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「…もういいわ。馬鹿みたい。」


オリビアは納得できないようだったが、私たちが大笑いしていて話にならないと思ったのか、渋々受け入れてくれたようだ。


「いやー本当ごめんね。とにかく私の正体は聖女召喚してみたらついて来ちゃったお母さんってだけだから。」


「…もう指摘するのも疲れたわ…。」


頭が痛くなって来たのか、こめかみを押さえながらため息をつくオリビアにお構いなしに私とエリックさんは話を続けた。


「まぁオリビアからしたらビックリするだろうけどねーあの魔術バカがドレス着た女の子連れて歩いてるんだもん。」


「子供達のことは見えてなかったの?」


「…姉妹だと思ってたのよ…。」


歳の差がありすぎるだろと思ったが、こっちの世界では政略結婚で権力者の後妻として再婚する若い子もいるようだからきっとありふれたことなのだろう。

4.5歳若く見られるくらいなら浮かれるくらいには嬉しいけど、少女のように思われていたと言うのだからガッカリしてしまう。

私が気にしているのを知っているエリックさんがまた笑い出したので無視してオリビアにシリウスさんについて聞いてみることにした。


「オリビアはさーなんでシリウスさんなの?顔とか地位だったらそこで馬鹿みたいに笑ってる人でいいんじゃん?」


「わ、ヒカリちゃんひどいな。」


エリックさんは気にしてないのにわざとそんなことをニヤニヤしながら言ってきた。ダメージ受けないの知ってるから言ってるのだと言うとまた笑い出してうるさい。


「…もちろんエリック様も素敵ですわ。でもシリウス様の家はとても由緒ある家柄ですし、シリウス様ご自身も魔法の研究で実績を残していますし、高い魔力があることはそれでも証明されていますわ。あなたはご存知ないでしょうけど、高い魔力を持つということはこちらの世界では重要なことですのよ。それにあの涼しげな顔立ちも素敵だわ。」


ムッとしながらもオリビアはちゃんと説明してくれる。

それでも私はあの掴み所のない感じとか、人の気持ちに疎いところとかを考えるとどうしても疑問に思ってしまう。根が悪いってわけじゃないんだけどさ。

それに家柄とかシリウスさんのもつ肩書きも重要だそうだ。その辺はきっと貴族として育ち、そこから得た知識や常識からくる判断なのだろう。


「正直言えばそうやって相手を見つける人たちも私たちの世界にはいたと思うのね。家のためとかさ。でも身近にはいなかったから、そういうのは新鮮。」


日本でも顔がいい方が当然モテるし、尚更収入も良ければそりゃ競争率は上がる。そういうハイスペック男子はどこに行ってもモテるんだろう。

それとは別で、家柄っていうのはあまり気にしなかったように思っていた。しかし、貴族などの階級という明確な違いはなくても服装や習いごとなどから家の裕福さには格差があったことは確かだろう。

貴族だ、平民だと階級がはっきり分かれているこちらとは違い、それが明確ではなかっただけで、日本でも同じような思考はあったのかもしれない。


「あなたの世界はどうだったの?」


「うーん…年齢によるかな…私がいたところは結婚する年齢の平均が30歳を基準に前後5歳くらいの間にすることが多いのね。」


「へー結構遅いんだね!」


もっと早い人も居れば、もっと遅い人もいるけれど、まぁだいたいはそれくらいだろうと説明する。


「大体20代半前半くらいは好きって気持ちを重視してる人が多くて、それを過ぎると好きだけじゃなくてその人と生活していけるかなとか、一緒にいて安心できるかなとか仕事どうしようかなとかそういうことを考えて結婚する人が多いと思う。」


実際若い時は収入なんて考えないで、ただ漠然と好きだからずっと一緒にいたいなって気持ちで付き合うことも多いだろう。恋に恋する…なんて言葉があるように、若い時は現実よりも理想を求めていられる。しかし、年齢を重ねていくとそれだけではなく現実も見えてくる。そうなると、収入だったり、性格や価値観の一致など一緒に生活していく上で必要になるものについても考えて、気持ちだけの問題ではなくなってしまう。


「相手は自分で選ぶのかしら?」


「そうだね。基本的には好きになって、付き合って、結婚。」


「つきあうってなにかしら?」


オリビアは興味があるのか次から次へと質問をしてくる。

多分こちらで言う平民と同じだと思うのだけれど、オリビアはそういう友達がいないそうなので、気になるところなのだろう。


「恋人になるってことが付き合うってこと。」


「婚約とは違うんですの?」


「婚約は人によるけど、付き合ってからこの人と結婚したいなって思ったら婚約、それから結婚。」


「…?最初から結婚するつもりで恋人になるのではないの?」


「うーん、まぁ別れると思いながら付き合う人はいないと思うけど…みんなが皆、一人目に付き合った人とそのまま結婚するってわけじゃないよ。何人かと付き合ってからこの人!って決める人と結婚することもあるよ。」


「ええ!?そんなに奔放なんですの!?」


奔放と言われるほどのことかも分からないけれど、きっと貴族の恋愛観とは違うことが多いのだろう。信じられないと言う顔をしている。


「奔放かどうかは分からないけど、比較的自由度は高いんじゃないかな…結婚って、してからの方が一緒にいる時間は長いわけだし、収入とかも大事にはなってくるけど、一緒にいて楽しいとかそういう部分も大事になってくるからね。」


私はオリビアとシリウスさんの間で気になるのはその点だ。如何せん、オリビアは素直ではない。強がってしまうような態度ではシリウスさんはオリビアの真意に気付くことはできないだろう。それではお互いに大変な思いをするだけだろう。


「こっちの世界って離婚って一般的?」


「いや、余程の罪人でない限りは認められないね。」


「じゃぁ結婚して嫌なことあっても一生一緒ってことでしょ?それって相手をよく知らないと辛くない?」


「うーん、僕はそれが一般的だと思ってたからそんな風に考えたことなかったなぁ…」


よくよく話を聞いてみると、貴族でも平民でも基本的には親が結婚相手を見つけてくるのだそうだ。お見合いみたいなもんだろう。そこで、双方の合意があれば婚約者となり、適齢期になれば結婚することとなるらしい。

恋愛結婚もあることにはあるが、家を継ぐ長男や長女にはそれが許されないことの方が多いらしい。

大変そうだなと思うけれど、明治時代くらいまでは日本もきっと同じようなものだったのだろう。未だにそういう考えに縛られている人も多くいる。


オリビアは私たちの話を聞いてどんどん表情を曇らせていった。もしかしたらオリビアにも何が事情があるのかもしれない。


「もう少し、あなたの世界のことを知りたいわ。」


オリビアはグッと手を握りしめて、私を真っ直ぐに見つめてきたのだった。

読んでくださりありがとうございます!

評価、ブックマーク、感想、レビューどうもありがとうございます!!!

毎回とても喜んでおります。

誤字報告もありがとうございます。皆様のおかげで作られている物語です。ありがとうございます。

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