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「服は決まったけど、アクセサリーはどうするつもりなの?」


「え、こんなに素敵な服があるのにアクセサリー必要あります?」


これだけで十分素敵だし、化粧して髪の毛いじればそれで出来上がりでしょ?

そんなことを言ったら、チャーリーさんは信じられない!と憤慨した。


「バカね!!服に負けるわよ!!」


…確かにそれはそうかもしれない。

でもそもそも肌が出てないし、アクセサリーつけるとしたら、髪と指輪とピアスあたり…?

うーーーーん。

必要かなぁ…

でも、チャーリーさんがそういうなら必要なのかもしれない。


「肩章とか飾緒は?」


「そうねぇ…それもいいわねぇ…」


けんしょうとか、しょくしょってなに。

首を傾げていたらエリックさんとチャーリーさんは簡単に説明してくれた。肩章は肩につける付属品で、飾緒は軍服のイラストとかでよく見る、片肩から前に吊るされてる紐のやつだそうだ。

肩のやつはモップみたいなやつだなと思い浮かべた。


「でもそれだと、後ろから見たらドレスなのに、肩にそれがついてたらちょっとねぇ…正面から見る分には素敵だけど…」


なるほど。

さすがデザイナー、視点が違うな。

おしゃれの話には私はついていけませんよ。

どうせいいことも言えないので黙って2人が話し合ってるのを眺めていた。


「うーん…あ!青い薔薇は使えないかなぁ?」


「エリックさん!!!」


この野郎ここでぶっ込んできやなかったな。

ニヤニヤと笑うエリックさんを睨みつけていると、チャーリーさんは何かを察したようにワクワクしだした。

見れば分かる、めんどくさいやつやん。


「なになに〜!?ちょっとあんたここに座んなさいよ!!」


またもやガッシリと肩を掴まれ、テーブルに連れて行かれ無理矢理座らされる。

エリックさんを恨めしそうに睨むと、顔を逸らされたが、その肩はプルプルと震えており、笑いを堪えてるのが分かる。

マジでエリックさんに聞いちゃったのは迂闊だった。

チャーリーさんはものすごく期待した顔で見てくるが、私だけのことでは無いので意地でも話さない。


「で、青い薔薇がどーしたのよ?」


向かい側に座ったチャーリーさんは身を乗り出して聞いてくるが、私はフンっと顔を逸らした。目を見たら心読まれる気がする。


「どっかの魔術バカから貰ったんだよねー?」


「違う!!黙れ!!」


私がいくら口をつぐんでも腹黒マジシャンホストはベラベラと話し出す。口を塞ごうと立ち上がったが、チャーリーさんに後ろから体と口を押さえ込まれて全然びくともしない。


「あら、あの魔術バカが!?そんなことできるの!?」


「そうなんだよ!しかも青い薔薇って、ねぇ!?」


「何!?ここにきて思春期にでも入ったわけ!?」


「ははっ!!思春期!!でもそうなんじゃない?今までじゃ考えられないよね!!」


私を挟んで次々と繰り広げられる話にもうなす術なしと項垂れた。

なんなのチャーリーさんの力、強すぎなんだけど。

一通り魔術バカとやらの悪口で盛り上がって満足したのか、チャーリーさんは手を外してくれて、自席に戻った。


「んで、どーすんのよ。」


「…何の話をしているのかわかりませーん。」


しらばっくれたいが、私の返事など聞いていないチャーリーさんはそのまま話し続ける。


「あのバカが人に興味を持って、しかもプレゼントなんてしたのがどれだけ大変なことか分かってないわね。」


随分とひどい言われ様だな、魔術バカとやら。

てか、アンネさんとダリアさんにも渡したし、別に変なことじゃ無いじゃん。

言ってやりたいけど、これ言ったらシリウスさんだって言ってる様なもんだから言えない。くそ。

私が黙っているのを良いことに2人の話は延々と続く。


「良いと思うなー魔術バカだけど。」


「そうよねぇ、魔術バカだけど。」


「はー…なんだかわかりませんけど、私今それどころじゃ無いんですけど…」


明後日には私の今後の人生を大きく左右するイベントが待っていて、それに向かって今準備しているはずなんだが?

