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「えええええええええええ!?」
私とユウのでかい声が響く。
ユキは顔を真っ赤にして口元を押さえていたし、シリウスさんは相変わらずニヤニヤしている。ダリアさんは愛に、けっこんってなに?と聞かれてしどろもどろに説明をしている。三者三様に反応しており、ただいま現場は大変な混乱状態にあります。現場からは以上です。
じゃなくて!!いやライドンさんどうしたの!?
あ、いやめでたい!!おめでとう!!
オリビアやったね!!?
私はパニックになりながらオリビアを見ると、オリビアも目を丸くしてライドンさんを見ている。
「今、なんて…?」
「だから、俺と結婚しようって。婚約破棄になったばっかりだから今すぐは無理だけど…半年後に婚約して、そこから半年後に結婚って感じになるのかな…それなら魔術師団辞めなくていいし、修道院にも行かなくていいだろ?」
「…ありがとうございます、ライドン様。でも…同情でしたら結構ですわ。そんなことでライドン様やライドン様のお家にまで汚名を着せるわけにはいきませんの。」
「そんなの気にするような家なら、兄ちゃんも俺も、もうちょっとまともになってると思うけど…」
「それは…」
ライドンさん、自覚あったんだね。
なんともツッコミづらいところを突いてくるので、オリビアもどう反応すればいいのかますます分からなくなっているようだ。
「てか、オリビアちゃん、俺のこと好きでしょ?」
そんな2人の攻防戦の最中、ライドンさんはとんでもない爆弾を落とした。突然のことにオリビアは真っ赤な顔をして私の方に顔を向けた。
「ヒカリ!?」
「私何も言ってないから!!無罪!!まじで!!」
濡れ衣を着せられかけた私は全力で否定する。いくらなんでも、勝手にそんなこと言ったりしない!!
茹で蛸のように真っ赤になり、泣きそうな顔をしてるオリビアはもうライドンさんの方を見ることができないのか、ふるふると震えながらずっと私を見つめている。
ライドンさんはクスクスと笑って席から立ち上がり、オリビアの方にゆっくりと向かった。ユウは気を利かせてから、立ち上がってユキの隣に移動して、ニヤニヤしながら様子を見ている。ユキは相変わらず真っ赤になっているものの、2人から目が離せないようだ。
頑なにライドンさんの方を見ないオリビアの隣で、ライドンさんはククッと喉を鳴らして笑った。
「別に誰かに聞かなくても分かるよ。オリビアちゃん、俺といる時すっごい可愛い顔してんだもん。」
本人にバレていると思っていなかったオリビアは、羞恥心からついに泣き出してしまった。ポロポロと涙が溢れていき、それをまともに見てしまっている私とユウとユキの3人は慌ててハンカチやティッシュがポケットに入っていないか探した。けれども、私たちが見つける前にダリアさんがスッと差し出していた。さすが仕事ができるメイドさんだ。
そんなことをしている間にライドンさんは魔術を展開していたらしい。
光の糸がオリビアの左手の薬指に巻きつく。
突然のことに驚いたオリビアはぐしゃぐしゃの顔のまま、ライドンさんの方を振り返ってしまった。
「指輪とか用意できてないけど…あとでちゃんとしたの渡すから、それでとりあえずは我慢して。俺が君をずっと守るよ。」
どうやら指に巻き付いたのは結界を変形したものらしい。きっと先程ヘクターを捕らえた時と同じものを今度は指輪として使ったのだろう。今回作り出したこれは捕らえる為ではなく、愛を誓う為に。
「ねぇ、オリビアちゃん。俺と結婚して。それで、ユウとユキと、兄ちゃんもさ、一緒に家族になろうよ。」
「…そんな…だめですわ…私ユウにも酷いこと言ったのよ…」
「俺ぇ!?」
甘い雰囲気に突然巻き込まれたユウは驚きの声を上げる。泣いているオリビアとニコニコ笑っているライドンさんの2人に見つめられて、照れ臭そうに頭を掻いていた。
「別に気にしてねぇけど…家族になるって…オリビアの姉ちゃんが母ちゃんってこと?」
「か…!?」
腕を組んで唸りながら考えているユウの言葉に激しく動揺したのか、オリビアは言葉を失っていた。
ライドンさんとシリウスさんは吹き出してケラケラ笑っている。
「俺、ライドンの兄ちゃんが父親って言われた時もそうだったんだけど…父ちゃん母ちゃんがどんなもんか分かんねぇからさ…あんまりピンと来ないけど…
だけど、皆とは一緒にいたい。一緒にいれるなら家族でもなんでもいいよ。」
私はその言葉を聞いて、当事者ではないのに涙ぐんでしまった。
勝手に連れてきてしまって、いつの間にか家族としてライドンさんの家に迎え入れられて、戸惑うことばかりだったと思う。しかし、一緒にいたいという言葉を聞くことができて、自分が考え無しにしてしまったことを許されたような気がした。
ユウの言葉にユキも必死に頷いている。オリビアはただ泣きながら2人を抱きしめていた。
「うん…俺達なりの家族になっていこうよ。」
3人の顔を覗き込みながらそう言ったライドンさんに、オリビアはようやく折れて、小さく頷いた。3人の抱擁にライドンさんも加わって、ぎゅーぎゅーと抱きしめ合っていた。
人のプロポーズの瞬間に立ち会えるなんてなんと幸運なことなんだろう。
どうか皆が幸せになってくれますようにと願いを込めて、パチパチと拍手を送る。私の真似をした愛と望も手を叩いていた。
昼食の支度を終えてやってきたアンネさんは何事かと驚いていたが、訳を話すと大いに喜んでいた。晩ご飯は思いっきり豪華にすると張り切っていて、
晩ご飯ではチャーリーさんとエリックさんも呼んで盛大にお祝いすることになった。オリビアはまた顔を真っ赤にしていたが、涙を拭きながら幸せそうに笑っていた。
私はそんなお祝いムードの中、なんとなくシリウスさんを見ることができなかった。
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