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招待してみた




私が連れてきてもらったのは、第二部隊の隊員だ。

ミルドレッドさんにはその場にいてもらった方がいいだろうと思い、私の寝室で3人で話している。


「えっと、先日はネイサンとエリックさんの件で第二部隊の人達には迷惑かけてすみませんでした。助けに来てくれてありがとう。」


私が頭を下げると、その人物はおどおどしながら首を左右に振った。

きっとこの場に連れてこられたことで不安になってしまったのだろう。

そりゃ私とミルドレッドさんの二人と密室に入れられれば怖くもなるだろうなと苦笑する。


「驚かせてごめんね、ロレンツォ。」


私が呼んだのはロレンツォだ。

ロレンツォに椅子に座るように言うと遠慮してるのか、椅子と私達を交互に見ながらなかなか座ろうとはしなかった。そんなロレンツォの様子にイライラしたのか、ミルドレッドさんが座るようにキツく言うとようやく腰を下ろした。


「で?ヒカリはこいつを呼び出して何をするつもりなんだい?」


ミルドレッドさんはロレンツォのことを品定めするようにジロジロ見ていて、なんだかロレンツォが可哀想になる。

さっさと話を終わらせたほうが良さそうだと判断して私は改めてロレンツォを見た。


「これから話すことはあくまでも私の推測と勘だから、多少当てずっぽうなんだけど…ロレンツォ、すごく目が良いよね。」


私の発言にロレンツォはビクリと肩を震わせた。

私が何故そう思ったのかというと、今回のことで第二部隊での一度目の襲撃にネイサンが関わっていることを知ったからだ。

一度目の襲撃の時、私はネイサンの存在を認識していなかった。初めてネイサンを知ったのは、ヘクターのことを捕まえるために戦闘訓練に参加した時、ヘクターと同じチームにいたネイサンを見たときだ。

あの時、ロレンツォは私に向かって気をつけるように言った。私はそれをヘクターに気を付けるようにという注意喚起だと思っていた。


「けど、あの時本当はネイサンに対してそう言ったんじゃないのかなって。もしかして、ロレンツォは一番最初の襲撃がネイサンによるものだって分かってたんじゃない?」


「なんだって!?何故言わなかったんだ!!!」


私の発言を聞いたミルドレッドさんはロレンツォを怒鳴りつけた。

あの時、ネイサンを捕まえることができていれば今回パウエルの事件が起こらずに済んだという思いがあるからだろう。

ロレンツォはブンブンと首を左右に振って否定している。

私はミルドレッドさんを嗜めながら話を進めた。


「ロレンツォには言えない理由があったんですよ。なんでネイサンが犯人だって分かったのか聞かれたら困るんです。」


なんの証拠もないのにネイサンを犯人に仕立てるのは難しい。目撃証言でさえも嘘だ、勘違いだと言われたらそれまでだ。

それに、他の誰も気付いていなかったのにロレンツォだけがどうして気付くことができたのか、それを説明するには大きな問題があったのだ。


「さっき言ったでしょ、良い目を持ってるって。

…ロレンツォは虹色の目を持ってるんですよ。」


「は…そんなバカなこと…」


「ロレンツォが最初の聖女と精霊との子なのか、その子孫なのかは分からないですけど…」


私の仮説にミルドレッドさんはあんぐりと口を開けてロレンツォを見ている。ロレンツォは下を向いて顔を隠している。

今思えばロレンツォは植物を操って戦っていたし、前が見えているのか心配になる程異様に長い前髪も、その瞳を隠すものだと思えば合点がいく。


「それだけ前髪長くて普通に戦闘できるんだから良い目を持ってるんだろうし、第二部隊で訓練する時とかは手加減…って言うと語弊があるかもしれないですけど、強い力の持ち主だって分からないように調整しながらやってたんじゃないですかね。

もし、虹色の目を持つとバレてしまったら今までのように魔術師団員として生活していけないし、厄介な人たちに目をつけられてしまいますからね。

その目でネイサンがやったのを見たーなんて言ったらロレンツォが今までしてきた努力は水の泡です。だから言い出せなかったんだと思いますよ。」


ロレンツォが何を思って魔術師団に入団したのかは分からない。

何か理由があったのかもしれないし、興味本位だったかもしれない。

全く分からないけど、人から隠れるように生きていた彼が、わざわざ人と関わるようなことをしているのだ。

それを私達が邪魔して良いものではないと思う。


「…しかし、それが事実だとして、ヒカリはこいつをここに呼んで何しようって言うんだい?」


ミルドレッドさんは私の仮説をイマイチ信じきれないようでおでこに手を当ててため息をついた。


「ああ、それは、聖女とかそういうものに振り回されてる者同士ということで、ロレンツォにプレゼントしたくて。」


私はメモ帳にカラーコンタクト、通称カラコンの絵を描いた。

緑、青、茶色、黒、黄色、グレーなど色とりどりのカラコンを出してみた。

その中から私はグレーのカラコンを手に取って、その容器を開けてみせた。

ミルドレッドさんとロレンツォは不思議そうにその容器の中を見ている。

私がそのカラコンを指に乗せて、目につけると、ぎゃー!と大慌てで止めてきた。


「何をしておる!?」


「いやこれ、元の世界で普通にあったものですから!!これはオシャレするための物ですけど、本来は視力の補正をする道具です!眼鏡みたいなもん!!」


大騒ぎする二人に、カラコンを入れた瞳を見せる。片目に入れているので左右で瞳の色が違う私を見て二人はギョッとしていた。


「じゃーん!どう?これなら瞳隠せるんじゃない?もし、欲しいのなら好きな色あげるし、使い方も手入れの仕方も教えてあげる。

ロレンツォ、どうする?」


色とりどりのカラコンを目の前に並べられたロレンツォはしばらくそれらをじっと見つめて固まっていた。

そりゃ簡単に決断できるものではないだろう。

せっかちなミルドレッドさんは早くせんかい!と今にも言いそうな顔をしているが、今はそっとしておくように頼む。


「…また今度欲しくなったら言ってくれればいつでも渡すから、じっくり考えても大丈夫だよ。」


別に今すぐ決めなきゃいけないというわけでもないし、必要な時に声をかけてくれればそれでいい。

そう声をかけるとロレンツォは顔を上げて口を開いた。


「…誰にも言わない?」


「私は言わない。」


「…団長は?」


「…分かった。少なくともお前に許可なく話すことはしない。」


キッパリと他言しないと言わないところがなんともミルドレッドさんらしいが、ロレンツォにとってはそれで十分だったらしい。

ロレンツォは緊張したように息を吐いて、ゆっくりと前髪を上げた。

そこには想像通り美しい虹色の瞳が二つ輝いていた。

やはり、ロレンツォは精霊の子供だったのだ。


読んでいただきありがとうございました!


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これからもよろしくお願いします!

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