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ちびマの冒険  作者: 秋野空
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僕、誘拐されちゃったの話~オマケ

僕、誘拐されちゃったの話~オマケ



ロザリンドside


目を開けると今日もまた薄暗い牢獄のような部屋。

私はあと何年、生きていられるのかしら?


お父様に顔だけはそっくりなあの男と、私にそっくりなあの女。


どんなに姿形が似ていても品性だけはマネ出来ないようね。


男は来る度に指輪を寄越せとわめきたて、女は色合いが派手で露出が激しいドレスに下品としか言い様のない化粧を施し「素敵でしょ?これで夜会に出て王子様を虜にしてみせるわ。そして私が王妃になるのよ♪」等とあり得ない妄想を吐き出していく。


王子様が出る夜会に招待されるほど、我が家は格が高くないし、何かの奇跡でもおこって招待されたとしても、その姿だと門前払いだと思うわ。


あえて指摘はしないけど。








案の定、夜会で恥をかいた。

王子様が来なかったと私をなじりにやってくる。


私のせい?そんな訳ないでしょう。


貴族といっても我が家は子爵。

それもたかだか3代続いただけの下級貴族。


王族が出席する夜会やお茶会に招待されるなんて天地が裂けてもあり得ない。


武勲をたてるとか、国にとって有益な産業を興したりすれば、まぁお声ぐらいはかけてくださるかもしれないけれど…………


無理ね。









今日で食事を抜かれて何日目かしら?


固い黒パン一つの食事を待ちわびる。


初めは抵抗のあった洗面台の水を飲むのも、餓えと渇きにはかなわなかった。


本当にあと何年、私は生きていられるのかしら?


これが物語なら白馬に乗った王子様が助けに来てくれるのに。



嫌だわ。

そんなあり得ない妄想に浸るしかないなんて。


でもたとえ助けが来なくても自ら死を選ぶ事も、狂う事もゴメンだわ!


そんな彼等を喜ばせる行為をするぐらいなら、飢え死にした方がマシよ。


そんな自暴自棄に陥っていたあの日に聞こえた、優しい声。


私を助けに来てくれたのは王子様ではなく天使様?


顔をローブのフードですっぽり隠して、見せては頂けなかったけれど心に染み入る優しい声。


その腕に抱かれた子供もたどたどしい言葉で私を慰めてくれる。


生きていて良かった。


今日という日の訪れを感謝します。


名を奪われし女神様。







ジークフリードside



領地の一つで何やらよくない事が起きているようだから、牽制がてら視察してこいと親父に言われて王都で出たくもない夜会に強制参加させられるよりはマシと騎士学校で気のあった友と二人で、この町ミゼルへやって来た。


下級ダンジョンが幾つかあるだけで、さして面白味のない町。


そこそこ規模がでかいのは今は名を奪われた女神と言われている、この世界を造った真の女神ミュールフェリス様の本神殿があったからだ。


俺の家は先祖にミュールフェリス様の神官がいたからかアトールとかいう胡散臭い神が信仰されるようになっても、女神様の名を忘れる事なく代々伝えてきた。


まぁこの国も元はフェリス聖王国って名前だったらしいが、アトール信仰が盛んになった300年ぐらい前に『アトールの使徒』って奴に完膚なきまでにやられて当時、神職に就いてた者は全員殺され、国名も聖王国が無くなってフェリスになった。


王族はアトールの僕となる事で辛うじて生き延びたが、ミュールフェリス様への信仰を捨てる事はなかった。


いつか必ず真の女神の使徒が現れて、この世界を救ってくれる。

それまでは我慢の時だと。

敵を欺く為に国中にあった女神様の神像を王城の地下深くに隠し封印。


俺の一族がその封印の護り手となった。


本神殿があった町だっただけに、よく見ると町のあっちこっちにさりげなく女神様らしき姿が彫られている。


神像と違って目立たないからアトールの神官も気づいていないようだが、その彫り物の前を通る時にみなこっそり祈りを捧げている。


ミュールフェリス様への祈りはアトールの神官が行う仰々しい祈りと違って簡単だ。


利き手を胸の前に持ってきて下ろす。

ただそれだけ。

頭を下げる事もしない。


たったそれだけの動作が女神ミュールフェリス様への祈りとなる。


そんな何気ない動作だからこそ信者とは気づかれないのだろう。


それにしても日照りが続いて作物の収穫が悪い。


この町は近くにある下級ダンジョンから辛うじて水の魔石が出るから、まだマシみたいだが水不足を解消する為に水魔法使いを各地に派遣するとか聞いたような気がするが国土を潤す程の魔法使い等、居るわけがない。


一族の口伝にある天狐ならそんな魔法も使えるのかね?


