初めての冒険者ギルドの話~その7
初めての冒険者ギルドの話~その7
隊長さん。
ミドランドさんと一緒に冒険者ギルドに行くことになった。
紹介状よりも確実だからって言ってたけど、お仕事大丈夫なのかな?
「わざわざ申し訳ない」
「いえいえ。これも仕事のうちですよ。受付嬢に少々、困った娘がいてね。人の話しは聞かない。自分の意見は針の穴でも通すって娘でね」
針の穴?
それってどんなに小さくて無理でも自分の意見を曲げずに押し込むってこと?
うわー会いたくない。
「マァマ」
「大丈夫よ。いざとなったらパァパに押し付けるから」
「いやそこ、大丈夫じゃないから」
「力関係は奥さんの方が?」
「……………惚れた弱みで………」
「なるほど。家と同じですな」
「夫婦円満の秘訣だとか言いますしね」
「それは知りませんで」
パァパと隊長さん。
コソコソ喋ってるつもりでも僕とマァマのお耳には、よく聞こえてるよ。
まぁパァパは分かってやってるみたいだけど。
初めて見た冒険者ギルドは他の建物よりも大きくてズドーンって感じな建物だった。
「ズドーン………プッ……」
あ、癖で念話しちゃった。
「どうか?」
「ああ、いえお気になさらず」
しょうがないでしょ。
聖域のお家しか見たことないんだもん。
「ギルドマスターはいるかな?」
「ええ。呼んで「ミドランド様♪」出たよ」
うわー!!オバケ!!!
「こあい!!」
「化粧オバケもいきすぎると化け物だな」
「ミドランド様♪嬉しい私に会いに来てくださるなんて」
「ギルドマスターを」
「ただ今、すぐに」
「あーん………ミドランド様ったら私が美しすぎて眩しいからって、あからさまにそっぽ向いたりして………ウフッ可愛い」
怖い。怖い。怖いよー。
((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
「マァマも怖いわ」
「パァパも痛すぎて怖い」
あまりの怖さにマァマにしがみついて震えてたら、パァパも来てマァマにしがみついて一緒に震えてた。
うん。パァパ。お声がニヤニヤしてるから怖いの嘘でしょ。
えっ?人前で堂々とマァマを抱き締めるチャンス?
パァパ。そんなことわざわざ念話でいってこなくても…………
あ、マァマがパァパの足を蹴っ飛ばした。
たしかそこ一番、痛いとこだよね?
んとなんていったけ?
そうそう『弁慶の泣き所』
弁慶さんのように強い人でも、そこを蹴られると泣いちゃうっていうとこから付いたんだよね。
ところで弁慶さんってだあれ?
「騒がしいと思ったら何のようだ?ミドランド」
「その前にこの受付嬢なんとかしてくれんか?」
「ああ。ローランド。あれどうにかしろ」
「なんで俺が………いい加減にしろウル!お前の仕事は解体に変わったろうが、受付にいるのは服務規程違反だぞ。今すぐ業務に戻らないとクビにするぞ……………と、ギルマスが言ってます」
「そんな酷い!みんなして私を虐めて酷い!酷いわ」
「………酷いのはお前の頭だ」
ワンワン泣きながら、女の人は別のお部屋へ走っていった。
でも涙も出てなかったし小さい声だったけど「好感度上昇ね。ヒロインって辛いわ」とか言ってたから嘘泣き間違いなし。
「…………好感度?上昇どころか下落の間違いだろう」
うん。僕もそう思う。
「助かった。すまんなローランド」
「いえ。こちらこそいつも痛いヤツがスイマセン」
「出来たらクビにしたいんだがな………」
「止めてくれ!野に放たれた方が迷惑だ」
「そうなんだよ。町中から言われててな」
「町中でもあれやってるのか?」
「この間、行商に来てた若い男に付きまとって、運命の恋とかなんとか叫んでたらしい」
「うわー………出来ることなら投獄してやりたい」
「きっと町の人、全員そう思ってますよ」
痛い!痛すぎるよ元受付嬢さん!!
