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やたらと広いところで、王様と王后様は待っていらした。
全体的に白くて広い部屋の奥には大きな階段があり、そこにはレッドカーペットが敷いてある。そのカーペットが続く階段の上に王様と王后様は椅子に座っていた。近くには騎士っぽい人が何人かいる。
王様と聞いて真っ先に思い浮かんだイメージはちょっとぽっちゃりしてて、髭がもさーっとなってる王様だったのだが、この人は全く違った。
体は大きくはあるが、ぽっちゃりなんてとんでもない。服を着てても、その体は筋肉でできているのだろうと思わせる力強さが滲み出ている。顔は眉がキリッとしていて、眼光も鋭く、まるで肉食獣だ。銀色の髪や、綺麗に整えられた髭が、ホワイトライオンを連想させた。
もー!?やばいじゃん!?めっちゃ怖いんだけど!?話違くない!?大丈夫そうじゃなくない!?
顔には出さないようにしているが脳内はパニック状態だった。
人の上に立つものの威厳に気圧されている。
一方王后様は、金色に輝く髪を綺麗に結い上げており、その頭には眩しいくらいに宝石がついたティアラをつけている。笑みを浮かべる表情ながら、目はしっかりとこちらを捉えて品定めをしているかのようだった。
ドレスは相場が分からない私でさえも高級品だと分かる物だ。
こっちの人が厄介っぽいという前情報もあるが、どっちもやばそうなんですけど私は今日無事に帰れるのでしょうか。
「陛下。本日は我々に貴重な時間を割いていただき誠に有難うございます。魔術師団団長ミルドレッド、魔術師団第一部隊隊長シリウスと、シリウスが召喚した聖母御一行を連れて参りました。」
ミルドレッドさんとシリウスさんが跪いて挨拶をしているのに倣い、同様に頭を下げる。
愛にはこっそり、お姫様の礼をするよに促すが、緊張していたのか少しぎこちなくなっていた。
望はいつもとは違う雰囲気を察したのか、私にしがみついて離れない。
「堅苦しい挨拶は良い。早速だがこちらからの質問にいくつか答えてもらうことになるがいいか?」
「はい。仰せのままに。」
私たちは頭を上げて、王様と向き合う。王様は相変わらず考えの読めない表情でこちらを見ながら、淡々と確認をしていく。
「まずはシリウス。そなたに確認する。
今回聖女召喚を行なった理由はなんだ。」
「はい。今まで召喚術についての文献を読み、さまざまな召喚術を試してきましたが、そのほとんどに成功しておりました。そんな中、聖女召喚についての文献を新たに発見し、その真偽を確かめ、今後の魔術の発展に役立てることができるのか研究するために行いました。」
「…他意はなかったか。」
「ありません。」
きっと反乱を起こすとかそういう気持ちがなかったのかという確認だろう。
シリウスさんは即答すると、王様もそれには納得したようだ。
まぁ今まで色んなものを召喚しているし、あくまでも形式的な確認なのだろう。
その後はどの文献を使ったのかとか、どういう術式だったかとか、魔術に関する報告をしていた。
「次は、聖母殿。ヒカリと申したか。そちらに質問するが良いだろうか?」
「はいっ!」
ついにきてしまった。
ドキドキと心臓の音がうるさい。手が震えてしまっている。
「あの〜スキルなどの補足説明は私がしてもいいですか?」
シリウスさんが手を挙げて王様に伝えてくれた。ありがたいが、そんなこと発言していいのだろうか!?
