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兎に角、まずは陛下との話し合いだと言うことでまとまったので、一旦ミーティングはお開きになる。

昼食後に、エリックさんが、チャーリーさんのところに連れて行ってくれるらしい。

色々あったので、休憩を挟めるのはありがたい。

特に子供達は飽きているので、アンネさんたちにお願いしてたくさん遊んでもらおうと思っている。

話し合いばかりに付き合わせてしまっては疲れさせてしまう。


ミルドレッドさんは陛下に打診するための手紙を書くらしく、部屋に残り、エリックさんやイーサンさんも一緒に団長室を出ることになった。

大きな扉を開けると、そこには金髪ツインテールの吊り目女子が顔を真っ赤にして立っていた。THE・ツンデレって感じの女の子は私のことを睨みつけ、シリウスさんに詰め寄った。


「シリウス様!一体この方は誰なんですの!?」


マントをつけているから魔術師団の方なんだろう。

私のことを指さしてキーキーと喚いてる。


わ、忘れたーーーー!

噂をどうするのかって話だった…!!


シリウスさんが一体どうするつもりなのだろうか。


「僕の大切な客人ですよ〜。」


「ですから!どんな関係の客人なんですの!?」


グイグイとシリウスさんに迫って怒鳴っているツインテ女子は、少しも納得できないとめちゃくちゃに怒っている。

本物の彼女とか婚約者なのだろうか?だとしたらこんな噂もほっとけないだろうなーと眺めていた。

ぼーっと見ていたら、不意にバッチリと目が合ってしまった。


すると、ツインテ女子は標的をこちらに変えてきた。

掴みかかる勢いでこちらに向かってくるので身構えると、ピタリと動きが止まる。

シリウスさんが人差し指を立てていたので、魔術を使って止めたようだ。


シリウスさんは、ツインテ女子の動きを封じたまま声を低くして警告する。


「処刑されたいですか?」




物騒だな!!!

そんな恋敵に詰め寄ろうとしたくらいで処刑なんてありえる!?

この世界怖すぎるわ!!

私はドン引きだが、ツインテ女子には効果が抜群だったらしく、顔を真っ青にしている。

流石に気の毒になって、シリウスさんを見ると、私たちには見せたことのない冷たい顔をしていた。

私たちと接しているシリウスさんと、同一人物とは思えないその表情に怯んでしまう。


「…というか、誰ですか?なんの権限があって僕のところへ?」


そう言いながら魔術を解くと、ツインテ女子は膝をついて下を向いた。その拳は硬く握りしめられている。


「…申し訳ありません、でした…」


ギリギリ聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、謝罪をし、そのまま走り去ってしまった。

一体なんだったんだ。

呆気に取られていると、エリックさんがこっそり耳打ちしてくれる。


「あの子、うちの隊の新人さんなんだけどね、シリウスに憧れて魔術師団に入隊してんの。それで、家柄もなかなかいいから自信もたっぷりでね。絶対シリウスをモノにするって息巻いてんだよ。だから、乗り込んできたんだろうね。」


「処刑ってのは?」


「それは、本当。君はこの国で、重要人物になりかねないからね。そんな君を陥れようとしてる人間は処分されてしまう可能性も出てくるってわけ。暴力沙汰になったら、あっちのことは庇えないし、確実に罪に問われるよ。」


