第十六話 シエラル沖事件
すいませんでした(土下座)
本来八月末か九月の初めにはあげるつもりだった第十六話を半月以上たってやっとあげるというこの暴挙。
ぶっちゃけMOAB何発ぶち込まれようが何されようが受け止めるぐらいの気持ちです。
本当に申し訳ありませんでした(土下座)
それでは本編を…どうぞ!
(スランプの中でかなり無理やり書いたのでのであまり質はよろしくありません)
向かい合ったふたりの少年は、どちらも相手を睨みつけていた。
いや、ダダ睨みつけていると言うには語弊がある。
片方…冷峰は少し恨みを込めた目で、総悟は比較的余裕を持ったような目で相手を睨みつける。
膠着したにらみ合いを終結させたのは、冷峰の斜め後ろにいた弥生だ。
彼女は両者に目線を向かわせながら、ゆっくりと口を開いた。
「蒼月君。君は今、何をやっているんだい?」
「…何を、とは?」
怪訝な表情を作りながら問い返す。
本当は総悟にも、弥生が言いたいことはわかっている。だが、あえて今回は聞き返したのだ。
「君は冒険者をやっているのか?それとも、旅人にでもなったのかい?」
「…いや、今は……」
ここで一度、総悟は回答に窮する。
このまま正直に答えても、面倒なことになるのは変わらないので、窮するのは一瞬だったが。
「今は、ウィストレル皇国の総統をやってる。日本で言う内閣総理大臣みたいなもんだよ」
「………まさか蒼月君が、一国の代表になる時が来るなんてね…流石に驚いたよ」
「そりゃどうも」
軽い感じに総悟と弥生は言葉を交わす。
しかし、周りはそんな簡単に受け止めはしなかった。
「なぜ、黙っていたんだい?それに、その能力だってうまく使えば魔王たちと戦えたはずだ。なのに何故君は逃げたんだい?」
「決まってんだろ?どうせ力を独り占めしたかったんだろ?」
クラスの男子たちからは厳しい言葉が投げかけられる。
そのあまりの言い草に、ついに友莉がキレた。
「貴様ら、さっきから聞いていれば…!」
腰に挿した軍刀に手をかけながら詰め寄ろうとする友莉を、総悟が片腕で制止する。
友莉は一瞬総悟を見るが、すぐに身を引いた。
友莉の隣にいた今川外務大臣が口を開く。
「僕達…いやウィストレル皇国外務省としては、先程の発言は聞き捨てなりません。撤回していただきたい。」
「はっ、撤回する必要なんかないね。」
「…爆撃されたいんですか?国を。仲間を。」
まさに一触即発の空気になった彼らだが、その空気は意外な人物により霧散させられた。
「まぁまぁ、今川大臣。もういいよ。」
他でもない、総悟本人である。
「し、しかし…」
総悟は、尚も食い下がろうとする今川外務大臣を目線で制し、その場を離れていこうとする。
呆然と背中を見つめていたウィストレル皇国側の人間も、すぐに我に返って総悟を追いかけ始めたのだった。
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その頃、とある地域の上空をウィストレル皇国空軍のF-7A戦闘機──空軍の新型戦闘機。別名襲電。形状はエス〇ンのASF-Xに似ている。───が飛行していた。
<こちらジュリエット01、目標を確認した。これより攻撃を開始する>
<こちらバーズアイ了解。目標は現在南東方向に向け進行中。速力は時速240km程度と推定される。相対速度に注意されたし>
<ジュリエット、了解>
彼らは、ハルディア共和国に向け進行しているのが発見された飛龍の群れの迎撃任務に当たっていた。
AWACS、コールサイン『バーズアイ』の指示に従って、迎撃担当の第217戦闘飛行隊『ジュリエット隊』が位置につく。
そして一拍置いて、空対空ミサイルが翼下ランチャーから飛び出していく。
飛び出したミサイルは、自身のシーカーと発射母体からの誘導信号を元に、飛龍の群れに向かっていく。
そして発射された数十のミサイルを示す点と、飛竜の群れを示す数十の点が重なり、消失する。
これが意味するのはもちろん目標の撃墜。
ここまでで、不思議に思った人もいるだろう。
何故ウィストレル皇国空軍がハルディア共和国の代わりに迎撃任務を行っているのか。
これは、先の戦争で航空戦力の殆どを消失してしまったハルディア共和国では、まともに飛竜の迎撃すらできないからである。(もっとも、空以外の陸、海に関してもウィストレル皇国が代行しているのだが。)
そんな事情もあり、今に至る。
因みにこの光景は今後しばらくは続くことになる。
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その後、第217戦闘飛行隊は所属基地の『リベルシャール空軍基地(宇晴安全保障条約に基づき、ハルディア共和国内に建設された。)』に帰還していた。
しかしその途中、彼らに緊急電が入った。
<ジュリエット01、応答せよ>
<…こちらジュリエット01。バーズアイ、どうした?>
<海軍さんから緊急要請だ。B32空域にむかえ。>
<B32…?なんでまた>