等とツラツラと考えていても苛立ちは募る。



クソッタレ!


油断をしたとは思わないが、まさか友だと思っていた奴に裏切られるとはな!!


アイツの女癖と趣味が悪いのは知っていたが、まさかあそこまでとは………


どう見繕っても同い年に見えないケバい化粧に、本人よりもデザイナーの感性を疑いたくなる下品なドレス。


あんな女におちて俺を売るってバカか?!


バカなんだろうな。


逃げ出そうにも武器がない。

おまけに別の部屋に捕まっている子供達がいるようだ。


敵の人数もハッキリしないから動くに動けない。


どうすりゃいいのかね?


兄貴と違って考えるのは苦手なんだよ。


白馬に乗った王子様でも助けに来てくれないかね?







いかん!


現実逃避にも程があるだろうが!


まぁそのすぐ後に白馬に乗った王子様ではなく、フードで顔を隠した魔法使いの親子に助けられるとは思わなかったけどな。








もろもろが終わって報告の為に一旦、王都へ。


パーティー名『銀狐ファミリー』のおかげで、ミゼルに蔓延っていた違法奴隷商と裏オークションは壊滅した。


あの夫婦の息子を一瞬でも拐われた恨みは思い出すだけでも恐ろしい!


息子のちびマが諌めてくれたおかげで、犯人達の命が延びたようなものだ。


そんな事も含めて報告してたら親父にはため息をつかれ、第二王子には盛大に笑われた。


解せぬ。


ロザリンド嬢の親族がおこした事件とはいえ、彼女も被害者の一人には違いないと言うことで無罪放免。





まさか後日、親父の命令でロザリンド嬢の見舞いに行って彼女に一目惚れするとは思わなかったが

………


「我が家は子爵家ですので………その……」

「家格で無理強いするつもりはない」


格下の家だろうと俺は次男で、兄貴とは年も離れていてすでに跡継ぎの息子もいるから問題ない!


「お兄ちゃ………ガンバ!………骨、拾う」


ちびマ。

それはあれか?

玉砕しても骨は拾うってやつか?!


縁起でもないこというなよ!


女神ミュールフェリス様に誓って俺はこの恋を成就させてみせる!


「………ガンバ………」


おう!頑張るぜ!!




ちびマside



お兄ちゃんの押して押して押しまくる作戦で、少しずつお姉ちゃんに笑顔が戻ってきた。


だってお兄ちゃん顔は間違いなくいいのに、女心が分からないというかアプローチの仕方が変というか…………


自分のお買い得情報を売り込めば大丈夫って言われた?


誰?お兄ちゃんに変な事、教えた人は!?


まぁでもそれにのってあげようかな。

(((*≧艸≦)ププッ


「お姉ちゃ………お兄ちゃ、すすめ」

「えっと………」

「お奨めですって。私もお二人はお似合いだと思いますよ」

「そ、そんなジーク様と私なんか」

「なんか、いっちゃメ」


大丈夫だよ♪


だってお姉ちゃんとお兄ちゃんが結ばれるのを、女神しゃまが応援してるから。


これから先、どんな困難も乗り越えていけるよ。


僕達も応援するからね♪





……………side



その後、二人は結婚して沢山の子供に囲まれて生涯幸せに暮らしました。


仲睦まじい二人は死ぬときも一緒で最期の言葉も同じ。


「女神様、天狐様との出会いに感謝します」


二人の言葉に立派な天狐の青年となった、かつてちびマと呼ばれた青年は喜び


「ロザリンドお姉ちゃん。ジークフリードお兄ちゃん。僕も二人に感謝してるよ。女神しゃまの元でゆっくり休んでね」


二人の魂に祝福を送るのでした。


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