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魔術フェスティバル、始まりました。




シャーロット様が私の元を訪れてから、慌ただしく日々が過ぎ去っていった。

正直なところ、聖女について調べるべきだとは分かっているが、なんとなくシリウスさんにそのことを聞けずにいた。それに、自分でこっそり調べようにも魔術師団の図書室を使うことになる。図書室を使えれば私が何を調べているのかすぐに周囲に知られてしまう。何より、私は知るのが怖かった。娘にこれからどんな運命が待ち受けているのか、それを私は受け止められるのか…何より、愛に何かを背負わせてしまうのではないかと不安だった。

そんな風にごちゃごちゃと考えているうちに魔術フェスティバルの当日になってしまったのだ。




私達は今、出演の準備のために第三部隊の皆さんと一緒に会場の控え室のような場所に来ている。

衣装部の皆さんも走り回って忙しそうだ。今日演者として出演予定の第三部隊方々は、自分たちでメイクや着替えがある程度できるようになっているらしい。衣装部の皆さんは最終チェックと、必要ならばお直しをしているらしい。

第三部隊に配属が決まるとまず最初にメイクや衣装、大道具、音響など全ての研修を受けるそうだ。だから、全員ある程度のことはできるのだと言う。

そこから各々演者や、チャーリーさん達のような衣装部など、細かな部署に分けられるらしい。そういえばオリビアはどこの所属なのだろうか。


「ちょっと、ぼんやりしないでくださいよ。」


オリビアのことを考えていたら、ジョンさんに呆れたように声をかけられた。私は今ジョンさんに気合の入ったヘアセットをされている最中だったのだ。

すみませんと謝ると、いーですよーといじけたような返事が聞こえたので苦笑する。

私達家族と、ユウ、ユキは第三部隊ではないので、自分達で衣装を着たり、メイクをすることはできない。しかし、今日は衣装部の皆様も私達にだけ付いているわけにもいかないので、ダリアさんとアンネさんにも来てもらって手伝ってもらっているのだ。

アンネさんに衣装を着る手伝いを、ダリアさんには子供達のヘアメイクを担当してもらっている。

女の子を可愛くすることに命をかけているジョンさんは、ダリアさんが愛やユキのヘアメイクをしているのを見て、少し悔しいが正直助かると苦い顔をして言っていた。


「…忙しいのにすみません。」


「いいんですよ。ヒカリ様の担当は誰にも譲る気ないし。」


こんなにやり甲斐ある人いませんからと嫌味っぽく言われて、私はもう黙ることにした。何を言ってもグサグサと攻撃されるような気がしたからだ。

ウィッグの毛を器用に編んだり、飾りをつけたりしてどんどん女性らしくなっていく。

まぁ、ここまで変わればやり甲斐はあるだろうなと、鏡を見ながらぼんやりと思っていた。

するとチャーリーさんがユウを引きずって私達の前に連れてきた。


「ちょっと!見て!この素晴らしい衣装を!!アタシったら天才じゃない!?私の甥っ子最高にかわいいわ!!世界一よ!!おーほっほっ!!」


そう高らかに笑いながらズズっと目の前に、げんなりしたユウを見せてきた。


「…かわい…本当…チャーリーさん天才かな…」


私は、はわわわわとなりながらできる限りの賛辞をチャーリーさんに送ると、チャーリーさんはえっへんと胸を張っている。ユウはより一層げんなりだ。

ユウの衣装はノースリーブのワイシャツに、黒い蝶ネクタイをつけて、黒のかぼちゃパンツを履いている。ちなみにY型のサスペンダーをつけている。足元は黒いショートブーツを履いており、胸元にはオレンジ色の花を使ったコサージュがついていた。そして何よりも素晴らしいのが、ユウの頭には…頭にはなんと!!うさ耳が!!バニーボーイ!!かわいい!!!可愛すぎる!!!げんなり顔じゃなくて照れ顔だったら10000点だったのに!!

チャーリーさんは不機嫌そうなユウを無視して、衣装の説明をしてくれた。


「前にヒカリが提案してくれた時、色々考えたのよ〜動きやすい服装がいいって言ったじゃない?だからもういっそのこと動かす部分は出しちゃえ!と思ってね。だから袖もなくして、ズボンも短く、でも可愛らしさを残したわ!ユキは足は出せないからふんわりさせただけだけどね。あと、あの時ヒカリが教えてくれたのはわんちゃんモチーフだったでしょ?この子達、わんちゃんって感じじゃないじゃない…?ちょーっと色んな動物のお耳作ってみたんだけど、やっぱりうさぎちゃんが一番似合ってたのよ!!んもう!!アタシは自分の才能が恐ろしいわー!!」


「チャーリーの姉ちゃん!うるさいよ!!」


チャーリーさんのマシンガントークにユウは耐えきれなくなったのか顔を真っ赤にして怒鳴っていたが、チャーリーさん本人には全く効果がない。デレデレしながらユウに抱きついていた。ちなみにジョンさんはガン無視ですよ。


「あ〜ん、本当に隠しちゃうのが勿体ないわ〜ん。」


「…変な声出さないでよ…」


もう何を言っても意味がないので頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

お気の毒だけれど、しゃがみこんでいるのもものすごく可愛い。

顔部分には、目元から鼻ぐらいまでの位置を覆うリアルなうさちゃんの仮面を付けるそうだ。何にせよ、チャーリーさんは大満足な出来のようでよかった。早くユキの衣装も見たい。そして褒められまくって恥ずかしそうにしてるのも見たい。

ニヤニヤしながらユウの姿を見ていたら、フンっと顔をそらされてしまった。思春期ちゃんめ。


「もう!!姉ちゃん行くよ!!」


ぎゅーぎゅーとチャーリーさんに抱きしめられているところから無理矢理抜け出したユウはそう言って逃げていってしまった。

今日はユウとユキの初舞台だ。

どうか成功しますように。

走りゆく背中を見てそう願ったのだった。

読んでいただきありがとうございます!


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誤字報告も助かっております。


これからもよろしくお願いします!

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