新しい生
―――アイーシャ歴68年 2月19日―――
「ん、ここは、いや、そういうことか。どうやら成功したみたいだな異世界転移とやらを。まぁ我にとっては当たり前だがな。」
自意識過剰!みたいだがそれは間違いでこの魔王、いや元魔王は生きてきてこの方失敗という言葉を知らないのだ。
「さて、ここからどうするか。何も考えてなかったな。ふむ、というか、この体、若返っているな。ならこの話し方も直さねばならぬな。して、ここからどうするか。この森から抜けるのが先か、、ふむ我に刃向かうものがこの森に居るのか。いやはややはり新しい世界というのは面白そうなものよ。」少し先から殺気を飛ばしながら歩いてくるではないか。ここのヌシとやらか?撫でてやろう。と、まぁ傲慢が過ぎる魔王様だった。
「さて、初めての魔物刈りか?魔物かは知らんが、ふはは、やはり翔んで政界だったな。」椅子替わりにしていた石から腰を上げ、思ったよりも自分が前よりも軽いことに驚いていた。
「ほぉ、大きさはまずまずだな。だがその涎はなんとかして欲しいところだが、通じぬか。」
「グオォオォオオ!!!」
「仕方あるまい。さて、どんなものやら。『ファイア』」
「ガァァァァァァァァ!!!.」
「ふむ、弱いな。しかしこの世界でも魔法は使える。そして我は前よりも強い!これはなんとも嬉しいものだ。しかし、初級魔法で死ぬとは、この森のヌシもなかなか情けないものよ。」情けないとは、こんな世界に初級魔法で森を半焼させる奴がおる事がおかしい。森のヌシも涙目だ。
「しかし、これからどうするか、このまま強くなるのも良いが。新しい生、人と戯れるのもまた一興。そうだな、この世界には"学校"は在るのか。その為にも、とりあえずは町にでも行かなければならぬな。よし『サーチ』ふむ、あれは恐らく盗賊とやらだな。襲われる方が悪い、とはいえ助けれるものなら助けようではないか。ふむ、少し急ぐか。」
「くっ、こんな辺境に居るとか聞いてねえぞ!」
「知らないわよ!ッ!」
「おい大丈夫か!くそっこのままじゃちょっとやべぇな」
「あと、2分、いや1分と30秒という所か。いやはや危ないところだった。」
「お、おい!そこのやつ!お前冒険者だろ?ちょっと手伝ってくれ!」
「了解した。では、助けてやろう。ふむ、次は体術といこうか。素手だが何とかなるだろう。」そして蹂躙した。敵は10人くらい居た。まず一人目に超速の膝蹴りそして2人目はそのまま一人目と共に飛んで行った。三人目、四人目、五人目は回し蹴りで顎を掠め、気絶。六、七、八、九、十人目は最初に六の剣をとり振り向きざまに7を袈裟斬り、そして逆手に持ち替え、振り向いて六の心臓を突き、七の剣を避けつつ八を斬り、八の剣を取り七、九、十を斬った。
「おぉ、助かったぜ。礼を言う。」
「ああ、まぁ大したことはしておらぬがな。」
「ははっあんた古臭い喋り方するねぇ?」
「ふむ、やはりそうか。」
「もう少し年相応の話し方にしときな!その方が好かれるってもんだぜ?」
「ほう、、えーとなら僕、いや、俺はラーグだ!よろしくな!」
「おう!そっちのがいいぜ。俺ぁキースでこのパーティのリーダーだな。」
「私はベティよ。気軽にベティって呼んでね!」
「俺はジン!まぁこの中で一番歳上だな!よろしく頼む!」それぞれ右から順に自己紹介してくれた。キースはガタイがよく、まぁイケメンだな。ベティはなんとも綺麗な顔立ちをしている。美人だ。ジンはいつも酒場で飲んでるようなおっさんみたいな顔立ちだ。と、頭の中でひとりにだけ失礼なことを言ってると
「ありがとうございます。冒険者様かな?私はこの馬車の商品を届けるために来ているのですが。もし宜しければ町まで護衛して頂けませんか?」
「冒険者ではないんですが、こちらこそお願いします!キースさん護衛の途中で少し教えて欲しいことがあります。」
「キースでいいぜ、しかしラーグお前冒険者じゃなかったのか。」
「ありがとう。ああ、気がついたら森の中でな。この世界のことをなんにも知らねぇから教えてくれ!」
「おいおい森って迷いの森じゃねぇだろうな?まぁいい俺が色々教授してやろうじゃねえか!」
「ありがとうございます!!」
そう、俺はこの設定でこの新しい生を生きようと思う。キース、いい人でよかった。