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「まほーつかい?」


突然発言した愛の口を反射的に押さえた。

口を押さえられた愛は必死に私の手を剥がそうともがいているが、目はもうキランキランに輝いている。

愛はおませで夢見がちな女の子なので、プリンセスや魔法など大好物で、その目には希望に満ちていた。


「おや、魔法使いをご存知なんですね〜!」


うっかり怪しいやつから目を離してしまった隙に、いつのまにか間近にやってきてこちらの様子を覗き込んでいる。愛の口を押さえて、ジタバタ暴れ続けている望を抱え直して不審者を睨む。

不審者はフードを深く被っているので顔はよく見えない。かろうじて見えている口元は機嫌良さそうに弧を描いている。見た目は怪しいが、ウキウキしているような感じがする。


「小さなお嬢様と…お兄様でしょうか〜?」


…?

あれ、これ私すごい誤解されてるんじゃね?

私は望が生まれてから、願掛けのように伸ばしていた髪をばっさり切っていた。望が生まれる前は「ふわふわロングが似合う可愛らしいお母さん」を目指していたのだ。愛が女の子らしい女の子なので、ママも頑張って女の子らしくなろうとしていたのだ。

しかし、今更性根はそう簡単には変わらない。元々非常に大雑把な性格でめんどくさがりなので、維持ができなかったのだ。ツヤツヤふわふわのロングヘアーは、いつの間にやらぱさぱさごわごわになってしまった。美容院にもマメに行ける訳ではない。更に望が生まれ、よく掴まれ、引っ張られ、産後の影響もあり、毛が大量に抜けるという悲しき事態に。

なのでばっさり切ってしまって、小柄な身長もあり、遠目で見ると少年に見えることもあるようだ。

この歳でデパートのトイレで確認されてしまったこともある。

きっとこの不審者にもそう見えたのであろう。どうしようか、お兄ちゃんということにしておこうか。それでも別にいいかな…と悩んでいると、フッと不審者が笑った。


「失礼いたしました〜。とても警戒されている様子が可愛らしく〜、つい。」


くすくすと笑う様子に苛立ってしまう。私たちは笑っている場合ではない。


「ここはどこですか。」


不審者を睨みつけながら問うと少し驚いたようにくちが開いた。


「失礼、お姉様でしたか〜。」


「いや、それはどっちも違うけど。」


思わず突っ込んでしまった。

不審者に不審がられ始めたが、とりあえず現状を把握したかったので質問に答えるように促す。

周りを軽く見渡すが、まるでサバンナのような荒原だ。何もない。ただ広くて、何もない場所で、私たちの周りだけ隕石が落出てきたようなクレーターのようにボロボロになっている。

おかしいのが気温だ。たしか学校で習ったサバンナの気温は年中高温のはずだが、そこまで暑くはない。空は雲ひとつない青空だから、サバンナならばもっと暑いはずだ。そして、生き物もいない。


「こちらはコレット国の有する演習場の一つですね〜。魔法を使ったり、剣術の演習を行ったりする試験場のようなものですね〜。」


聞いたことない国だな。それはそうだろうな。

魔法なんて単語が出てきた時点で、私たちが暮らしていた世界ではない。

まさか本当にこんなことに巻き込まれてしまうなんて思いもしなかった。


「異世界召喚とか?」


「おや〜、なんと話の早いこと。」


揶揄うような不審者の声にがっくりと肩を落とす。異世界召喚ってあれでしょ?世界救わされるやつでしょ?

いや無理じゃん。普通の人間で魔法なんて使えないんだから。もちろん武術だってやったことない。


「帰れたりしないですか?」


「うーん、今のところはなんとも。」


ですよねー。

こんなラノベの王道の展開ある?

どうしたらいいのか分からず途方に暮れてしまう。すると力が抜けてしまった隙を突いて望が腕から抜け出して、よちよち歩きで不審者の元へ歩き出した。慌てて手を伸ばすも、僅かな差で不審者に望が抱えられてしまった。

頭が真っ白になってしまう。どう対抗すれば取り戻せるのか。


「とりあえず、こんなところで話すのもなんですし、お茶でもしませんか〜?」


にこやかな雰囲気でそう問われても、脅しにしか聞こえない。しかし、ここでは私たちは何も分からないし、誰にも頼ることができない。明らかに怪しいこの人物達に縋るしかないのだ。抵抗なんかしても、私たちが生きていけるとは思えなかった。情けないが、不審者の提案に乗るしかなかった。

これからのことは話を聞いてから考えよう。もしやばそうなら何としても子供達だけは助けられる道を探そうと決意し、不審者についていくことにした。



読んでくださり、ありがとうございます!

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