「で、何のようだ?」
「すまんがここでは言えん。個室いいか?」
「…………後ろの3人の関係か?俺の部屋へ来い。茶ぐらいは出す」
「そりゃ破格だ。今までお茶の一杯も出たことないからな」
「うるせー!毎回、毎回アイツと違うやっかいごと持ってくる癖に文句言うな」
「今回のは不可抗力ってやつだ。まぁ事情知ったらお前だって納得するさ」
「そうかよ」
ギルマスさんのお部屋に着いて、さっきとは違うお姉さんがお茶を煎れてくれて下がったのを確認してから、隊長さんはお部屋の鍵をかけた。
「をい!」
「話の途中で入って来られたら困るんだよ」
「ついでに防音・防諜の結界張ってもよろしいですか?」
「は?」
「…………部屋の外………聞き耳たててる方が」
「んだと?うちの職員を疑うのか!?」
「疑ってるのではなく、事実を言ってます。耳が良いので、よく聞こえるんですよ」
「狐人ってそんなに耳が良いのか?」
「狐人!?………なら聞こえるかもな。前に他の獣人の冒険者もこの部屋の扉とか壁ぐらいの厚さなら外の音もよく聞こえると言ってたしな………」
「………このギルドに獣人の職員は?」
「あー………兎人がこないだ入った。まだ研修中でもっぱら裏方だがな」
「………隣の部屋で作業してませんか?」
「どうだったかな?」
「ちょっと失礼」
パァパはギルマスさんと隊長さんに動かないように身ぶりで示して足音殺してお隣の部屋の壁の前に立ってから耳を塞ぐようにってまた身ぶりで示す。
みんながお耳塞いだのを確認してからお指をパッチンってすると大きな音を出すだけの魔法が、お部屋中に響いた。
「ンギャー!」
「い、今のは………」
「部屋の外には聞こえないように調節したので、壁に耳でも当ててない限りは無害な音だけが大きな魔法です」
「ちょっと失礼する」
ギルマスさんと隊長さんが慌ててお隣の部屋に。
「………兎人さん。変な叫び」
「声からして女性のように聞こえたけど…………違うのかしら?」
「どっちでもいいさ。お、このお茶以外に旨い」
「あら本当。あとでどこで買ったのか聞いてみましょう」
僕の前にはお茶の代わりにジュースが置いてあるんだけど………
「パァパ」
「ん?ああ。冷した方が旨そうだな」
僕が渡したコップを持つとすぐに僕の言いたい事が分かったみたいで、コップごとジュースを冷してくれた。
「氷入れると味が薄くなるからコップごと冷してみたけど、どうだ?」
「おーしー」
「そうか。それはよかった」
喉が渇いてたみたい。
冷えたジュースが美味しくてゴクゴク飲んでたらお茶を煎れてくれたお姉さんが新しいお茶とジュースを持ってきてくれた。
「すいません。ちょっと不手際がありまして……もう少しお待ちください」
「大丈夫ですよ。事情は分かってますから」
「ありがとうございます」
「あの。そろそろお昼になるので子供だけでもここで食事させても大丈夫ですか?」
「あ!そうですね。大丈夫だと思いますがギルマスに確認してきますので少々、お待ちください」
「おそれいります」
あれからどのぐらいの時間がたったのかな?
僕がマァマのお膝に座ってサンドイッチをモグモグしてたら、やっとギルマスさんと隊長さんが戻ってきた。
二人して僕を見て仕方ないなぁ~みたいなお顔してるけど、言っとくけどテーブル高くて届かないからマァマのお膝に座ってるだけだからね。
甘えん坊じゃないからね。
「申し訳なかった。ついでに助かった」
「いえいえ。こちらとしても秘密を知る人を増やしたくはないので、お互い様ということで」
「そうしてくれると助かる」
「…………魔法、使っても?」
「もちろん」
パァパがお指をパッチンするとお部屋中がキラキラして結界が張られた。
「………結界って光るモノか?」
「分かりやすい様に視覚に訴えるタイプを使用しました」
「そんなタイプがあるんだな………知らなかった」
「オリジナルですから」
「そりゃ凄い」
これは前に僕が結界に気づかなくって勢いよくぶつかってポーンって飛ばされちゃったことがあったから作った魔法。
パァパの張る結界はぶつかると反発して、弾き飛ばすタイプだからポーンって飛ばされた僕は聖域のお外まで飛んじゃって、慌てたマァマが聖域の植物にお願いして僕を蔦でグルグル巻きにして助けてくれたの。
あのときは飛ばされたのにもビックリしたけど、蔦でグルグル巻きにされたのにもビックリした。
でもビックリが収まったら面白くって、もう一回って言ったらパァパとマァマに絶対、ダメって怒られちゃった。
でもね。後からこっそりパァパが地上に行ったら結界使わずにポーンしてくれるって約束してくれたの。
結界使わないポーンって何かな?
今から楽しみ♪




