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デザイナーさんに会ってみた



「ヒカリちゃーん、迎えにきたよー!」


エリックさんは先程同様キラキラアイドルスマイルで部屋に入ってくる。

愛が描いた絵を見つけて、大袈裟に褒めてくれる。愛は恥ずかしそうにしている。


「えりっくん、あのね、とりさん、しろちゃんってなまえにしたよ!」


ミルドレッドさんの部屋で作ってくれた鳥さんは今でも元気に羽ばたいている。その鳥さんにシロという名前をつけたようだ。


「わー!きっとシロもよろこんでるよ!」


エリックさんは愛とにこにこしながら話を続けていた。

その間に私はシリウスさんにあるお願いをした。


「シリウスさん、ちょっと気になることがあるんですけど、調べてもらっていいですか?」


「はい?なんですかね〜?」


実はドライヤーと、オムツを出した時に気になることがあったのだ。

ドライヤーは電気がなかったので、魔力を使って起動させた。

つまり、こちらの世界にないものは、こちらの世界のものを代用して使えるようになっている。


「こちらの世界って、ポリアクリル酸ナトリウムとかってありますか?」


「…?」


ポリアクリル酸ナトリウムとは、高吸水性高分子の一種で、オムツの吸水部分に使われている。

頭はいいはずのシリウスさんが首をかしげたということは…きっとこちらの世界には存在しないものなのだろう。


「この私が出したオムツを見てもらえますか?」


オムツを広げて、一緒に洗面台に行く。そこでコップに水を汲み、その水をオムツに少しずつ垂らした。

すると、オムツはいつも通りにその水を吸い込んだ。

その一連の流れを見てもらうと、シリウスさんはびっくりしたようだ。


「なるほど…これが漏れなない仕組みなんですね。」


「そうなんですよ。私たちの世界だと高吸水性ポリマーってのを使ってこれができてました。でも、そんなのこっちにはないんですよね?」


「そうですね、少なくとも僕は聞いたことがないです。」


「では、この吸水できる部分が、こちらの素材だと何でできているのか調べて欲しいんですが、可能ですか?」


もし、それが分かれば、私がこちらで生きていくための糸口になるかもしれない。

シリウスさんには、とりあえず5枚ほどオムツを渡して、お願いすることにした。足りなかったら声をかけてもらうことにした。


「何が使われているのかを調べるだけならばすぐにできると思いますよ。」


「すみません、お願いします。」


今後の希望をまずはシリウスさんに託す。どのような結果になるか分からないが、楽しみにしていよう。






アンネさんとダリアさんに、子供達の面倒を見てもらうように頼んで、私はエリックさんと一緒にチャーリーさんのところへ連れて行ってもらうことにした。

チャーリーさんは魔術師団お抱えのデザイナーさんだそうだ。


「所属は第三部隊になってるから僕が案内を任されたんだと思うよー!」


「あ、聞き忘れてたんですけど、第一部隊とかってどう分かれてるんですか?」


そういえば聞いていなかった。

シリウスさん率いる第一部隊、イーサンさん率いる第二部隊、エリックさん率いる第三部隊…

単純に能力で分けられているのだろうか?戦闘レベルとか?

でもイーサンさんと、シリウスさんが戦ったらイーサンさんの方が強そう…


「ああ、それは魔術師団での仕事別に分かれてるんだよ。

第一部隊は魔術の研究がメインなんだ。新しい魔術を開発したり、古い魔術を研究してみたり…ヒカリちゃんは、その古い魔術の研究でここに呼ばれたんだね。第一部隊は魔術の知識や魔力が強い人、コントロールが上手い人が集まってるね。」


「あぁ…なるほど…」


私は初めて会った時のことを思い出していた。シリウスさんだけじゃない、ルウさんもライドンさんも、目をキラキラさせていた…。

類は友を呼ぶんですね…。


「それで、イーサンの第二部隊は、魔術で戦う部隊。ヒカリちゃんの世界には騎士団とかってあった?こっちの世界では騎士団は剣とか、武器で戦うんだけど、イーサンたちは攻撃魔法を使って戦うんだよ。

だから第二部隊は気性が荒い人たちが多いかな…でも戦うだけじゃなくて、治癒魔法を専門にしている人もいるよ。

まぁ今はだいぶ平和だから、そこまで危険なことはないんだけどね。昔は戦場に行ったりもしてたみたいだよ。」


やはりイーサンさんは戦う人だった。

治癒魔法と聞いて、胸が痛む。もしかしたら、愛が大きくなったら第二部隊に配属になるかもしれない。

戦場には行ってほしくない。

このまま平和な世の中が続くことを祈ろう。


「最後に、僕の第三部隊。これは魔術師団のイメージアップのための部隊…かなー。この国には魔術を使えない人間もいて、その人たちから見たら魔術師団ってそもそも関係ないじゃない?だから、魔術ってこんなことができるだよーってことを教えて、みんなに理解してもらえるようにするってのが仕事!お祭りに出て魔術を披露することもあるし、学校とかで魔術師団のことを話したりすることもあるよ!」


なるほど、広報部ってことか。


「人数的には第二部隊が一番多くて、次が第一部隊、一番少ないのが第三部隊って感じかな。」


第二部隊は、いくつもの小隊があるそうだ。

一通り説明を受けて貧相な想像力でイメージできたのは、第一部隊は頭脳派、第二部隊は体育会系、第三部隊はスクールカースト上位系の部隊なんだろうなということだけだった。


「それで今から会うチャーリーはイベントで使う衣装とかを作ってくれてるよ!」


「そうなんですね!わーそういう衣装も見てみたい…」


一体どんな衣装を作る人なんだろうか。

…変わったデザイナーさんを紹介してほしいって言ったはいいが、少し不安にもなる。

こっちでいう変わったデザイナーさんってどんな感じなんだろ…

そういえばシリウスさんとイーサンさんは顔を青くしていたな…


色々話を聞いているうちに、『第三部隊 衣装部』と書かれたプレートがついた部屋にたどり着いた。

プレートは細かく彫刻が施されており、とても煌びやかだ。さすがデザイナーさんがいるお部屋…

期待に胸を膨らませて、エリックさんに続いて部屋に入ると、そこはどんよりとした空気が漂っていた。


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