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夕食を食べ終えたあと、シリウスさんと情報交換を行った。
私は使い物にならなかったレポートを口頭で説明しながら、今日起きたことを事細かく説明することとなった。
シリウスさんはメモをとりながらよく聞いてくれている。
時々質問されるのでそれに答えながらの報告となった。
シリウスさんに読んでもらうという目的は果たせなかったものの、レポートに大まかなことが書いてあったせいか、なかなかスムーズに話が進められた。
次はシリウスさんに聞く番だ。
「オムツの中身、調べてみたのですが、驚くべきことがわかりましたよ〜。」
すごく嬉しそうにするシリウスに嫌な予感がする。
「吸水部分の正体はスライムでした〜。」
ス、スライム?
RPGとかに出てくる、あのスライム!?
「ただ、スライムが使われていることは分かったのですが、どのように使用できるような形にしているのかがわからないんですよね〜。」
なるほど。
スライムは粘性の強い液体だ。
それをあそこに閉じ込めるのは難しいのだろう。でも、私が描いたオムツの中に使われているのだから、できないことではない筈だ。
うーん。
水分を多く含むものを乾かす…
「単純に火で炙って乾燥させればいいのでは?」
「そうするとスライムはプレート状になり、かなり硬化しますね〜」
なるほど。
プラ板みたいになっちゃうのか。
だとしたらそれをオムツに使うのは危険かな…
「それ粉砕したらどうなりますか?」
「なるほど、やってみます。」
それをやってもらうのとは別に方法はないかと頭の中で考える。
私たちが元いた世界でなんか似たようなものなかったっけ…
水につけると、性質が戻る…
「あ、フリーズドライ。」
「フリーズ…?」
フリーズドライは水分を含んでる食べ物を、急速に凍結させた後に、真空状態にして水分だけを蒸発させる方法だ。
「シリウスさんで、ある程度どんな魔法って使えるんですか?」
「まぁモノによりますけどそれなりにはできますかね〜」
ならばと、愛が食べ残したブロッコリーで試してみる。
フリーズドライの方法を簡単に教えて、シリウスさんに実践してもらった。
急速に冷凍するので触れるのは怖かったので、まず空中に浮かせてもらう。
そこで凍らせてもらい、そこから周りの空間を減圧してもらう。
すると、狙い通り、カサカサになったブロッコリーができた。
シリウスさんはカサカサになったブロッコリーを手に持ち、これがなんになんの?と首を傾げている。
そこで、コップにカサカサブロッコリーを入れて、そこに水を注ぐ。
すると、元通りとまではいかないが、普通のブロッコリーのようになったのだ。
「なるほど!!こんな方法が!!」
シリウスさんは目を輝かせていた。
「私たちの世界では、具沢山のスープをこういう形で作って、料理しなくてもスープが飲みたい時にすぐ飲める….って感じで日常的に利用してました。」
「なるほど…!!オムツよりもこっちの方が活用できそうですよ〜!?」
「確かに…!!」
紙オムツ製作の道はまだまだ遠そうだが、新たな商売が見出せたかもしれない。
ただ、オムツへの希望も捨てきれないので、フリーズドライの有用性と共にスライムについても引き続き調べてもらうことになった。
思わぬところに収穫があったところで今日はお開きにする。
遊んでいた最中の愛と望を呼んで、シリウスさんに挨拶させた。
「シリウスさんおやすみなさい。」
「おやすみなさい!」
「っちー!」
望はドヤ顔で、ハイタッチを要求している。シリウスさんは望とタッチをして、屈んで愛にも挨拶をしてくれた。
「では、おやすみなさい。また、明日。」
手を振って、シリウスさんを見送った後はみんなでお風呂に入る。
アンネさんとダリアさんが待っていてくれるので、だいぶ助かっている。
一人で二人を入れていたときは、お風呂から出る時が大騒ぎだったのだ。
愛の体を拭いてあげていると、望がびしょびしょのまま歩き出して、床が濡れるわ、滑って転ぶわで、てんてこ舞いだった。
それが今では随分とゆっくり休めている。とてもありがたい。
お風呂でたっぷりと遊び、体が温まっているうちに布団に潜り込む。
今日は愛は望のめんどうをよく見てくれていたようで、積み木で一緒に遊んだと教えてくれた。
「ママもねー、今日はお洋服を作るお手伝いをしたんだよー!今度愛ちゃんも一緒に行こうね!!」
「うん!あいちゃん、ママすきだからいっしょにいく!」
今日も天使な愛ちゃんにたっぷり癒されてからぎゅーっと抱きしめながら眠りについた。
「生まれてきてくれてありがとうね、あいちゃん!のんちゃん!」
明日もいい日になりますように。
読んでくださり、ありがとうございます!