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お出かけしてみた



目が覚めて、朝食を終えた後で子供たちと一緒に遊んでいるところだった。

まさかのイーサンさんがやって来た。


「朝早くからすまない。今日の予定を聞いてもいいか?」


「今日は特に予定は無いんですが、何かありましたか?」


イーサンさんがこの客室を訪れたのは初めてだったので、なんとなく緊張してしまう。

どんなことを言われるのかドキドキしていると、イーサンさんはとても素敵な提案をしてくれた。


「昨日、君たちのことを妻に話したんだが、すぐに連れてくるように言われてな…もし予定がなければ午後にでも来ないか?」


「いいんですか!?ありがとうございます!!もちろん行きます!!」


こんなに早く遊びに行く機会を設けてくれるとは思って無かったので、食い気味に返答した。

愛ちゃんもきっと喜ぶに違いない。


ただ、一つ気になることがあった。

私たちは魔術師団の外へ出てもいいのかということだ。

そもそも道がわからないというのもあるが、身分がハッキリと決まっていないので、不審者みたいなもんなのだ。


「それは気にしなくてもいい。俺の家だし、午後は休みをとって俺も一緒に帰る。護衛と監視を兼ねて付き添うから問題ない。帰りはシリウスを呼べばいい。」


なるほど。

それなら大丈夫そうだ。


「服装とかどうすればいいですか?」


「…好きにしたらいいだろう。」


「お子さん何人ですか?」


「…4人だが。」


次々と質問する私に、イーサンさんはめんどくさそうに答える。

…本当に気になるな、この人の家族。

昼食後に迎えにきてくれるそうなので、それまでにお邪魔するための用意をしなくては。


「愛ちゃん、今日、イーサンさんのお家に行って遊ぶって!」


「いまから!?」


愛は目を輝かせている。

やはり部屋に篭ってばかりだとつまらないのだろう。嬉しそうな愛の顔を見て、心からイーサンさんに感謝する。


「イーサンさんのお家にお友達いるみたい!何で遊びたいかな?」


「おそとがいい!」


普段おっとりしているので、基本インドアな遊びを好んでやっている愛が、外で遊びたいというのはなかなか珍しい。さて、どうしたものか。

アンネさんに頼んで窓を開けてもらい、外の気温を確認する。

暖かくて過ごしやすそうな天気だ。


シャボン玉なんてどうだろうか?

試しに1つ、シャボン玉を描いてみる。

ピンクの容器に、黄色い蓋のシャボン玉液の入れ物と、緑のシャボン玉を吹く為の筒をイメージしながら描いてみた。

するとイメージ通りのものが出現したので、中身を確認する。

愛を窓際まで連れて行き、椅子を運んでその上に立たせた。


「愛ちゃん、お外に向かって吹いてごらん?」


愛は言われた通りに外に向かってシャボン玉を吹いた。

ふーっと力一杯吹いたら、細かいシャボン玉がたくさん空へ飛んでいった。

これならお土産にできそうだ。

愛も楽しそうにたくさん吹いている。

シャボン玉セットを少し多めに描いて、詰め替え用のシャボン液や、大きな輪っかに取っ手がついてる物やそれに合う器などもいつくか描いてみる。

結構な量できたので、お子さんたちへのお土産はこんなもんでいいだろう。


あとは奥様に何か用意したいところだが、お茶菓子を今から手に入れられるとは思わない。


今手っ取り早く用意できるものを考えたが、私は何も持っていない。

奥様がどんなものを好きなのか分からないので絵を描こうにも描けない。


「ママ、おはなは?」


花か!

