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これは夢、夢なのだ。  作者: 椿 雅香
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最後の試練

少し短いですが、キリが良いのでアップします。

夢の中のミッションは、いよいよ最終段階になります。

 翌日、旅が再開された。散々悩んだあげく、車は野宿した場所に置いておくことにした。

 というのは、バッテリーに電池の残量が少なくなっていたので、このブラックボックス地域に充電器があるとしても、それを探してウロウロするゆとりがなかったからだ。

 

 問題は道だった。

 


 道らしい道がなかったのだ。


 っていうか、ここが神崎博士たちの隠れ里だとして、きっと端っこの方だろう。



 でも、博士たちは、どうやって隠れ里へ行ったのだろう?

 とてもじゃないけど、前へ進むこと自体、とんでもない場所なのだ。

 

 切り立った崖に沿ってソロソロ進んだり、谷川を跳び越えたりしなければならなかった。

 しかも、跳び越えなくちゃならない谷川の幅は一メートル以上ある。


 マリアなんか、キャーキャーわめいて、ナギにしがみついていた。


 どさくさに紛れるっていうか、良い根性してる。

 


 私も頑張って跳び越えたけど、怖かった。


 本当に怖かった。

 落ちるんじゃないかと思った。


 でも、これは夢、夢なんだ。



 私が、谷へ落ちるってことはないはずだ。

 いや、あったとしても、死ぬことはない。


 そう思ったから跳べたのだ。

 




 そうして、事件は起きた。

 

 ロッククライミングみたいな垂直に近い崖を登っていると、マリアが手を滑らせたのだ。

 

 アッと言う間に滑り落ちた。


 谷底へ向かって一直線だ。

 すぐ後ろを登っていたレオが手を伸ばすが、捕まえた瞬間、二人とも落ちて行った。

 

 全ては、一瞬のことだった。

 

 目の前で、二人が死んだのだ。

 呆然として、体が動かなかった。



「ナナ、しっかりするんだ!」


 ナギに怒鳴られて我に返った。

 

 ここで呆然としていても夢は終わらない。


 私が最後に登っていれば良かった。

 そして手を伸ばせば良かったのだ。


 そうすれば、マリアもレオも死ななかった。

 やり直せたのだ。


 でも、私はナギの次、二番目に登っていて、すぐ後ろを登っていたマリアを助けることができなかったのだ。

 


 深呼吸して、最後の絶壁を登り切った。


 膝がガクガクして息も上がった。


 でも、体がより、精神的なダメージの方が大きかった。

 

 だって、いくら性格ブスだといっても、あのマリアが死んだんだよ。

 レオだって、最近、私のこと評価してくれたのに。

 

 私たちは、これで四人になった。ナギ、リョウ、私、そしてヒロだ。

 

 

 尾根づたいに進み、今度は、下りに差しかかる。

 途中で、湧き水を見つけて、水筒に詰めた。

 

 念のため、毒物が混入していないか確認した。

 っていうか、確認キットがあるんだ、これが。

 

 何のためにこんなものがあるのか意味不明だが、そういう恐れがあることも予想されていたのだろう。

 考え出すと、怖くてたまらなくなる。

 うん。そうだ。考えないようにしよう。

 こういうときは、それが一番だ。 



 汲んだ水を一気に飲んで一息ついた。


 

 この後、どっちへ行く?


 条件反射のようにナギが訊いた。

 


 これだけ人が死んだのに、まだ進もうとしているのだ。信じらんない。

 

 でも、行かなければならないのだろう。

 ミッションを完遂しないと、夢は終わらないのだろうから。

 


 疲れた足を引きずって、斜面を降りる。


 日が傾いた頃、まるで牧場のような斜面に出た。




 いや、確かに牧場だった。

 広い斜面を生き物が走り回っている。


 変わった家畜だった。


 目を凝らすと、小型の保護対象生物だった。


 みれば、体が小さいだけじゃなく、性格も穏和なのだろう。

 互いにじゃれあったり、駆けっこしたりしている。

 琵琶湖付近で見たようなバトルはない。

 

 でも、小さいだけで、形はティラノザウルスに酷似しているのだ。


 不気味だった。




 ここがゴールだ。


 神崎博士の隠れ里だ。


 後は、博士の研究データと改良型保護対象生物の卵もしくは遺伝子をゲットすれば良いのだ。





「一匹捕まえて、卵と遺伝子を取ろう」

「そうだ。それとどっかに研究所の跡か何かがあるはずだ」



 男三人は、大喜びで駆けだした。

 駆けだして、牧場の周りにぐるりと掘ってあった落とし穴のような堀に落っこちた。


 吉田兼好の高名の木登りじゃ、木登りは最後に降りるのが難しい、と言う。

 ミッションは、目的地に到着してからが難しいのだ。

 


 堀は沼みたいにドロドロしていて、その上に草が生えている。

 ちょっと見じゃ、堀だなんて、分からない。

 ただ、歩くとずぶずぶと沈んでいくのだ。

 

 慌ててその辺にあったツタを投げた。

 やっとのことで、ナギとリョウを引きずり上げた。一番前を走っていたヒロは、もう頭まで沈んでいた。

 


 あまりの恐ろしさに悲鳴も出なかった。





最後の最後で、まさかの罠。ナナは、ショックを受けます。

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