第六話 派遣艦隊
今回ちょっと短めです。
クリスマス企画やろうと思ったけどやれなかった…正月はやろうかな。
「一斉撃ち方よーい…てーぇっ!」
…ッドオォォォン!!
左に向けられた『高雄』の3基の20.3センチ連装砲が、菅谷一正の号令と共に火を吹き、雷のような砲撃音を響かせる。
さらに、後方からも同様の砲撃音が響く。
「弾ちゃーく…今!」
『2発命中!一隻撃沈!』
ウィストレル皇国海洋安全管理局所属の重巡洋艦、『高雄』以下三隻は、領海近辺で戦闘中の艦隊を抑えるために、砲撃を行っていた。
艦隊を捕捉してからは既に二時間が経過していて、お互いが視認できるほどに接近している。
相手側も時々大砲らしきものを発砲しているが、全く届いてはいなかった。
そんな中でも『高雄』率いる四隻の巡洋艦は砲撃を続けていて、それにより、相手は当初の七十隻程度から二十隻程度にまで数を減らしていた。
「次発より、全門自由撃ちー方始めぇー!ってぇー!」
…ッドッドドォォォン!!ドドオォォォン!!ドドッドオォォォン!!
そして再び、容赦なく砲弾が相手に降り注ぐ。
降り注いだ砲弾は敵を蹂躙し、大きな水柱を立てる。
同時に、火柱を上げ二隻が沈む。
『敵艦隊、残存十五隻!』
「砲撃やめ!」
十五隻にまで減ったところで、一旦砲撃を停止する。
『…こちら左弦見張りデッキ!目標が白旗をあげています!投降するものかと思われます!』
「…よし、じゃあ、『そうりゅう』からヘリ回してもらって。」
『…『そうりゅう』より入電。既にシーホーク三機を回してくれたそうです。それと、二水戦が到着しました。』
「『そうりゅう』はともかく、二水戦はなんでそんな遅いのよ…」
『問い詰めますか?』
「…ううん、今は止めとくわ。陸でやる。」
『ハハッ…了解。』
こうして、異世界初の砲撃戦は終了した。
空にはヘリが飛び、既に日もくれ始めていた…
西暦2102年12月6日のことだった。
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「そうか。無事終わったか…」
俺は昨日の戦闘の結果を、執務室で聞いていた。
報告を終えた部下が退室したタイミングで、副総統から話し掛けられた。
「…無事に終わりましたね。」
「…ああ、そうだな。」
結論から言うと、戦闘はこちらの圧勝だった。
しかし、まさか敵味方で戦争の最中だったとは…近衛騎士団の副団長を名乗る人物(女性)も報告を聞く限りはいたみたいな感じだし…
「しかし…これは、これから大変になってくるかもなぁ…」
「ですね…特に外務省あたりが。」
「だな…取り敢えず、報告にあった…は、ハルヴィア帝国だっけ?あと…アルセイア王国?にも接触を図らないとな…」
「しかし…どうやって接触しますか?やはり…艦隊を?」
「…まぁ、それしかないわな。適当に艦を見繕うか…」
「わかりました。こちらでやっておきます。」
「ああ、頼む。それと…」
「はい?」
「派遣の口実は…そうだな…捕虜の返還にしておいてくれ。」
「わかりました。では、そのように。」
そう言うと、鈴ヶ谷副総統は退出していく。
「…すげー今更だけど…副総統のやってる事、まるで秘書じゃないか?」
…一人残された執務室で、俺はそんなことを呟いていた。
そして、数日後、遂に艦隊が派遣されることになった。
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佐世保港────
国防海軍、第二艦隊の定係港であり長い歴史を持つ軍港、佐世保には現在、第二艦隊に所属しない艦艇が何隻も停泊していた。
その理由は、先の戦闘に関わっていた国に接触するため、派遣される艦隊を構成する艦が続々と集まってきていたからである。
ちなみにその艦隊の編成は
・旗艦 原子力空母『あまぎ』
・ミサイル戦艦『金剛』
・ミサイル戦艦『比叡』
・イージス巡洋艦『たかお』
・イージス巡洋艦『あたご』
・イージス駆逐艦『シャイロー』
・イージス駆逐艦『ジョン・S・マケイン』
・イージス駆逐艦『コール』
・汎用駆逐艦『しらゆき』
・汎用駆逐艦『はつゆき』
・汎用駆逐艦『さみだれ』
・汎用駆逐艦『おきなみ』
・輸送補給艦『みすみ』
・輸送補給艦『はしだて』
・原子力潜水艦『伊28』
・原子力潜水艦『サンフランシスコ』
という些か過剰とも言える戦力だった。
だが当初は第七艦隊所属のミサイル戦艦『ノースカロライナ』や『ウィスコンシン』、果ては『モンタナ』や『大和』、『紀伊』なんてのも参加させようという話になりかけていたのだから、まだ抑えられたほうだろう。
また、MCF搭載母艦である『アマテラス』や『タケミカヅチ』、『アヴァロン』なども検討されたが、「下手に国交のない他国にMCFなどの強力な兵器を見せるべきではない」との意見が多く上がったため、却下された。
そして、12月11日。ついに艦隊は出航した。
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一方執務室では…
「さて…今回の件がどんなふうに転ぶかな…楽しみだ。」
総悟はほくそ笑んでいた。
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「暇だね…」
「ですね…」
一方、出港した派遣艦隊の旗艦、原子力空母『あまぎ』艦橋では、ゆるーい空気が漂っていた。
「…失礼します。定時報告です。各艦ともにレーダーに反応なしだそうです。」
「あーい、分かったよ。…持ち場に戻っていいよ。」
「はっ。失礼します。」
ゆるーい空気が漂わせているのは、派遣艦隊司令の浦地 翔二等海将と、『かつらぎ』艦長の五十子 玲音一等海佐だ。
彼は報告に来た士官を下げると、再び前に向き直る。
既に出港からは5日が経過しており、その間なんのアクシデントもなく艦隊は航行していた。
だが、騒がしいもの好きな彼らからすれば、それはただ退屈なだけだった。
「事前情報が確かなら、そろそろ陸地の反応が出るはずなんだけどね…」
彼らは事前情報でもうそろそろ陸地のに到達することを知っていたが、まだ少しレーダーの索敵範囲外であったため、まだ補足できていなかった。
「E-2Cからも報告なしですね…『こちらFIC。E-2Cより報告です。600km先に陸地を確認したとのこと。』…言ったそばからかい。」
「ま、見つかってよかったよ。取り敢えず陸地に向かおうか。」
「ですね。」
ついに艦隊は陸地を見つけ、その数時間後、艦隊はアルセイア王国の港に入港したのだった…
いかがでしたか?
私は受験で忙しくなってまいりました。
年末年始は忙しく、体調を崩すことのないように、お気をつけください。
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