そう言われて納得できる部分もあるものの、彼女はそんなことは何も知らない。ただ好きな人のことを知りたかっただけのはずだ。

確かに彼女のやり方は間違ってたかもしれないけど、やりすぎなんじゃないかな…


「エリックさん、協力してくれます?」


「ん?面白いこと?」


「どちらかと言えば。」


こそこそと話すと、エリックさんはニヤリと笑った。

それを合図に私は動き出した。


「あ!ミルドレッドさんに話したいことがあったんだったー!エリックさん、扉開けてもらえますー?」


少々強引かもしれないが、適当な理由をつけて扉を開けてもらえるように促す。


「それなら私が開けますよ。」


シリウスさんはいつものヘラヘラ顔に戻って、開けてくれようとする。

できればエリックさんがいいんだけど、ここで断ると面倒そうなので、シリウスさんに開けてもらう。

ゆっくりと開く扉を見ながら少し開いたところを狙って、エリックさんの腕を引っ張り強引に中に入った。


「ミルドレッドさん!鍵閉めて!!」


私とエリックさんが中に入ったタイミングで、ミルドレッドさんに声をかけると、こちらも見ずにすぐに対応してくれた。

シリウスさんはなんか言ってたけど、今はごめんなさい、ちょっと待ってて。


「あんたら、またなんか騒いでたね。」


ミルドレッドさんに呆れたように言われる。

ごめんなさい、今からまた騒がしくなりそうです。

心の中で謝って、ミルドレッドさんにノートとペンを少々強引に借りる。


私は足が速くない。それにこんなドレス姿でなんか走れるわけない。

だから、速く移動するためには乗り物が必要だ。

だからスキルで乗り物をだす。

上手く描けるか分からない。

エリックさんは楽しそうにしている。


「できた。」


ボンっという音と一緒に現れたのは自転車だ。籠と荷台付きだ。


「なにこれー!?」


「自転車!エリックさんここ乗って!」


エリックさんに荷台に乗るように指示をして、自分は靴を脱いで自転車に跨る。

そして扉に向かって勢いよく走り出した。


「ミルドレッドさん!あとでちゃんと説明するからドア開けてー!はやくー!」


「この馬鹿!!戻ってきたらちゃんと説明してもらうからね!!」


怒鳴りながらも扉を開けてくれるミルドレッドさんは優しい。

扉が動き出したので大声で叫ぶ。


「避けてー!!!」


ドアの前で待っていた皆さんにぶつからないように必死になって避けながら部屋を出た。


「ごめん!!先に部屋に行ってて!!エリックさんいるから大丈夫だから!!」


それだけ言って、走ることだけに集中する。エリックさんは、シリウスさんが止めようと魔術をかけてくるのを阻止してくれている。

ものすごく楽しそうだ。


「エリックさん!さっきの子のところに行きたい!」


「オッケーだよー!」


頼みの綱はエリックさんだけなので、エリックさんに道案内を頼みながら力の限り自転車を漕ぐ。

流石に成人男性を乗せて漕ぐのは堪える。長く漕ぐのは無理だなと思っていたが、案外ツインテ女子はすぐに見つかった。


団長室の近くの庭に設置してあるベンチに座っていた。

勢いよくベンチまで近寄り、急ブレーキで止まろうとした。

しかし、急ブレーキすぎて自転車ごと倒れる。久しぶりにチャリで転んだわ…


「ちょっとー僕まで転びそうだったじゃーん!!」


ケラケラと笑っているエリックさんは自転車が倒れる前に降りていたらしく服を汚すことすらなかったらしい。

手を差し伸べてくれたのでありがたく手を取った。


「な、なんですの!?」


ツインテ女子は泣いていたのか、目が真っ赤になっていて痛々しい。

勝手に隣に座らせてもらう。

ムッとした顔をして立ち去ろうとするツインテ女子を、エリックさんが引き止める。


「まぁまぁ、オリビア。ここは隊長の顔をたてると思ってさ。」


キラキラスマイルで、上司の力を仄めかせると、ツインテ女子のオリビアさんは渋々と言った感じで座った。

エリックさんに、目で感謝を伝えると、オリビアさんに声をかける。


「大丈夫?」


「あなたに心配される筋合いありませんわ。」


ふんっと顔を背けられ、聞く耳も持たない感じだ。

まぁ話ができる状況ではないだろうことは、想定内だ。


「これは独り言なんだけどー私ったらここにきたばっかりでー」


「は?」


オリビアさんは怪訝そうな顔をしながは話を聞いている。話す気がないなら一方的に聞かせればいい。


「なんも分かんないんだけどー今ハッキリ言えることは、私とシリウスさんはなんもないってことだけかなー」


「本当なんですの!?」


私の言葉を聞いてオリビアさんが勢いよくこちらを向く。

その勢いに苦笑しながらも、独り言を装って続けた。


「あーぁー誰か変な噂流れてんの、どーにかしてくんないかなー?」


足をぶらぶらさせながら、チラリとオリビアさんの方を見てみた。


「わ、わたくしが!!あなたとシリウス様がなんの関係もないことを!!みんなに言っておきますわ!!」


目を爛々と輝かせて、興奮気味にそう言ってきた。

そのタイミングで、オリビアさんの方を見て目を合わせる。

オリビアさんは、ビクッと肩を震わせ、目を逸らした。

先程のことがよっぽど怖かったのかもしれない。

私がオリビアさんの頭を軽く撫でると、オリビアさんは勢いよくこちらを見た。いちいち反応が大きい。


「私が誰かは、後ではっきりするから。噂の方、よろしくね。」


私がそういうと、オリビアさんはまた、ふんっと拗ねた子供のような仕草をして、エリックさんに礼をして行ってしまった。

私の方は見なかったが、上手く噂を消してくれれば良しとしよう。


あー私はいつになったらのんびりできるのかなーー。

なんだか疲れてベンチにもたれかかって空を見上げると、そこにすごい怖い笑顔で覗き込んでいるシリウスさんがいたのだった。

読んでくだり、ありがとうございます!

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