さした先には応接間らしき空間があった。私はシリウスさんに促されてソファに座って待つことにした。
「シールス!あいちゃんとおどろ〜!」
「はぁ!?愛ちゃん!?踊りません!
座ります!」
シリウスさんを何故かダンスに誘った愛ちゃんに驚き、慌てて止める。執事のおじさまは思わず吹き出してしまっているし、シリウスさんはポカンとしていたが、クスクス笑って愛の手を取っている。私の止める声を聞かずにシリウスさんと愛は一緒に踊り出してしまった。私は望を抱っこしながら止めるために立ち上がった。
「あら、随分と楽しそうね。」
優しそうな声がする方を見ると、綺麗な女の人が立っていた。
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