お説教されてみた
会話が多くなってしまいました…
「ぉおぅえええぇぇぇぇ…」
はい、再び団長室へ舞い戻って参りました。
しかも大の苦手な転移魔法で。
あの後、怖い笑顔のシリウスさんは無言のまま私のことを荷物でも運ぶかのように担いで、転移魔法で団長室の前まで移動させた。ちなみに自転車はエリックさんに没収された。
小脇に抱えられていたので、最初の転移魔法よりも何倍も気持ち悪かった。
そのせいでまた見事に戻してしまった。
申し訳ない。
座ってもいられなかったので、椅子を並べて横にならせてもらった。
気持ち悪くてぼんやりしている私に、シリウスさんはニコニコしながら次々に文句を言ってくる。
「ヒカリ様、あなた今の段階でよくもまぁあんなに大きな騒ぎをおこすことができましたよね〜」
「ハイ…」
「今、僕の客人としてここにいるんですよね〜?ドレスのまま大暴走する女性なんて、こちらでは見たことないんですよね〜」
「あっちでも…いませんね…」
「そうなんですか〜?だったら尚更おかしいですね〜僕が見たのは何だったのかな〜?」
「スミマセン…」
気持ち悪いし、自分が悪いという自覚があるので言い訳もできないし、ただ小さく謝罪するしかできない。
ドレスも土まみれになっちゃったし。
「あんなのほっとけばよかったんですよ〜噂だか何だか分からないですけど、隊は違うけど僕はあくまで上司ですよ?それに面識もないのにいきなり失礼すぎでしょ〜それに対応してあげることなんてないんですよ〜」
シリウスさんは全く理解できないというような様子で、批判が止まらない。
ミルドレッドさんは面白くなさそうに話を聞いている。
「だって…ただ、好きな人のこと知りたかっただけっぽかったし…」
「それがなんですか〜?こちらとしてはいい迷惑ですよ?」
「変な噂そのままにもしておけないじゃないですか…」
「だってすぐに分かることじゃないですか〜謁見終わったら発表するんですよ?」
それはそうなんだよ。分かってるんだけど。
「でもさ…あの子あの感じのままほっといたら、暴走しそうな気はしたしさ…処刑とか言われて脅されたって、彼女の知りたかったことは知れてないわけじゃん…だったら、恐怖で口を噤ませるんじゃなくて、もうちょっとできることがあるんじゃないかって…」
ついでに噂の処理もしてもらえれば、私的にはラッキーだし…
「…それはあなたがスキルを使って、こちらにはないものを出現させてまで、やらなきゃいけないことだったんでしょうかね〜」
「それは私があの人に追いつけるだけの運動神経がなかったから、道具を使う選択をしました。スキルが他の人に見られるのはまずいと思ったから、ミルドレッドさんの部屋に戻ってスキルを発動させてから、追いかけたから、その瞬間は関係者以外には見られてないはずです。」
「それは結果論ですよね〜」
「ぐぬぬ…」
どう言っても返されるのは、私がやったことの方が罪が重いからだろうか。
確かに考えなしであったと思うし、シリウスさんの言っていることも、正論であると思う。
だから、何を言ってもしょうがないなとお説教を受け入れることにした。
「シリウス、お前、迷惑がどうとかどの口が言ってんだい…」
ミルドレッドさんが呆れたように呟いた。
日頃からシリウスさんに多大なる迷惑をかけられ続けているミルドレッドさんが参加し始めたことで、シリウスさんの口撃が一時止む。
「ヒカリ、あんたもだよ。あんたが他人のことほっとけないってのはよーく分かったけどね、だったらもっと上手いやり方があったんじゃないかい。」
確かに、私自身が手を出さなくても、シリウスさんやミルドレッドさん、直属の上司であるエリックさんが話をつけてくれてもよかったかもしれない。
でも、一方的であるにしろ、女同士のいざこざに男であるシリウスさんやエリックさんが出て行くのは得策ではない気もするけど。余計拗れそう。
うーん。
結局私がやった方がよかった気はするんだけどなー。
いまいち納得できない顔でいると、ミルドレッドさんは続けた。
「とにかく、やっちまったもんはしょうがない。だけど、お前がまずやらなきゃいけないのは謁見への準備だよ。やるべきことはちゃんとやんな。」
「…はい。」
ミルドレッドさんに注意され、しょんぼりしてしまう。
私が勝手に動いたせいで、今もサラさんは子供たちと一緒に過ごしてくれているようだし、エリックさんも騒ぎを収めるように動いてくれているみたいだ。現在進行形で迷惑をかけてしまっていることには変わりない。
「シリウス、あんたは魔術だけじゃなくて人と関わることも学んだ方がいいね。」
シリウスさんにもお説教が飛び火したが、当人はどこ吹く風だ。
随分とすました顔をしている
「もう事情は把握したから下がりな。午後にはチャーリーのところに行くんだからね。シリウスは仕事に戻るように。」
「は〜い。」
「すみませんでした。」
シリウスさんと私は各々返事をした。体調もだいぶ良くなったので、歩こうと立ち上がると、また小脇に抱えられた。
なんで!?
シリウスさんの顔をなんとか見上げると、気持ちの良いくらいの笑顔だった。
「では、いきましょうね〜」
そのまま歩き出したシリウスさんは魔法陣の上に立った。
「ぃやぁああああああああああ!」
シリウスさんの転移魔法により、客室に到着した私は、案の定体調不良になって青い顔をしている。
それに対してシリウスさんは、気が済んだようで晴れ晴れとした顔をしている。
そんな対照的な私たちを見て、客室にいた面々は不思議そうな顔で、首を傾げていた。
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