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魔術フェスティバルに向けて準備してみた




丸一日休みをもらってから、体調を崩すことなくなんとか魔術フェスティバルに向けて準備を進めてきた。

準備をしていく上で一番の収穫はユキが参加に前向きになったことだった。

あれからユキも色々考えたそうだ。顔が出ない、ユウと一緒という条件がクリアできるのであればと出演を承諾してくれたそうだ。

ユキが決意してくれたのならば、どうせだったら楽しんでもらいたい。

私はエリックさんと一緒にイベントで使うスキルについて相談することになった。


「この前、テイラーさんのところでちょっとできたんですけど…」


私は水でイルカを作ってエリックさんの前で見せてみた。小さなイルカがバシャっと音を立てながら私たちの前に現れ、空中を飛んで床を濡らした。

飛び出した時はびっくりしていたエリックさんだったが、イルカということに難色を示した。

イルカが姿を表したのは、私の手から飛び出して地面に落ちていくまでの短い間だったからだ。

多くの人が集まるイベントで、一瞬しか見られないものはふさわしいとは言えないのだという。


「うーん。鳥とか蝶とか出せないかな?」


「…やってみる。」


私はエリックさんの言い方に少しムッとしながらも、掌の中で水の蝶を作って飛ばしてみた。私が作り出した蝶はポタポタと水を垂らしながら空中をゆったりと舞っている。その垂れている水は蝶の体を作っている水なので、水が垂れる度に蝶が小さくなっていく。

これならば何回か連続で蝶を出せば盛り上がるだろうということで、私の出し物は決定した。


「ねえねえ、ヒカリちゃん、こないだシリウス泊まったんでしょ?進展あった?」


ある程度方針が決まったと思えば今度は揶揄ってくるのか…私はげんなりしながらも何もないと伝える。実際同じ布団で寝ることなんてしていないし、休みの日だってただダラダラして過ごしただけだ。

エリックさんはニタニタしながら話を聞いていた。

…そういえばエリックさんもいいところのお坊ちゃんだったはず。だとしたらエリックさんにも婚約者がいてもおかしくない。

エリックさんのそういう話聞いたことないから興味あるなぁ。


「エリックさんは婚約者いないんですか?」


「えー?いるよーすっごく可愛い子。僕には勿体無いくらいのね。」


「ナチュラルに惚気るじゃん。」


魔術フェスティバルの書類に目を落としながらニコニコして話している。

あんまりにもサラッと話されたので拍子抜けしてしまった。揶揄う材料にはならないらしい。まぁ、別に揶揄えなくてもいいか。


「いつ結婚するんですか?」


「僕は今すぐにでも結婚したいけど、なかなかねぇ。」


肩をすくめてそう言うエリックさんに違和感を覚えつつも、踏み込んでいいラインなのか分からずこれ以上追求するのはやめた。自分がズケズケ踏み込まれたからって、私まで同じように踏み込んでいいわけではない。


「タイミングもありますもんね。」


「たいみんぐ?」


「んー…時を見計らう…それにふさわしい時がいずれ来るってことです。」


「なるほどねぇ…」


エリックさんは小さくつぶやいて魔術フェスティバルの進行について話し始めた。

魔術に親しんでもらうことを目的としているので、さまざまな催し物が企画されている。魔術師団の建物の中も全てではないけれど出入りができるらしい。

例年、中庭にステージを作ってそこで第三部隊が催し物をするのが決まっていたそうだが、今年は訪問者の増加が見込まれるとのことで演習場にステージを作ることになったそうだ。


「演習場を使えるってことはだいぶ広く使えるから、今年は第二部隊にも手伝ってもらうことにしたんだ。客席に結界を張って模擬戦闘をしてもらおうと思っててね。」


「へー!練習とかするんですか?」


「何回かはやるかなー?ヒカリちゃん、興味ある?」


「ええ、見てみたいですね!」


以前訓練に参加させてもらった時はそれどころじゃなかったから、観客として観覧できるのであれば見てみたい。

単純な力勝負じゃないのが魔術での戦闘のいいところだと思う。

エリックさんが練習がある時は連れて行ってくれると約束してくれた。

ステージではまず最初に第三部隊が手品のようなことをして盛り上げるらしい。そのあと、ユウとユキのスライムショーが行われて、私達が登壇するらしい。

しかし本当に水の蝶を出すだけでいいのだろうか?不安になってくる。

エリックさんに聞くと、エリックさんも困ったようにしている。


「まぁ…聖女が現れたってだけでも盛り上がると思うから大丈夫だと思うけど…今度会場に行ってみようか?そうすればイメージしやすいかもしれないし。」


「お願いします。」


やることが多くて大変そうだけれど、一度やると決めたからにはちゃんとしなくちゃね。

私が小さくため息をつくと、エリックさんは衣装部に行って息抜きしてくるように提案してくれた。

なんでも衣装が完成間近らしい。私は愛と望も一緒に衣装部へ連れて行くことにした。









「あら、ちょうどよかったわ。そろそろ見てもらおうと思っていたところよ。」


チャーリーさんは突然押しかけた私たちを見てにこやかに迎え入れてくれた。そのままアイリスさんとマリーさんにお茶とお茶菓子の用意を頼んで一度奥の部屋に引っ込んでしまった。

忙しい時に来てしまったかもしれないなと思いながらも椅子に座って子供達と一緒にお茶菓子をいただく。

望はお菓子を随分と気に入ったのか両手に持ちながら食べている。愛はリボンやフリルがたくさんあるのが気になるのかキョロキョロとして落ち着かない様子だ。


「アイちゃま、妖精さんのお洋服できたのよー!見てみてくれる?」


チャーリーさんは愛と望の衣装を着せられたトルソーを抱えて持ってきた。後ろからはジョンさんが私の衣装の分のトルソーを持ってきてくれている。

今回のドレスも素晴らしい出来だ。以前絵本を見てリクエストしたエンパイアラインのドレスがそこにはあった。

全体的にオフホワイトでできているドレスで、首元と長袖の部分はシフォン生地で作られており、透け感がありながら上品に仕上がっている。胸下から切り替えられたスカート部分は裾にかけて直線的に広がっており、まさにリクエスト通りの仕上がりだった。

第三部隊の演者さんや、ユウとユキの衣装は派手に作ったそうで、そことの差をつける為にもあえてシンプルに作ってるそうだ。


「現段階ではいくらなんでもシンプルすぎるからもう少し手を加えるけれど…一度着てもらっていいかしら?」


「あいちゃんきる!いちばんにきる!」


「わー!待って!愛!!手を洗ってから!!」


愛は大喜びでドレスに飛びつきそうになっていたので、全力で阻止する!!

手を洗って口の周りを綺麗にしてからアイリスさんとマリーさんに愛のことを頼んだ。

私はドレスを着る前にジョンさんとウィッグの相談をすることになった。

今回女の子らしくヘアセットができると言うことで随分と張り切ってくれたらしい。私の髪色のウィッグを片っ端から揃えてきてくれたそうだ。

あーでもない、こーでもないと言われながら次々と頭に乗せられていくウィッグの重さを感じながら私は遠くを見つめたのだった。

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