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これは夢、夢なのだ。  作者: 椿 雅香
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ホシヨミの話

ナナは、夢で会った超イケメンのホシヨミから話を聞きます。


 男は、ホシヨミと名乗り、充電器の礼を言った。


 姿ばかりか、その所作も流れるように美しい。


 口を開けて惚けたように見とれることしかできない私は、きっと馬鹿に見えただろう。


 ホシヨミは5号車のチームリーダーで、あのとき、別のチームリーダーと対応策を検討していたため会えなかった、と残念そうに言った。


 こっちこそ、こんな男前と会えたら眼福だ。


 昨日会えなくても、今朝会えたのだから、充分だ。

 これからだって、また会えるだろうし。



 そう思ったとき、ホシヨミは、とんでもないことを口にした。


「あなたは、良い相をしていらっしゃる。

 占いでは、このミッションが今回で終わると出たのですが、終わりにするのは、あなたかもしれませんね」

「占いって?」

「私は占い師なんです。人の相を読んだり、先のことを占ったりするんです。

 今回のミッションは、ご存じのとおり四回目なのですが、私の占いでは、今回でこの計画は終わると出ています」

「そんなこと、分かるんですか?」

「ええ、はっきり見えました。

 今朝、あなたにお会いして、あなたの力がとても強いのも分かりました。

 だから、このミッションを成功させるのは、多分、あなただろう、と」

 


 ナギやマリアをはじめ、側にいた連中が息をのんだ。


 何の取り柄もない私がこのミッションを成功させるなんて、そんなことがあるのだろうか?


 信じられなかった。


「でも、そんなことまで分かるなら、あなたこそ、成功するんじゃありませんか?」




 藤島先輩によれば、『丁寧の法則』というのがあって、丁寧な人間相手には、こっちも丁寧になってしまうものらしい。


 確かに、こんなきれいな人にこんなことを言われると、丁寧に応対してしまう。



「二人だけでお話ししたいことがあるのですが……」

 

 そう言われて、誰もいない談話室へと足を運んだ。



 見つめ合う二人。


 これがドラマか何かだったら、ロマンチックな展開になるのだろうが、生憎と登場人物の片割れが私じゃ、色気のある話にならない。


 うん。確かにならなかったんだ。



「誰にも言わないと、ウチのチームのメンバーにも言わないと、約束していただけますか?」

「何を?」

「黙って約束してください。そうすれば、お教えできることもある」


 ワケがわからず、ただ頷いた。


「約束します。誰にも言いません」


 満足そうに微笑んだホシヨミは小さな声で言った。


「私たちの車は、三日目、つまり明日ですが、水難によって消滅すると出ているのです。

 それによって、私たちは車を失います。

 車だけですめば良いのですが、ウチのチームには、死相が浮かんでいる者もいるのです。

 きっと、良くてリタイア。下手をすると、全滅することになるかもしれません」

「そんなことが分かっているなら、どうして、出発を遅らせるとか、別のルートをとるとかできないのですか?」

「定めなのです。

 私は被害が最小限ですむよう努力するだけです」

「そんな……」

「良いですか?」

 

 ホシヨミは、私の目を射るように見つめた。


「ご存じのように、宇宙にはたくさんの星があって、その一つ一つに命があります。太陽だって、将来的には命脈が尽きます。星は生まれ、育ち、そうして、最後は死ぬのです。

 太陽がそうである以上、この地球もいずれ生命の住めない星になるは定めなのです。

 地球の命が終わるのなんか、太陽が消滅するのに比べて些細なことです。

 それに抵抗して少しでも長く人類の生存期間を伸ばそうとするこのミッションは、計画それ自体、人類にとっては重要なものです。

 でも、それも、一時的なものでしかないのです。 

 私や私のチームのメンバーが命を落とすことも定めであって、時の流れの中で当然起こりうることなのです」

「じゃあ、何もせず、手をこまねいて終わりを待つとおっしゃるのですか?」

「いえ、何とかしようと努力するのは、この世に生を受けたものの使命でしょう。

 でも、流れに棹さすことはできません。それによって、定めを変えることも」

 


 この人の言ってることは正しい。



 でも、思いっきり切なくなった。




 終わりを見すえて生きる。

 普通の人間にできることじゃない。

 



 忘れよう。と思った。


 私のような普通の人間は、今聞いた話を聞かなかったことにした方が良い。

 そう、忘れた方が良いのだ。





ホシヨミの話は抹香臭いので、書いていて辛気臭くなります。

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