命令の意図が分からず、ひとりの部隊員が聞く。
帰ってきたのは、衝撃的な回答だった。
<…海軍の駆逐艦が…攻撃されたらしい>
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…ウィストレル皇国国防軍という軍がある。
ウィストレル皇国とは…世界最強と呼ばれ、現世の全世界の国々の経済力を合わせても、勝てるかどうかわからないほどの高い経済力を持った超大国だ。
彼の国に正面から勝てる国などほぼほぼ存在しない。何故なら、軍の質も量も違いすぎるからだ。
ウィストレル皇国国防軍は、陸軍の常備戦力だけで800万人を超える。一説には、1000万人を超えるとの情報もあるほどなのだ。
海軍、空軍も多く、それぞれ670万人と660万人。
まさに世界最多だ。
軍事技術ももちろん世界トップクラスで、あの世界《the second war》では、現実のアメリカ合衆国にあたる、『リベリアン合衆国』よりも先に、イージス・システムを開発するという快挙を成した。
今回攻撃された『リルミーク』は、イージス艦では無かったが…
<こりゃーひでぇな…>
<なんてこった…>
そういう彼らの眼下には、誘爆でもしたのか、艦首のVLSの辺りが大きく削り取られた駆逐艦、『リルミーク』が浮かんでいた。
艦首には未だ炎が燻っており、爆発の激しさが浮かんでいた。
<ドォォォン!!……>
<うおっ…また爆発しやがった>
<見ろ、沈み始めたぞ>
<あぁ…>
彼らの眼下で、『リルミーク』が沈んでいく。
『リルミーク』は、ゆっくりとした速さで沈んでいき、ついには見えなくなってしまった。
<…現在、こちらに救難飛行隊のヘリ部隊が向かっている。君達には、『リルミーク』撃沈の理由を探ってほしい>
<そんなの、艦を引き揚げて調べればいいんじゃないのか?>
<いや、『リルミーク』からの報告で、『なにかに襲われた』ことは分かっている。だから君達にはその、『なにか』を探してほしい>
<…わかった>
その後、捜索を続けた彼らだったが、何一つ、ヒントになりそうなものは見つからなかった。
この後、海軍による捜索活動が行われたが、生存者は乗員132名に対し僅か21名。しかも全員が重くて意識不明の重体。軽くても、肋骨だの足だの腕だのの骨を折っていた。
それ以外にも、死者59名、行方不明者52名という大惨事となった。
この件は後に、『シエラル沖事件』と呼ばれる様になる。
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『リルミーク』撃沈から数日後…
とある部屋で総悟は、ある人物と会話していた。
<は…?B32空域直下の海域の衛星写真、ですか?>
「あぁ…『リルミーク』が撃沈されたのは知ってるだろ?」
<えぇ、まぁ…あぁ、もしかして、衛星写真に何かが写っていないか調べる、って事ですか?>
「そういう事だ…それで、提供できるか?」
<出来るには出来ますけど…何かが写っているとは保証できませんよ?>
「それで構わない」
<…わかりました。すぐに送信します>
「あぁ、頼んだよ」
会話を終えた総悟は、背もたれにもたれかかる。
彼が会話していたのは、『国防宇宙軍地球観測衛星管理室』の渡会 那桜稀管理室長だった。
しばらくして、『国防海軍原因究明調査隊』に画像が送られてきたとの報告が入る。
これを元に、防衛省は原因調査を行うのだった。
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「それでは、報告を始めます」
その一言で、報告会は始まった。
メンバーは『原因究明調査隊』隊長の、満祓 陽月一等海尉、宇良山 みつる防衛大臣、小山内 稀人統合幕僚長、山之内 瑞稀海上幕僚長、撃沈された『リルミーク』が所属していた、大湊第五艦隊司令、弓原 七海三等海将、及び第五艦隊隷下第17護衛隊司令、睦月 颯馬二等海佐、国防宇宙軍地上観測衛星第三管理室担当官、鈴木 陽介三等宙尉。そして総悟と友莉、数人の政府高官である。
「それではまず、今回のような事態になった原因を簡潔に説明いたします」
まず、満祓一尉が、会議室前方に設置された大型スクリーンの横に立つ。
それと同時に、部屋の照明が少し暗くなる。
暗くなった後、一拍置いて、それまでスクリーンにプロジェクターで映されていた画面(国防軍の紋章がくるくる回っている画面)から、数枚の衛星写真らしきものに切り替わっ
「こちらが『シエラル沖事件』発生直前に軍事観測衛星『S-24』で捉えた、事件前の駆逐艦、『リルミーク』の衛星写真です。そしてこちらが、救援に向かった空軍の航空隊が撮影した、沈没直前の写真です」
それらの写真を見たひとりの政府高官が質問を投げかける。
「これは…艦首が削り取られてる?この辺りだと…確かVLSのある辺りか?」
「そうです」
「…何故こんな状態に?」
「今からお話します」
