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なるほど、その手があったか




『お、お疲れ様ー。』


また夢だ。

余程疲れると、あなたに会えるのね。

ボロアパートで相変わらずテレビを見てる夫を見て少し笑った。

流石に2回目だと、前の時よりも余裕がある。

前回はその場から動けなかったけれど、今回は隣に座ることができた。

触れるかな?

そう思った瞬間、夫にダメだと制された。

面白くないなと思いながらも、大人しく引き下がる。こんなことで揉めても仕方ないからだ。


『今回は本当よく頑張ったね。流石にヒヤッとしたよ。』


そうでしょ。

すごく怖かったんだから。

私が思うだけで気持ちは伝わるようで、うんうんと苦笑しながら頷く夫の横顔を見ていた。


『また悩んでるみたいだけど…そうだなぁ。なんでも一人でやろうとしなくていいんじゃないかな?』


まぁ、元々一人でどうにかできるとは思ってないけど、どうしたもんかね。


『ほら、いるでしょ?強ーい味方の人が。』


え?誰?

もうちょっと具体的に教えてくれないと分かんないよ。


『教えちゃったらつまんないでしょ?大丈夫だよ、すぐ思いつくから。』


また、大丈夫、か。

本当に大丈夫かな。

前の夢でもそう言ってたけど、なんの根拠があるんだか。

少しムッとすると、またいつものように困った顔で笑っていた。

ああ、起きたくないなぁ。

ずっとここにいられたらいいのに。


『…そうも言ってられないみたいだよ?』


なんのこと?

夫が後ろを振り返り、指をさす。

私も釣られて後ろを振り返ると視界が白くなり始めた。

残念ながら時間切れみたいだ。

私は夫に、もうちょっとしたら帰るから待っててと伝える。

しかし夫はまた困ったように笑いながら手を振ったのだった。











「いったーーーーー!!」


私はあまりの激痛に目が覚めた。

なんなの!?この痛さ!!

私が痛みに悶えていると、犯人はニタニタと笑っていた。


「の、のんちゃん…」


犯人は望ちゃまでした。

望は寝ている私の上に乗り、肩に噛み付いていたのだ。この人の顎は幼児だからと言って甘く見てはいけない。

愛のプラスチックのおもちゃや、ネックレスのおもちゃを噛み砕いたことがある強い顎なのだ。

私は涙目になりながら痛みを感じる部分をそっと見ると、案の定内出血していた。

なんでこんな目に…


「ヒカリ様!大丈夫ですか!?すみません!止められなくて!」


ダリアさんがワタワタしながら望を抱え上げていた。

愛ちゃんはケラケラ笑っている。


「いたいーですけど大丈夫です…で、どういう状況…?」


私は肩を押さえて起き上がると、愛が一生懸命に説明してくれる。


「あのね、ばんごはん!シリウスと、ライドンと、オリビアと、ユウと、ユキと、あと、サラちゃんきたの!」


「愛ちゃん、シリウス言えるようになったの?」


「?まえからいえてるよ?」


いや、シールス言ってたがな。

てか、サラさんも来てるのか。

こりゃ起きないわけにはいかないな。

ダリアさんに頼んで人前に出れるように軽く準備して、寝室を出た。

そこには心配そうにしている顔、ホッとしてる顔、泣きそうな顔、色んな顔が並んでおり、思わず吹き出してしまった。


「ごめん、みんなおはよう。」


「ご、ごめんじゃないですわ!!心配させて!!」


泣きそうな顔をしていたオリビアが、顔を真っ赤にしてキーキー騒いでいる。相変わらず素直じゃ無い反応を見せてくれている。

はいはいと軽く受け流しながら私は自分の席に着く。アンネさんが用意してくれたであろう料理は、私を気遣ってかだいぶ消化の良さそうなものが揃えられていた。


「皆さん、今回は色々とご心配をおかけして申し訳ありませんでした。そして、助けてくださってありがとうございました。特にサラさん、色々調べてくださったみたいで…大変だったでしょ?ありがとう。

まぁ、私は思ったよりも元気なので…これからも…よろしくお願いします。

はい、では皆さん手を合わせてください!

いただきます!!!!」


「いやいやいやいや!ちょっと待ちなさい!」


「えー…いいじゃん、あとは食べながら話そうよ…」


適当に挨拶を済ませてご飯食べようとしたらオリビアに怒られた。

けれど、ライドンさんに嗜められたオリビアはムスーっとしながらも手を合わせてくれた。

ライドンさんも苦笑しながらこっちを見ていたので改めて、今度は愛に号令をかけてもらう。


「いただきますっ!」


皆で食べるご飯は久しぶりでなんだか嬉しくて美味しくて、少し泣きそうになってしまった。

和気藹々と食べている中でも、やはり今回のことが気になるのか、ユウとユキはチラチラと私の方を盗み見ている。

サラさんは緊張しているようで動きがぎこちなくなっている。


「…ユウ、ユキ。聞きたいことあったら聞いていいんだよ。私は大丈夫だから。」


「…なんで隊長はヒカリ様の居場所分かったの?」


いきなりそれかー。

どうしたもんかとシリウスさんをチラリと盗み見ると、まぁ話してもいいんじゃないですか?という顔をしたので、私はユウに歯のことを話した。

いつかこの子達も歯…じゃないにしても、GPSは持たせなきゃいけないだろうし。


ガッシャーン!という音がして何事かと思ったらオリビアとサラさんから持っていたフォークを同時に落としてしまったようだ。


「珍しい。大丈夫?」


「大丈夫?じゃないですわ…!!」


「いいいいいつの間にそんなことを…!?」


二人は青い顔をして震えている。全く合わなそうな二人だけれど、案外いいコンビなのかもしれない。


「イカれてるよなー?」


「…何より怖いのがこの二人が婚約も結婚もしてないことですわ…」


元々知ってたライドンは苦笑いしながらオリビアを落ち着かせる。一方オリビアは私達を信じられないものを見るような目で見てきた。心外だな。


「まぁ、あくまでも試作でしたが今回は役に立ちましたし〜。子供達に持たせられるようにした方がいいですね〜。」


「歯はやめてくださいまし!?」


オリビアはもう大騒ぎだ。ユウもユキも顔を怯えてしまい、真っ青にして口を覆っている。無駄に恐怖を与えてしまって申し訳ない。


「何かいい案があったら教えてくださいね〜。」


にっこりと笑うシリウスさんに、場が更に凍りついたのは言うまでもない。


読んでいただきありがとうございました!


ブックマーク、評価、レビュー、感想も嬉しいです。

誤字報告も助かります。


これからもよろしくお願いします!

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