それをなんだ?勝手に盛り上がって。


「なによー!いいじゃない!ロマンスよ、ロマンス!!普通にしてたら絶対出会わなかった2人が出会ってんのよ!運命じゃない!?」


「そうだよ!おもし…素敵じゃ無いか!!」


エリックさん、おもしろいって言おうとしたでしょ。絶対そうでしょ。もう口癖じゃん。

あと皆さん、楽しんでいますが、大事なことを忘れていますわよ。


「…私、運命の人とはもう出逢ってるんで。お腹いっぱいです。」


例え、誰がなんと言おうと、私の運命の人はあの人だけだから。

やっぱり忘れていたのか、2人がフリーズする。全く、適当なこと言って騒いでるからこういうことになるんだよ。


「それとは関係ないんですけど…なんか、せっかくチャーリーさんが白と金でうまくまとめてくれたのに他の色入れんのもったいなくないですか…?」


これは話を変えたいがための嘘ではない。せっかく金色の刺繍と白い布地のコントラストも美しいのに、どうせだったらそれを活かしたものにしたいな。


「そうねぇ…だったら翼をモチーフにしたアクセサリーはどうかしら?」


チャーリーさんは先ほどまでの会話に触れずに、次の話題に移ってくれた。

確かに翼のモチーフは可愛いかもしれない。


「ピアス、白と金の2パターン出してみますか?」


ノートにチャーリーさんと相談しながら白い翼モチーフのものと、金の翼モチーフのものを描いて出現させる。

出現したものを耳に当てて見ると、白いものは少し安っぽく感じた。

結局、翼モチーフのピアスは金色にすることにした。


「髪はどうするの?」


「ぐ…実は…私、男装歌劇団の方々に常々憧れておりまして…」


「男装歌劇団?」


そうなのだ。実は大ファンなのだ。

女性のみで構成された劇団で、女性役はもちろん、男性役も女性だけでこなすというあの素晴らしい劇団…!!

女の子の理想を詰め合わせた男役の方々はどこを切り取ってもかっこよく、品があり、美しい…そんな歌劇団に憧れていた私は、今こそ、あの歌劇団の方の様な髪型にチャレンジできるのではないかと…!!


「へー!あなたの世界には面白いものがあるのね。」


チャーリーさんは興味津々である。

こちらにはそういうものがないそうだ。やはりこちらの世界では性別に即したものが好まれるそうだ。女は女らしく、男は男らしくあれ、という様な感じ。

チャーリーさんや私の様な人間は異端だろう。私たちの世界でもまだまだ性差別は根強く残っていたが、こちらには比べれば緩いものだったのかもしれない。


「だから私はこの世界で男の子に一番人気の髪型にしてほしいです。」


「じゃぁエリックの方がよく知ってるわね。」


「そうだね、ちょっと色々試してみようか。一番人気がヒカリちゃんに似合うとは限らないし、何パターンかやってみてしっくりくるやつにしよう。」


エリックさんが指を振ると、私の髪が何かにつままれている様に引っ張られた。

エリックさんは魔術で私の髪をセットしてくれるようだ。整髪料を使わないのか疑問になり聞いてみたが、色んな髪型を試すので、付けずに魔術です固定してみるそうだ。普段生活する時には使うものらしい。

確かに整髪料付けたらベタベタになって、サラサラした髪型の時は困るもんな。


「まずは王道、中心よりちょっと横にずれて分ける…」


七三分けくらいの位置で前髪を分けてもらう。

まぁこれはただ前髪を分けただけなので代わり映えはせず、ドレスに合わせるには弱い。


「じゃぁ、イーサン風!」


今度はオールバッグにしてもらったが、髪が柔らかいせいか後毛が多く、少し疲れた印象になってしまった。ボツ。


「うーん、後は短く切っちゃうことになるけど…」


これ以上短くすると少年の様になってしまうので却下…となると、できる髪型がない。このままにするか、やはり女性らしくヘッドドレスでも付けるか…


「あんたが好きな歌劇団の人たちはどんななのよ?」


私は歌劇団の方々を思い浮かべて、どうやってもニヤける顔を抑えながらエリックさんに説明する。


「えっと、横分けで、前髪はふんわりとあげておでこが見える感じ…ですかね…」


「ああ!なるほど…やってみよ!」


オールバックのように後ろに流すだけだけでなく、横にも流す様な感じで前髪を上げてもらった。

すると、割と良い感じにまとまった。


「これならまだ見れるわね。」


チャーリーさんからも、辛口ながらひとまず合格をもらえたのでこの髪型にすることにする。

こうして、謁見に向かう服装や髪型などが無事に決まったのだった。


読んでくださり、ありがとうございます。評価、ブックマークもありがとうございます。


ここに出てくる男装歌劇団は、あの歌劇団をモデルにしてます。かっこいいですよね…メロメロです。

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