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ひと段落したので、3人で少しお茶を飲んで休憩してから客室に戻ることにした。

チャーリーさんは暖かい紅茶とお茶菓子を出してくれたので、ありがたくいただく。

結局お昼も食べ損ねてしまったので、紅茶の暖かさと、お茶菓子の甘さが体の隅々まで沁みるようだ。


「それにしてもシリウスのやつ、やったわね。」


チャーリーさんは頬杖をついてお菓子を摘みながらため息をついた。


「何がですか?聖女召喚?それともオリビアさんのことでふか?」


モゴモゴと食べながら尋ねると、お茶を飲むように言われた。お行儀悪くてすみません。


「オリビアもまたなんかやったわけ?あの子大丈夫なのかしら。

シリウスは、聖女召喚のほうよ。」


なんでも召喚術というのは基本的に魔力が高くないとできないことらしい。今まで不思議な生き物を次々と召喚しては騒ぎを起こして、時には第二部隊を出動させる騒ぎになったこともあるとか。

しかし、問題を起こす反面、その魔力の高さも同様に評価されているのが現状だ。


「今回聖女召喚して、しかも記録になかった聖母も召喚しちゃったんでしょ?ヒカリの持ってるスキルも不思議だしね。ヒカリには本当に迷惑かけてるけど、またアイツの魔力の株は上がったわよね。」


なんと。

だから今まで叱られても、やっちゃいけない魔法に手を出していたのか。

1人で納得していると、エリックさんに違うと否定された。

ただの魔術ヲタクで、周りのことには興味ないからだという。

…確かに…


「でも、今回は流石に反省してたよ、シリウスも。」


足を組んで紅茶を飲んでいるエリックさんの姿は本当に絵になる。


「反省〜?アイツが?」


チャーリーさんは信じ難いというような目で、エリックさんのことを見ていた。

いやどんだけなの、シリウスさん。


「それがさー午前中、団長のとこでミーティングだったんだよ。イーサンと僕も呼ばれてさ。その時にヒカリちゃんたちのこと聞いたんだけど…

まぁいつものようにイーサンが怒っちゃってさ。」


そうだ。

それでイーサンさんが、殴りかかっちゃって大変だったのだ。

その時のことを思い出して顔が引き攣る。


「シリウス、イーサンに殴られてたもん。いつもなら魔術使って避けるか、防御するかするじゃん。

それができるのにしなかったってのは、殴られたかったとか、殴られる理由があるって思ったのか…

何にせよ、シリウスにも思うところがあったんだと思うよ。」


「へー!アイツも成長すんのねぇ。」


チャーリーさんはシリウスさんのことなんだと思ってるんだろうか…

でも、エリックさんの話を聞いて、私も少し驚いた。

そんなつもりで殴られていたなんて。

何故か罪悪感が湧いてきた。


「ヒカリちゃんは気にすることないよ、シリウスが自分で選んだんだから。それにアイちゃんが治してあげたんだしさ。」


まぁ、確かにそれもそうだな。

私めちゃくちゃ困ってるしな、現に。


「でも、私もシリウスさんにお水かけちゃったんですよね…」


私もやられっぱなしって訳ではないから、なにもわざわざ他の人に殴られなくてもいいのに…

独り言のように呟いたが、2人はすごいイキイキした表情で食いついてきた。

圧倒されながらも、水をかけてしまった状況のことを思い出しながら話してみた。


「あー…あの子たち、ちょっと残念だからねぇ…」


「ルウなんて特にね…美人なのにもったいないわぁ…」


納得ちゃうんですね、そこ。

本当にサラさんの不憫さったらない。


「まあ、シリウスにはいい薬だったんじゃないかしらね。色々と。」


普段のシリウスさんがどんだけ周りに迷惑をかけているのか、詳細は分からないが、そんな風に言われてしまうほどの問題児だということは分かった。


「なんでそんななのにオリビアさんはシリウスさんにあんなに御執心なんでしょうね…」


全く分からない。

人の好みは人それぞれだが、今のところシリウスさんの良さは私には今ひとつ分からない。


「顔、かしらね。」


紅茶を淹れなおしながらチャーリーさんは呟いた。

顔かぁ〜…

顔なら分からなくもない。色素が薄くて綺麗な顔をしている。


「あとは隊長ってゆー肩書きもあるしね。」


「でも、だったらエリックさんでも良くないですか?」


「ヒカリ、アンタ失礼なこと言ってるわよ。」


おっと。すみません。

だけど、エリックさんも顔はアイドル系だし、肩書きだって隊長だ。

周りにそれほど迷惑をかけているという印象はない。


「確かに人気で言ったらエリックの方が高いわよ。でも、エリックは八方美人だから。」


…なるほど。

マジシャンホストだからか。

軟派な人よりも、硬派な人が好きならエリックさんにはいかないか。


「まぁ何にせよ、オリビアには荷が重いわよ。」


何やら色々と事情がありそうだが、もう巻き込まれたくないので突っ込まないようにしよ。


随分と長居をしてしまったような気がして、エリックさんに時間を聞くともう夕方になってしまいそうな時間だった。

チャーリーさんと次の予定を確認して、客室に戻ることにした。


「今日はありがとうございました!」


「いいのよ、私も久しぶりにワクワクしたわ。仕上がり、楽しみにしててね!」


チャーリーさんはお茶目にウインクをしてくれた。

私は衣装部の皆様に挨拶をして、エリックさんと一緒に客室に戻ることにした。


今日は自分のスキルについての収穫もあった。

第一部隊は魔術の研究してるって言ってたし、シリウスさんかサラさんに伝えておけばいいだろう。


元いた世界ではこんなに毎日何かあることがなかったから、疲れる反面、ワクワクしている自分もいる。

早く娘たちに会いたくて、すこし早足で客室へと向かったのだった。

読んでくださり、ありがとうございます!

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