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これは夢、夢なのだ。  作者: 椿 雅香
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現実(リアル)での対応

夢の中で非常識な活動をするせいか、ナナは現実リアルで疲れ切っています。でも、夢の中の活動のため、ジタバタします。

 夢の世界で進路の選択に失敗すること17回。

 これまで17回車が大破して、死にかけたところで目が覚めた。

 その都度、やり直して前回と違う選択し、無事にクリアして、少しずつ前進する。


 でも、夢でこんなふうに波瀾万丈だから、現実リアルではくたくただ。


 昨日、気がついて、名古屋から金沢までの地図をプリントアウトしてみた。


 研究室では、サークルの面々が備え付けの端末を操って例会で討論する行政法の勉強に勤しんでいるのに、その横で印刷した地図を睨んだ。



 ここ十数日、夢で走ったコースを赤ペンでなぞってみる。

 勉強している人たちの中で、一人だけ違うことをするのって勇気がいる。


 勉強しているように見えたら良いけど、やってることは、夢の中でやってる旅の下準備にすぎないのだ。



 最初に、道路が不通になってた箇所に×をつけた。

 まだまだ、これから先も増えるだろう。

 次に、私が選択ミスをした箇所に○をつける。

 で、これから先の進路を予想して、道路が寸断されている場合の迂回路の研究をした。

 つまり、人工衛星からの写真を呼び出して、ルートの確認をしたのだ。



 ふと気がついた。


 現時点でルートを研究しても、意味はないのだ。


 夢の世界は、未来だ。


 現在まだできてない道路ができているかもしれないし、道路のどこが壊れているのか分からない。

 だから、こんなことをするのは馬鹿げている。


 消耗しただけだ。


 しまいに疲れ切って、昼ご飯に誘われた頃には、やけくそになっていた。



 何をどうやっても、実際に走ってみなければ分からないのだ。

 出たとこ勝負で行くしかない。


 まあ、これだけやったんだから、また失敗しても、ホシヨミは許してくれるだろう。

 うん。許してくれるよ。

 あの人は、優しいから。




 誰か一人でも許してくれるというのは、救われる。

 そう、ホシヨミは分かっているのだ。


 私が選択ミスして、翌日やり直すとき、分かってますって感じで微笑んでくれるのだ。


 ホシヨミは、私がやり直すことを分かっている。

 分かっていて、ウチのチームと同行することを選んだのだ。


 私がやり直せば、ホシヨミのチームも結果的にはやり直すことができるから。


 何て人だろう。


 でも、ハンサムだから許す。




 イケメンは、何をしても許されるのだ。


 こんな私を、ミーハーと呼んでくれ。





 その週のサークルの例会が終わった後、五回生の竹村先輩にお茶に誘われた。

 暇だったし、断る理由もないから喫茶店でコーヒーをご一緒した。


 竹村先輩は、五回生の中では好きな方だ。

 背はさほど高くはないがかなりハンサムで、紳士的なところも好感が持てる。


 ただ、ホシヨミやナギを見た目では、なんか物足りない。

 でも、あれは夢の世界の人たちで、現実リアルの人間じゃない。

 現実では、こんなもんなんだろう。


 でも、夢の中じゃなく、現実でこんなシチュエーションに遭遇するなんて。ちょっぴり嬉しい。


 竹村先輩の目に熱があるように見えて、窓に映る自分の顔が、女の子らしく上気しているのに気が付いた。

 

 上手く行けば、恋ができるかも。

 

 そう思ったとき、竹村先輩が地雷を踏んだ。


 私が窓に映る自分の顔に見とれている、と言ったのだ。


 そう、私は、自分がそういう顔をすることを知らなかった。

 この日初めて気が付いたのだ。


 不思議な感覚だった。


 初恋の彼とデートしたときも、自分が女の子だという実感が湧かなかった。

 彼のことは好きだったのに。


 私にとって、私はあくまでも私だった。

 極論すれば、男でも女でもない私という個だ。

 他の誰でもない存在で、それは男とか女とか分類されるものじゃない。


 私は、自分の足で立っていた。

 

 そうして、このまま、先が見えない時代を一人で生きていこうと思っていた。

 誰にも依存しないで、自分だけを頼みとして生きて行く。


 だからこそ、藤島先輩や六回生たちとも対等に付き合える、と信じていた。




 一瞬で目が覚めて、割り勘して帰った。


 やっぱり、例会の後は、甘味屋でぜんざいを食べるのが良い。

 その日あったことやこれからのことを、やわらかい甘さに包んで、静かに胃に納めるのだ。

 それは、一人でやることであって、他の人は要らない。

 邪魔なだけだ。





ナナは、自立したい女なのです。

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