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龍はどんどんと回転スピードを上げて回っている。その際発生した風によって、付近の木々がバキバキ鳴らしながら次から次へと倒れていく。

勢いよく龍へ向かっていったドラゴンだったが、風が強くなるにつれて翼をうまく動かすことができなくなっていった。

龍はぐるぐると回り続け、遂には大きな竜巻を発生させたのだ。ドラゴン達は暴風に巻き込まれて、まるで洗濯機の中の衣類のように、先程倒された木の一部と一緒にぐるぐると振り回されている。

隊員達も結界が飛ばされないように必死に魔力を込め続けている。


私が出現させた龍は、寒さに弱いドラゴンと戦わせるために氷で作ったのだが、その龍が発生させた竜巻には氷の粒が含まれるらしく、ダイヤモンドダストのようにキラキラと輝いていた。

日が暮れて辺りが暗くなっているので、目の前に天の川が現れたようでつい見惚れてしまう。


「綺麗…」


「ヒカリ様呑気なこと言ってる場合じゃないよ!?何あれ!?トルネード!?」


「えっと…多分そうかな?私達は竜巻って呼んでる。竜巻の竜は、龍と同じ意味があって…龍は雲を作って、雨降らして、天に昇っていく神様みたいな存在なのね。それで、その龍が天に昇っていく姿に見立てて、竜巻って名前になったんだけど…」


「ええ!?ヒカリ様神様作っちゃったの!?」


「いやいや!?私の作ったものに神的な力が宿ることはないはずなので!?それの姿を真似した氷の塊を作ったはずですが!?」


人は混乱すると現実逃避してしまう生き物なのか、私達は目の前の光景についてなんとか自分の中で納得させようとして訳の分からない会話をしてしまう。

敢えて温度の低い龍を作ったことが功を奏したのか、強風だけでなく、その冷たさにもドラゴンはダメージを受けているようだ。

氷漬けとまでは行かなくても、体温が下がって体を動かすことができなくなったのか、龍の竜巻にはされるがままになっている。

しかし、私の作った龍は一体いつまで竜巻を作り続けるのだろうか。ドラゴンはもう瀕死のようだし、結界を作り続けている隊員達も苦しそうだ。

私が作ったものだから、私の言うこと聞くのだろうか…

私はとりあえず大声で龍に呼びかける。


「すみませーん!!止まって下さーい!!お願いしまーす!!!」


だいぶ格好付かない声かけではあったが、龍に私の声は届いていたようで回転速スピードを徐々に緩めてくれた。次第に竜巻は収まり、ドサッドサッとドラゴンが地上に落ちてくる。そのタイミングで結界を解いた隊員達はすかさずドラゴンの捕獲へと走っていった。

役目を終えたドラゴンは私の目の前に降りてきたので、恐る恐る手を伸ばす。

冷たい鼻先に触れて、龍に御礼を言う。


「ありがとうございました。助かりました。」


自分で出現させたものに挨拶するのも冷静に考えるとおかしな話だが、神様の形をしたものを無碍に扱うことはできない。

感情のない龍はそのままじっとしていた。


「びぇぇぇぇぇぇえんああああ!!」


その断末魔のような泣き声は聞き覚えがあった。その音は衝撃波のように私の出した氷の龍を消し去ってしまう。

私は声の方を勢いよく振り返るとそこには予想していた通り、私の可愛い可愛い次女の望がシリウスさんに抱かれて大泣きしていたのだった…。








「ま〜た凄い物を出しましたねぇ〜。」


シリウスさんから泣き喚く望を渡してもらう時、呆れたようにそう言われた。

どうやらシリウスさんは転移魔法を使って望のことを迎えに行っていたらしい。


「…なんで望を連れてきたんですか。」


ただでさえ危険な場所なのにこんなに小さな子を連れてくるなんで頭おかしいと思う。

私は非難の目をシリウスさんに向けるも、シリウスさんは至って冷静だ。


「以前パーティーの時、ノゾミ様がスキルを発動させたじゃないですか〜?その時、結界越しに魔女の本当の姿が見えたのを思い出したんですよ〜。だったらノゾミ様に結界張ってもらって、その中からこの辺を見てればどれが本物なのか見分けがつくかと思いまして〜。」


「…そうですか。」


「ええ、問題はどうやってこの結界を張ってもらうかだったんですけど〜あの変な生き物がヒカリ様のところにいたのを見て怖かったみたいで、むしろ助かりました〜。」


「…」


ヘラヘラと説明を続けるシリウスさんに呆れてしまうものの、間違ったことは言ってないので文句を言いたいのをグッと堪える。

シリウスさんはムッとしながら望を宥める私に、抱っこ紐を差し出してきた。どこまでちゃっかりしてるんだ…!!しかし、抱っこ紐はありがたいのでありがたく受け取らせてもらう。

抱っこ紐を装着して、望を抱っこし直すが、相変わらずメソメソしたままだ。

なんでも寝てたところを連れてきたので機嫌が悪いらしい。寝ていたことで体力もあり、機嫌が悪いことで結界が張られ続けていると言ってシリウスさんはニコニコしていた。

くっそ…!!泣く子をあやすのは大変だと分かっているけれどこの状況をラッキーだと思ってしまっている自分もいる…!!!複雑!!!!











「アラン、この場は任せましたよ〜。」


「はい…皆様、ご武運を。」


第二部隊の人たちは怪我人も多く、一緒に連れ立って愛の元へ向かうのは難しいと判断した。

シリウスさんも戻ってきたので、私とライドンさん、シリウスさん望の4人で愛の元へと向かうことになったのだ。

そこで、ここで待機することになった第二部隊の隊員達の中からアランさん見つけ出し、代表をお願いすることになった。幸いなことに、アランさんも怪我はしているものの、軽症だった。他の軽症の人たちも含めて、重症者にできる限り治癒魔法をかけてくれるそうだ。

心配そうにしているアランさんに挨拶をして、私達は歩いき出したのだった。

読んでいただきありがとうございました!


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