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これは夢、夢なのだ。  作者: 椿 雅香
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隠れ里とブラックボックス地域

夢の中で隠れ里を捜すため知恵をしぼります。

 出て来た端末には、田所大輔のメモが残っていた。


 彼は、約束を破ったことを後悔し、覚えている限りの情報をメモして、それを参考に隠れ里に合流しようと試みたらしい。



 言わせてもらえば、馬鹿な人だ。


 そもそも、約束を守って一緒に行動すれば、そんな苦労をしなくて済んだのだ。


 加えて言うなら、節操なしだ。

 一度裏切った仲間に泣きついて、助けてもらおうとしたのだ。


 その結果、どうなったのかは、分からない。

 

 でも、見つけた端末には、隠れ里の位置を模索するデータが残されていた。


 

 金沢から車で2時間。途中の崖を飛び越えて、谷を越える。

 どうやら、車ごと空中を飛んで移動したらしい。


 007じゃあるまいし、どうやって、そんな馬鹿げたことができたのだろう?


 神崎博士のグループはとてつもなく非常識な方法で、谷渡りしたらしい。

 まるで鶯だ。


 田所大輔のメモによれば、普通に道を走ると、一山越えなければならず、しかも、道なき道を手探りで進まなければならない。

 結果、隠れ里にたどり着くのに二日以上かかるという。


 空中を飛んで山を越えるなんて、夢の中じゃないとできないことだ。

 現実リアルでは、飛行機やヘリコプターじゃあるまいし、車が空を飛ぶことなんかできない。


 でも、夢の世界でもできないはずだ。

 だって、空には、飛行タイプの保護対象生物が生息しているんだから。

 

 いや、待てよ。


 神崎博士が隠れ里に移住した頃は、まだ保護対象生物がいなかったから、人類だって飛ぶことができたのだ。

 

 だって、博士は、隠れ里に落ち着いてから、保護対象生物を創ったのだから。



 隠れ里は、金沢の南、白山麓に位置するらしい。

 しかも、行程が半端じゃない。

 どうやって行けば良いのだろう?

 その上、たどり着いた場所が、神崎博士の隠れ里だなんて、どうやったら分かるんだろう?

 まさか、西部劇みたいに看板が立ってるわけもないだろうし……。



「ここに来るまでに、琵琶湖周辺と金沢の旧市街地といった地域がブラックボックス地域になっていて、ナビも通信機も使えなかった」


 私がつぶやくと、ナギが続けた。


「その変わり、理由は分からないが、酸素が多くて、人類適応能力範囲内の数値になっています。

 実際、通常、東京や名古屋といった城塞都市以外では、酸素ボンベが必要なのに、普通に呼吸できます」

「不思議と言えば、不思議な共通点ね」

「そう言えば、そうですね」


 ホシヨミも私と同じことに気が付いたようだ。


「神崎博士は、保護対象生物を創造しました。

 で、その保護対象生物が生息する琵琶湖周辺はブラックボックス地域です。


 金沢は、神崎博士の活動拠点でした。

 その金沢でも旧市街地とも言える二つの川に挟まれた地域は、ブラックボックス地域なのです。

 

 帰納法で考えると、これから探す博士たちの隠れ里も同じようにブラックボックス化しているかもしれません。

 

 理由は分かりませんが、博士は自分たちの活動領域をブラックボックス化する必要性を感じ、そうしたのかもしれません」


「それは、ちょっと乱暴なんじゃないか?」

 ナギが私たちの推理に疑問を呈した。


「乱暴って?」

「君たちの推理によれば、ブラックボックス地域は全て神崎博士の活動エリアだってことになる」

「おかしい?」

「まるで、神崎博士のグループが、酸素の潤沢な活動エリアへ他の人間が入れないようにするために、ブラックボックス地域を作ったと言わんばかりの理屈だ」


 目から鱗が落ちるとは、このことだった。


「そうよ。そうなのよ。

 ナギが言うとおり、他の人たちが入って来れないようにしたのよ」

「ナナの推理が正しければ、隠れ里を探すには、逆に、ブラックボックス地域を探せば良いということになります」

 ホシヨミが援護してくれる。



「ってことは、人工衛星の写真を解析して、ブラックボックス地域を探せば良いってことか?」

 

 リョウが自分の仕事を認識した瞬間だった。



ナナとホシヨミは良いコンビです。

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