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ライドンさんの抱っこが心地よかったのか、望はあっという間に眠ってしまった。

私たちは昼食を終え、開発部に向かった。

オムツとハーバリウムは開発部に見てもらいたいので、少し荷物になるが持っていくことにした。

私が出した物達は、魔術が関係しているのは出現させる時だけだろうと最初は思っていた。しかし、高吸水性ポリマーがないので、材料を魔術を使って元の姿から作り替えて使っているという部分で魔術が関係していると言えるだろう。

どんな反応をされるか分からないが、見てもらうことで分かることは絶対にあるはずだ。


開発部はさまざまな図面と道具が溢れかえっており、随分とごちゃごちゃしていた。

散らかっているので、下手に物に触ると壊してしまいそうだ。怖くなったので慎重に部屋の中に入った。


「お待ちしておりました!」


元気いっぱいそう言ったのはオレンジ色の髪が特徴的で、頭の高い位置で一つ縛りに結んでいる女性だ。

小さな顔に大きなメガネが乗っかっている。

この人はスカーレットさんというそうだ。スカーレットさんは開発部のリーダーらしい。他にも何人か隊員がいるが、スカーレットさんがメインになって話を進めていくようだ。


「初めまして、光です。それから娘の愛と望です。」


「よろしくお願いします!!あの早速なんすけど!ライドンさんが使ってる赤ちゃんが入ってる鞄はなんすか!?」


か、鞄!!

そう見えるのか。

鞄ではないことを説明して、望が寝ているので外すことはできなかったが、可能な限り見せてみた。スカーレットさんは体制を変えながら様々な角度で抱っこ紐を見ている。

この人もちょっと変わった人なのかもしれない。


「すみません、実は他にも見て欲しいものがあります。」


抱っこ紐にこれだけ興味を持っていてくれているのだから、きっと他のものも見てくれるだろう。

私はオムツとハーバリウム、それから愛は自分が乗ってる自転車を見せた。


「私、こういう物を作って販売したいんです。」


あってもなくてもいい物だけど、あれば少し生活が楽になったり、心が癒されたりする物だ。もしかしたら需要はないかもしれないけれど。

スカーレットさんは一つ一つ手に取って見てくれている。それに合わせてどういう物なのか説明していく。


「なるほど…すみません、それにしてもこれはどうやって作ったんすか?」


スカーレットさんは一通り見てから疑問に思ったようだ。そういえば創造のスキルを持っているというだけで、そのスキルがどうやって発動されるのか説明してなかった。

私はシリウスさんの方を向いて様子を伺うと、どうぞという動きをしたので、ノートに絵を描いて生理用ナプキンを出現させた。

ライドンさんとシリウスさんは気まずそうにして、サラさんは顔を赤くした。ごめんね、私はこっちも必要なんでね。

スカーレットさんは出現したナプキンを見て目を丸くした。


「こ、これがヒカリ様のスキル…すごい…」


出現したナプキンを手に取って、外装を一通り眺めている。一度返してもらって、テープを外して中身を開いて見てもらうように渡した。


「これは一体なんすか?」


「生理用ナプキンです。」


スカーレットさんも一瞬固まり、シリウスさんとライドンさんの顔を見ている。二人は居た堪れない様子で視線を逸らしていた。そんな二人に耐えきれなかったのかスカーレットさんは爆笑し始めた。

何事かと思ったが、二人の珍しい姿を見られたと喜んでいた。

スカーレットさんに水があるかを尋ねて、コップ一杯分くらいの水をもらった。その水をナプキンに垂らしてみる。するとナプキンはちゃんと水を吸収した。


「これを下着につけて使います。オムツも同じです。こちらでは布が主流のようですが、これは使い捨てです。これを使えば洗濯をしたり、乾かなくて焦ったりすることがありません。旅行中とか出張とかでたまに使うのにどうかなと思っています。」


「なるほど…面白いっすね。」


スカーレットさんは随分と興味を持ってくれたようで、私は無事に協力者を得たのだった。


「スカーレット、これも見てくれませんか〜?」


シリウスさんはどこから取り出したのか分からないが、ブロッコリーを手にしていた。

そのブロッコリーを空中で浮かせて、魔術によりカリカリブロッコリーを作った。以前やったフリーズドライだ。

カリカリブロッコリーをビーカーのような容器に入れて、先程のコップに入っていた水の残りを注ぐ。

するとブロッコリーはゆっくりと元の形に戻っていった。


「これもヒカリ様の故郷の技術だそうで〜こっちを携帯食として活用できないかな〜って。」


「これはすごいっす!!」


シリウスさんはやはりフリーズドライの方がお気に入りのようだ。それに、フリーズドライはオムツやナプキンと違って、スライムを加工しなくても、対象のものに直接魔術をかけるだけで作れるのですぐに商品化できるだろう。


「私たちの世界ではこうやって野菜やスープなどをフリーズドライにして少しだけお腹が空いた時とか、スープを作ってる余裕がない時とかに使っていました。」


スカーレットさんは頷きながら聞いている。


「これは試作品を作って、第二部隊の演習で実際に使ってみるのもいいかもっすね…」


平和な状況だと言っても、いつ戦争が起こるか分からないので第二部隊や、騎士団は訓練を続けているらしい。時には食料が手に入りづらいとか、悪天候が続くような過酷な状況下での演習も行うそうだ。確かにそのような時にフリーズドライの食料があれば栄養のある美味しい食事が簡単に準備することができる。


「戦場では美味しいものなんて滅多に食べられませんからね〜これがあるだけでもモチベーションが違いますよね〜。」


「戦場…」


私の知識がどのような形でも戦場で使われてしまう。それは仕方ないことなのかもしれないけど、胸が痛んだ。

最終的に一般的に流通してくれることを希望している旨をスカーレットさんには伝えた。

製法を確立して、大量生産できるようになるまでに時間がかかってしまうかもしれないが、必ずそうすると約束をしてくれた。


「どれくらい時間かかりそうですかね〜?」


シリウスさんはスカーレットさんに大体の目安を聞いている。


「そうっすね…隊長はすんなりやってしまいましたけど、実際結構高度ですよね。」


凍らせることは割と簡単にできるそうだが、減圧することが結構難しいらしい。

.

「それなら環境部にも声をかけてみますよ〜ちょうどこれから行くところですし〜。」


「了解っす!」


私たちはまた改めてフリーズドライ食品について環境部とも合同で話し合うことを約束した。私は持っていたハーバリウムと、改めてその場で魔石を使って使用するドライヤーをスキルで出現させ、預かってもらい、環境部へ向かった。




読んでくださりありがとうございます!

評価、ブックマーク、感想、誤字報告もありがとうございます!!


今回出てきたフリーズドライについては23話のレポート書いてみた2でふれております!

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