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これは夢、夢なのだ。  作者: 椿 雅香
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モテ期到来

夢の中で、ナナは充電器の取り扱い方法を知っていたことから、人生初のモテ期に入ります。


 翌朝、地下の駐車場へ行くと、充電中を示すオレンジ色のランプが消えていた。

 充電が完了したのだ。


 あれから、チームの充電担当に任じられた私は、コードを引き抜いて本体に納めた。

 他のチームの充電担当者が私の真似して作業を終え、一同そのまま食堂を目指す。


 他のチームの充電担当者は、みな愛想が良い。

 昨日からいろいろお世話になったとお礼を言われて、悪い気はしない。


 でも、朝ご飯を食べたら、また、車に缶詰だ。

 閉所恐怖症じゃないけど、いい加減、外の空気が吸いたい。


 何てったって、あのマリアが女王さましてる車だし、ギフティッドたちの見下した目線に痛いものがある。


 ドームの外の空気は薄いと聞くが、一体、どの程度のものなのだろう?

 

 高山病が予想されるらしいけど、試してみないと分かんないじゃない。

 そっと、窓の外を見た。

 っていうか、ドームの中からじゃ分かんない。フンだ。



 朝食は、洋食バイキング。


 昨日の朝食は、ハンバーガーだった。

 出発が早すぎたから、道中で食べたのだ。

 冷めてたせいか、あんまりおいしくなかった。

 あれしかないから、つまり給食みたいで仕方ないから食べたけど、車に閉じこめられた状態で食べるノルマみたいな食べ物がちゃんと消化できたかどうか疑問だ。

 で、昼も同じくハンバーガーの冷製で、夜にやっとまともなご飯にありついたのだ。

 普通の食事のありがたさが身に浸みた。

 って、夢だから味なんか分かんないけど。



 食堂へ着くと、昨夜の交流会の延長という感じで、あちこちに集まった面々が楽しそうにお喋りしていた。


 特に、ナギとマリアの周りに集団ができていて、集まった面々が思いっきりヨイショしていた。

 雑談しているというより、ご機嫌をとっているといった方が早い。


 持ち上げられる二人も大したもので、当然のような顔で受け流している。

 無駄にモテるのだ。

 

 ったく、嫌味ったらしいヤツ等だ。


 おかげで、レオは憮然としていたし、リョウは明後日の方向を見て素知らぬ振りを決め込んでいた。



 こういう人間模様は他人事ひとごとだと面白い。

 どうせこの夢から逃げられないのだ。それなりに楽しませていただくことにしよう。


 マリアとレオとナギの三角関係は非常に、そう、非常に(!)面白い。

 事実は小説より奇なりというが、テレビドラマも真っ青な展開だ。


 レオはマリアに気があるのに、マリアはナギに気があって、一方通行の関係なのだが、ナギに決まった相手がいない以上、マリアに望みがないわけでもなく、なかなか微妙なところだ。

 

 みんな頑張れ!

 っていうか、ナギに本命が決まるまで硬直状態なのだ。


 まあ、無難にナギとマリアがくっつくという選択肢もあるけど、どうせなら、もっと劇的な変化が欲しい。

 

 他人の不幸は蜜の味。

 若い頃の苦労は買ってでもしろって。

 

 ナギもマリアもレオも苦労をした方が良い。

 例えば、他のチームの美女とナギがくっついて、マリアが失恋してもレオを振って別の人に走るとか。


 リョウは、マリアのような派手な女に興味がないみたいだ。

 だからといって、地味な女に興味があるわけでもなく、どっちかというと二次元の世界に生息する女子が好きな人種、つまりオタクだ。



 そういえば、現実リアルの友人に二次元の男にしか興味のない女がいたっけ。

 あの子、男子に告られてたけど、結局どうなったんだろう?

 気の毒な男子の思いは無事に受け入れられたのだろうか?

 

 いずれにしろ、私の与り知らぬところだ。


 私はというと、周りの人間模様を楽しく観察させていただく傍観者だ。

 

 彼らの恋の行方がどうなるか。それを知るのが待ち遠しい。



 こんな私を根性悪と呼んでくれ。




 今朝になって知ったのだが、昨夜私が寝てから、いろいろあったらしい。


『いろいろ』というのは、それこそ『いろいろ』で、チームの枠を越えた横断的な交流があったようだ。

 つまり恋の花も咲いたらしい。

 咲くまでに至らなくても、それなりの思いが芽生えたらしい。


 

 

 ところで、この朝、驚くべきことが起きた。


 生まれて初めてモテるという経験をしたのだ。

 っていうか、信じらんない。


 だって、このワタシが、だよ。


 驚いたってもんじゃなかった。



 地下の駐車場からゾロゾロついてきた他のチームの充電担当者や、他のメンバーから、旧式の充電器の使用方法を知っていたということで、思いっきりチヤホヤされたのだ。


「昨日は、お世話になったね。あの後お礼がてら一緒に飲もうと思ったのに、早くに部屋へ戻ったんだってね。残念だったよ」

「ナギは良いメンバーに恵まれて、本当に羨ましいよ」

「充電器の使用方法を知ってたって聞いて、どんな凄い人かと思ったけど、こんな可愛いお嬢さんだったんだね」


 歯の浮くようなお世辞。


 これで浮かれないなら、よっぽどできた人間だ。

 

 どうしても、頬が緩んでしまう。体が宙に浮かばなかったのが奇跡だ。


「いえいえ、たまたま知ってただけで大したことありません」

 でも私にだって、常識ぐらいあるんだ。


 恐縮すると、そんなに謙遜しないで、謙遜も過ぎると嫌味になる、と諭される。


 たかだか充電器ごときで、こんなに褒めてもらって良いのだろうか?

 でも、気分が良いのは確かだ。うん。

 

 少し離れたところにいるマリアが白雪姫の魔女のような目つきで睨んでいるのを見ると、ますます良い気分になった。


 ザマあ。



 こんな私を性悪女と呼んでくれ。

 



 たくさんの人にチヤホヤされ、いくらなんでも、いい加減通常モードに戻さないとヤバイと思ったとき、髪の長い青年が現れた。

 


 信じられないほど、美しい人だった。男に『美しい』ってどうかと思うけど、それ以外の言葉が見つからないのだ。


 ナギと同じぐらいの身長なのに、ナギより背が高く感じられるのは、そのほっそりした体型のせいだ。歩くたびにサラサラ揺れるストレートヘア。

 腰のあたりまであるそれは、男の長髪が嫌いな私にも好ましく思えた。


 ほら、男の長髪って、気障っぽかったり、むさ苦しかったりするじゃない。だから、大嫌いなんだ。

 

 でも、この人の場合、次元が違った。


 女でもこれほど綺麗な髪を見たことがない。


 

 長い睫毛に縁取られた切れ長の目は、ぞくりとするような艶がある。

 すっきり通った鼻筋、少し薄めの唇。


 ボーイズラブなら、押し倒されるタイプ。腐女子の皆さんが涎を垂らしそうな良い男だ。

 

 こんな美しい男の人がいるなんて。


 ハンサムだと思ってたナギが普通に見えた。


 いや、男前が揃っている現実リアルの六回生たちだって、霞んで見えた。



ナナの相手役(予定)登場。凡人の相手が超イケメンって、超美味しいシチュエーションです。

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