そうすると、また画面は切り替わり、駆逐艦と思しき船が、なにか青い物体に襲われている衛星写真が映る。
「これは…!」
「これは…鯨か?」
この写真を見た数人がざわめき出すが、満祓一尉はそれを鎮めて、再び口を開く。
「こちらは、『リルミーク』が救難信号を発信中、たまたま直上の位置にいた民間の観測衛星が撮った写真です」
「これは…なにかに襲われてるのか?」
「はい。アルセイア連邦の方に問い合せてみたところ、これは『海獣』と呼ばれる特殊生命体であることが判明しました」
「『海獣』…」
会議室に、再びざわめきが起こる。
そのうちに、総悟から質問がなされた。
「一つ聞きたい。それはその海域ではよくあることなのか?」
「それが、この海域では今までほとんどそんなことは無かったそうです」
「…そうなると…違和感があるな」
「どういう事でしょうか?」
弓原三将が総悟に聞く。
総悟は一瞥して、どう説明するか考えてから、再び口を開いた。
「…本来、生物ってのはほとんど縄張りを変えないもののはずなんだよ。もちろん例外はなくはないけど、基本よほどのことがなければ変えないんだ。だから、この『海獣』が、どこか別の所から来たようには思えない。でも現にこいつはあの海域にいる。どうもそれがな…」
「つまり…いるはずのない怪物がいるのがおかしいということですか?」
「…うむ…まぁ、そんなところだよ」
総悟の意見に、会議室は一瞬沈黙に包まれる。
直後、再び満祓一尉が説明を再開する。
「…今回、調査していく過程で、一つ発見がありました。こちらの写真をご覧ください」
そういうと、再びスクリーンの画面が切り替わる。
切り替わった画面には、花の冠や王冠、西洋剣などをあしらった特徴的な紋章が映し出された。
「これは…何かの紋章、か…?」
「はい。こちらは、襲撃してきた海獣の右の胸ヒレのあたりに刻印されていたものです」
「その後、この紋章について調査したところ、我が国の南西にある『フローセル=ロゼルシア連合王国』の『大外洋艦隊』のものと分かりました」
「『フローセル=ロゼルシア連合王国』…?あまり聞かない名だが…新たに組んだ国か?」
「いえ、かなり前から地域大国として君臨していたみたいです。最近になってさらに勢力を広げてきているそうですが…」
「…そんなことはいいんだ。問題は、この一件をどう解決するか、だ」
最後に総悟が低い声で言う。
「やはり…国連(つい最近結成された)に言って、攻撃をするべきでは?こちらも駆逐艦一隻を沈められてるわけですし…」
「流石にそれは事を急ぎすぎだろう…あくまで我々は先進国だ。いきなり武力などの過激な手段に訴えることもあるまい」
「ですが、悠長に構えているわけにも行かないでしょう…やはり、早急に対話を行うべきです」
「だな」
そして、フローセル=ロゼルシア連合王国への外交使節艦隊の派遣が決まった。
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「んで、ここどこ」
「中継地の、シーガス王国の領海とロゼルシア連合王国の領海の間だよー」
「そっか…んじゃあこの船の少なさは?」
「MCF母艦が展開してるからだと思うよー」
「だよねぇ…」
派遣艦隊司令の湯島 麗華(ゆしま れいか。ちなみにお正月企画でちょっと名前とか出てる。)三等管理監と艦隊旗艦のMCF母艦『アマテラス』艦長の川端 未佳(かわばた みか。こちらもお正月企画で(ry)がゆるーい会話を交わす。
まぁそんなことは置いておいて、今回の艦隊編成はMCF母艦1、イージス巡洋艦2、ミニ・イージス艦3、戦略原子力潜水艦1、輸送補給艦1の計8隻。
前回(アルセイア外交派遣艦隊)の時より数は少なくなっているが、戦力的にはあまり変わらない。
その理由は主にMCF母艦が展開しているからである。
MCF母艦とは、その名の通りMCFを搭載、運用するための艦艇で、小型でも量子変換システムなしで40機程度収納出来るが、ありなら2倍以上を搭載できる。
まして今回連れてきているのは、『アマテラス級MCF搭載型原子力空母』の三番艦、『MCVN-59 ツクヨミ』である。
この『ツクヨミ』は、ウィストレル海軍の中でも、最新鋭と言える艦で、MCFと航空機、どちらも搭載することができるという、かなり大型かつ、万能性を持った艦だ。
はっきり言って、彼女が一人いればそこらの軍隊は叩き潰せる。それぐらい、MCF母艦という存在は強力だった。
それから暫くして、遂に艦隊はロゼルシア連合王国の艦船と接触した。ファーストコンタクトとしては、最悪な形で。
如何でしたでしょうか?
今回の件は本当に申し訳ないです…
しばらくはこんな調子になるかと…
ですが、出来る限りで頑張っていきたいと思いますので、これからもこのダメ作者をよろしくお願いしますm(_ _)m
質に関してはお察しです(真顔)
次話もなるべく早くあげていきたいと思いますので、これからもこの作品をよろしくお願いします。