びっくりしてシリウスさんを見たか、王様は快諾してくれた。
王様は質問の内容にだいぶ配慮してくださったようで、予め受け取った報告書を元に確認を行ってくれたようだ。
殆どの質問が、はいかいいえで答えられるようなものだった。
まず聞かれたのは、私と子供達のこと、ここに来るまでのこと、ここに来た時のことなどの確認だった。
「では、次はスキルについてだが、長年の歴史の中でも、そなたの持つ『創造』というスキルには記録がない。一度見せてもらうことは可能だろうか。」
「…はい。」
えええええと。どうしようううう。
スキルの実演をするとは思ってなかった。念のためにノートとペンを持ってきてよかった…
問題は何を出すかだ。
こちらにあるものでもいいのだろうが、根本的にこちらにあるものを知らない。
こちらに無いもので、興味を惹きそうなものは何か。
やはり電化製品では無いだろうか。
王様たちは家事をしないだろうから、洗濯機とか出しても仕方ないだろう。
娯楽にもつながるようなもの…
必死に頭を回転させて、パッと思いついたものを描くことにした。
いつもよりも緊張しているせいか、絵の線がヘロヘロと歪んでいる。
「…できた。」
なんとか描き終えて、ボンっと出現させる。
出現させたものを手に取り確認したが、ちゃんと成功したらしい。
シリウスさんに魔石を借りて、出現したものにはめ込んだ。
「…それは?」
王様は驚いたようだが、私のスキルで出てきたものに興味を持ってくれたようだ。
「これはポラロイドカメラと言います。」
そう、私はカメラを出したのだ。
デジカメや一眼レフ、ビデオカメラなども考えたのだが、写真を印刷するためのプリンターや、ビデオを映すテレビも出さなければならない。
カメラ自体出すだけでは不十分だと思い、写真も一度に出せるポラロイドカメラを出現させたのだ。
「それはどう使うのだ?」
よかった。
こないだスキルの研究で写真を出した時、皆がすんなり受け入れたもんだからもうカメラはあるかと思ったけど。
念写みたいなもんだと思っていたようだ。あぶねー。
カメラの使い方といえば、ここは愛ちゃんとのんちゃんの登場だ。
王様たちに、失礼しますと断りを入れて、娘たちを呼んだ。
「はーい!愛ちゃん!のんちゃん!こっち見てー!お写真!お写真よ!!いくよ!!いい顔!!いい顔して!!!」
急に身振り手振りをして、大声を出し始めたのでみんなが警戒している。
すみません、子供の写真を撮る時の親はこんなもんなんです。
写真を撮られ慣れている愛ちゃんはばっちりポーズを取ってくれたが、のんちゃんはじっとしていられないのでこの際写ってなくてもいいやと思いながらシャッターを押す。
パシャっという音と共にフラッシュが光った。その光に騎士の人たちは反応して剣に手をかけた。怖いからやめてよおおおお!
ジィィィーーーという音が鳴り始めると、カメラから写真が出てきた。
そこにはとってもいい顔でポーズを決める愛ちゃんと、暴れてブレブレののんちゃんが写っていた。
どうすればいいかミルドレッドさんを見ると、カメラと写真を受け取ってくれた。写真を見たとき、プッと吹き出していたのは写真に写った望のせいだろう。
ミルドレッドさんはカメラと写真を持ったまま、王座へ向かった。
「陛下、ご覧ください。」
カメラと写真を差し出され、戸惑いながらも受けとってまじまじと見ている。ありとあらゆる角度でカメラと写真を眺めた後、王后様に手渡した。
王后様も王様同様に眺めた後、扇を出して口元を隠していた。満足したのか、カメラはミルドレッドさんに返された。写真は王后様が持ったままだ。なんでだ。
「これはそなたの世界にあったものか?」
王様から説明を求められたので分かる範囲で答える。
「そうです。えっと、材料は、全てあちらにあったものでは無いようですが、あちらと同じように使えるよう、自動的にこちらにあるものと変換されて出現するようです。」
この説明でいいのか分からずにシリウスさんの方を見ると、頷いてくれたので安心する。
「なるほど…これは興味深いな。」
「このスキルはまだまだ未知数です。今後この国の発展のためにも、彼女たちを魔術師団で預かる許可を陛下にいただきたく存じます。」
ミルドレッドさんがここぞとばかりにぶっ込んでくれた。
王様は髭を撫でながら、ふむ、と頷いてくださる。
「ねぇ、ちょっとよろしくて?」
鈴の鳴るような綺麗な声で、王后様が発言した。
読んでくださり、ありがとうございます!
評価、ブックマークもありがとうございます!見るたびにニヤニヤしてしまいます。
知識が無いため、イメージで書き進めております。もしかしたら分かりづらいところもあるかもしれませんが、ファンタジーとして楽しんでいただけたら幸いです!