僕がちびマになった日の話~その3
全部で3話です。
僕がちびマになった日の話~その3
「この子の具合はどうだ?」
「……………何日も飲み食いしてなかったみたいだわ………」
「地上で育てろと言われたが、聖域で少し養生してからの方がよさそうだな」
「そうね。とりあえずお水だけでも飲ませてあげないと」
お水………
欲しい。
「自力で飲めそうもないな」
「そんな体力も残ってないのね………」
お水…。
僕の口に軟らかい物が触った。
何だろう?とっても気持ちが良い。
暖かい物が口の中に流れてきて喉を通っていく。
お水!
頑張ってゴックンって飲んだ。
軟らかい物が離れてまたすぐ触れて………
ゴックンゴックンって飲んだ。
「良い子ね。少しだけお休みなさい」
優しい女の人の声に僕は安心して眠った。
「寝たか?」
「ええ。体の傷は回復魔法で治せるけど、心の傷は………」
「大丈夫さ。俺達の子供なんだから」
「そうね。愛しているわ。私達の可愛い坊や」
「さぁ聖域へ戻ろう」
う、う~ん…………
なんだろう眩しい?
「坊や。目が覚めた?重湯を作ったから食べましょうね」
おもゆ?
体を起こされて口の中に流しこまれた物は、初めて食べる物だったけどおいしい。
「しばらくは重湯で我慢してね。元気になったらもっと色んな物を一緒に食べましょうね」
一緒に?
ママは一人で食べろって言ったよ。
「そうなの?でもマァマは坊やと一緒に食べたいわ」
「パァパも坊主と一緒に食べたいな」
坊や?坊主?
僕の事?
「ああ、名前がないと地上で生活する時に不便だな」
「そういえばそうね。私達も仮の名前がないと」
「だな……………面倒だから俺は『あかマ』で」
「どこから出てきたの?」
「えっ?赤い服着た魔法剣士。だから略して『あかマ』」
「………酷い略し方ね」
クスクスって笑ってるのはマァマ?
「それじゃ私は白い服を着た魔法使いで『しろマ』って名乗ろうかしら?」
「いいね。坊主の真名は我が君に頼んで預かって貰っているから、同じように仮の名前を付けないとな」
「そうね。なんて名前にしましょうか。私達の小さくて可愛い魔法使いの坊やにぴったりな名前を考えないとね」
小さくて可愛い魔法使い?
「…………小さい………ちびだから『ちびマ』はどうだ?」
「大きくなったら恨まれそうな名前ね」
「あ~………んじゃ」
ちびマ?
僕のお名前?
パァパのお名前の『あかマ』とマァマのお名前の『しろマ』とおんなじお名前が入るの?
嬉しいな僕のお名前『ちびマ』♪
「おっ!気に入ったみたいだ」
「まぁ。本人がいいなら。新米のマァマだけど、よろしくね。可愛い坊や『ちびマ』」
「同じく新米のパァパだけど、よろしくな『ちびマ』」
うん♪
こうして僕はこの日から『ちびマ』になって、大好きなパァパとマァマの子供になった。