花ならばサラさんに頼めばなんとかなるかもしれない。

サラさんに会いに行くにはどうしたらいいか考えたが、居場所が分からない。

とりあえず、望はアンネさんたちに任せて、愛と一緒にミルドレッドさんの所へ向かうことにした。





団長室に着いたはいいが、ドアの開け方が分からない。魔力ってどう込めるんだ。

考えても分からないので、ノックすることにした。分厚い扉だから聞こえるか不安だったので、強めのノックだ。


すると扉がゆっくりと開いた。


「なんだ、お前たちかい。」


ノックをする人物は少ないようで、不審に思いながらも開けてくれたそうだ。申し訳ない。

事情を説明すると、ミルドレッドさんは折り紙のようにして、紙で蝶を折ってくれた。


「そいつが連れていってくれるから、着いて行きな。」


「わー!ばあば、ありがと!」


いつの間にか、ばあばなんて呼んでたんかい。無邪気な愛に驚いて、ミルドレッドさんの様子を伺うが、気にしていないようでホッとする。

ひらひらと舞う蝶の後を追い、団長室から出ようとした。


「そうだ、謁見の日が決まったよ。3日後なら予定が空いているらしい。」


「分かりました。」


ドレスはどれほどまでできているのだろうか。明日分かるので、その時に、謁見に間に合うように調整してもらおう。

ミルドレッドさんにお辞儀をして、蝶を追いかけた。





ひらひらと舞う紙の蝶はまるで本物のようで、連れられて歩いていると、なんだか蝶と友達になったかのような気持ちになる。


うきうきしながら歩いていると、ある扉の前で蝶がくるくると同じ場所を回り始めた。

その扉には『第一部隊 隊長室』と書かれていた。

隊長ってことはシリウスさんかな?


「愛ちゃん、トントンしてみて。」


「とんとんとん!」


愛ちゃんのノックの音よりも声の方が大きいような気がする。

どちらが聞こえたのか分からないが、ガチャリと扉が開いた。


「ヒカリ様、アイ様、どうしたんですか〜?」


魔術で扉を開けたようで、シリウスさんは机に座りながら声をかけてくれた。

部屋の中にはシリウスさんしかいないようだ。


シリウスさんにサラさんに会いたいことを伝えると、シリウスさんは案内してくれるようだ。

今度はシリウスさんの後について歩く。くるくる回っていた蝶は、まだ愛の頭の上を飛んでいる。

サラさんは少し離れた部屋にいるそうだ。

第一部隊の職場に来るのは初めてだったので愛と2人でキョロキョロと周りを見ながら歩いた。

やはり見たことがないものがたくさんあるので、新鮮で楽しい。

シリウスさんはそんな私たちを見てクスクス笑っていたのだった。





「わー…」


案内された場所はミルドレッドさんの部屋よりも遥かに大きな図書室だった。天井がものすごく高いが、その上の方まで本がびっちり詰まっている棚が何列もある。

すごい…


「た〜くさんあるでしょ〜ここの本を管理してるのがサラなんですよ〜」


「え!?この量を!?」


「ええ、彼女の知識量は僕も驚かされるほどですよ〜」


なんと…超すごい子だったのね…

魔術はずば抜けてできるというわけではないそうだが、サラさんの知識は魔術の研究において必要なものなのだそうだ。この膨大な量の本の管理は、サラさん1人でしているというわけでは無いようだが、新人で図書室に配属になるのは前代未聞らしい。


図書室の扉にハンドベルのような鐘がかかっていた。シリウスさんはそれを手に取りリンリンと鳴らす。

すると、何人かが本棚の隙間から顔を出した。


「隊長、どうされましたか?」


柔らかそうな栗色の毛をした長身の男性が小走りでやってきた。人懐っこい笑顔で、可愛らしい男性だ。でかいけど。ゴールデンレトリバーみたいな感じ。


「やぁ、サラはいるかな〜?」


ゴールデン君は私たちをチラリと見て、会釈をしてから、本棚の中に消えていった。

すると今度はサラさんが走ってきた。ゴールデン君が呼んでくれたようだ。


「すみません!どうかなさいましたか?」


「サラちゃん!おはな!!」


「おはな?」


愛がサラさんに会えたのが嬉しくて抱きつきながら言ったが、サラさんはなんのことか分からないようで首を傾げている。

とりあえずサラさんが来てくれたので、イーサンさんのお家にお邪魔するのに花束を持っていきたいと伝えた。


「花束ですか…」


うーんと、少し考え込むような仕草をした。


「私が出せるのは花の部分だけなんです。だから、花束となると少し難しいですね。隊の花壇は研究用なので…」


「あーそうか!いや、無理言ってすみません。」


そういえばサラさんは花の部分だけ出していた。

うーん。お花いいアイディアだと思ったんだけどなー。

お花だけで何かできるか…


「あ!!!ハーバリウム!!!」


ハーバリウムならお花だけで十分だ。


「サラさん、シリウスさん、手伝ってもらっていいですか?」


読んでくださり、ありがとうございます!

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