第十三話 開戦前夜。そして…
遅れて申し訳ありません…高校一年生になってから忙しく…
P,S,活動報告に鈴ヶ谷副総統の設定画のリンクあげました!
是非ご覧ください!
「こちらが、今回の大陸派遣軍の第一次派遣部隊である、第一大陸派遣艦隊並びに第二大陸派遣艦隊の編成です」
そう言いながら、鈴ヶ谷副総統が、総悟に資料を手渡す。
「ありがとう」
そう言うと総悟は、鈴ヶ谷副総統に手渡された資料に目を通していく。
やがて全ての資料に目を通した総悟は、顔を若干上にあげ、口を開いた。
「ご苦労だった。しかし…」
「何か問題がありましたか?」
「あぁ、いや…やけに戦力が多い気がしてな…」
そう言う総悟の手元の資料には、合計五隻以上のルーヴィッヒ・アイゼンクロイツ級戦艦やアークレスト・ヴェラ・レイフォニア級戦艦が含まれている、艦隊の編成が表記されていた。
「確かに、前世界におけるハルヴィア帝国ど同程度の国家を相手にするのであれば、過剰戦力なのかも知れませんが───」
「───異世界ならではの攻撃方法による不測の事態に備えてってやつか」
「えぇ、そうです」
「なるほどな…」
そう言うと総悟は手を顎に当て考えに耽り始めた。
そして暫くしてから再び口を開いた。
「まぁ、派遣艦隊はわかったが…陸上部隊はどうなっている?」
「大半は第二次大陸派遣軍で送り込む予定ですが、先遣隊として第16師団、第52空中機動中隊、第56機甲中隊、海兵隊第7中隊が強襲揚陸艦、並びに随伴の輸送艦で送られています」
「…そうか、わかった」
そう言うと、総悟は椅子から立ち上がり、後ろで手を組んだ格好で、そのまま背後の窓まで歩いていった。
「…何やってるんですか?」
「…いや、別に」
「あっ…総統閣下」
「なんだ?」
「それあんまり格好良くないですよ」
「やめろよ人が折角格好付けてみたくてやってたのに」
そう言いながらがっくりと肩を落とす総悟であった。
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「あー!疲れたー!」
「それなー…」
そんな会話をしながら、ダンジョンから王都に向かって歩くのは、総悟と共にこの世界に召喚された2組の生徒達である。
「今回もなんもなくてよかったなー…」
「それ。前回ヤバかったし」
そう言葉を交わすのは、2組の生徒ではモブキャラ扱いだった、茶髪でどこにでも居そうな顔立ちの多田 洋介と、赤みを帯びた髪のショートヘアが特徴的な三川 真姫。
彼らは、総悟のいじめには基本加担しなかった数少ない生徒の一員である。彼らはいじめがいけないものだと、自覚してはいたため、あまり積極的に総悟に何かをすることは無かった。
彼らの周りには何人かの2組の生徒も歩いていた。
そうして周りとともに歩きながら、ふと突然思い出したように、多田がポツリと言葉を零した。
「そーいやさ」
「…何?」
「いや、総悟の奴どうしてんのかなぁ…って」
「あー…」
「確かに」と真姫は頷く。
既に総悟がこの二組から抜けてからは一ヶ月半近くが経過しており、抜けた当初には一部の生徒に若干漂っていた暗い空気も、今となってはほぼ霧散してしまっていた。
「どっかで野垂れ死んでんだろ、どうせ」
そう言うのは積極的に総悟をいじめていた、黒髪メガネの針内 寛太。
彼はある理由から、積極的に総悟いじめていた生徒である。
「よ、容赦ねぇな…お前」
「事実だろう?あの程度のステータスじゃ、この世界では生きていけないさ」
「それは…」
実際、針内の言う事はもっともだった。
総悟のステータスでは、本来この世界で生きることなど不可能に近いのだ。
総悟の場合、隠しスキルがあり、なおかつ『国を召喚できる』と言う、破格の能力があったからこそ、今も生きながらえているのだ。
もちろんそんなこと、彼らはまだ知る由もないが。
「…まぁ、いいや。この話は終わりにしよう」
そう言って、多田は話を一度切った。
それにより一瞬の沈黙が生まれるが、それもまた長くは続かなかった。
「じゃあさ、針内」
「なんだい?」
「お前の好きな人教えてくれよ!」
「なんでいきなり!?」
いきなりすぎる話題変更に若干たじろいた針内だったが、すぐに冷静になって、迷いなく多田の質問に答えた。
「そりゃあもちろん、四ノ宮さんさ…」
「うん、知ってた」
「ならなんで聞いたんだい君は?」
「お前なんで知ってんのに聞いたの?」みたいな目で見てくる針内に対して、多田はこう答えた。
「なんとなくだ!」
「いやそんな無駄に『ドヤァ』みたいな顔されても」
針内が心底呆れたように頭を振る。
そして今度は反撃とばかりに、多田に質問し返した。
「そういう君はどうなんだい?」
「何が?」
「…いや、好きな人」
「いない」
多田はとてもいい顔(『(ヾノ・ω・`)ナイナイ』みたいな顔)で『いない』と言いきった。
それを見た針内は多少驚いたような顔をして、こちらを見返した。
「…マジで?」
「マジマジ」
「…そうなんだ。まぁ、それならそれでいいけどね…」
そう言うと、再び針内は前を向いて歩き出した。
それを横目で見ていた三川が、完全に呆れたような顔をしていたのは秘密である。
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さて、ところ変わって2組の生徒たちの先頭。
そこには四ノ宮と天堂祠、そして冷峰の三人、そして白良木と蒼月(妹の方。以後名前呼び)が歩いていた。
その四人で黙々と歩いていると、冷峰が沈黙に耐えられなくなったかのように声を上げた。
「…今回は危なげなく攻略できてよかったね」
「そうだね…」
若干沈んだ声で四ノ宮がそう返した。
気分を少しでも上げようとしてあえなく失敗した冷峰は、またも気まずい空気が一段と深まったのに気づくが、それでもなんとか盛り上げようと、話題を振る。
「そ、そうだ!最後の天堂祠さんの『ニーフェル・ノーツ』、凄かったよね!剣撃系の魔法なのに、遠距離攻撃ができるなんて…本当にすごいよ!」
「そう言って貰えると嬉しいわね…でも、貴方の『フレイア・ストライク』もなかなかの物じゃなかったかしら?」
「そ、そうかな?」
褒められて、少し照れながらはにかむ冷峰だが、肝心の空気感は変わっていなかった。
相変わらず四ノ宮は少しうつむきながらトボトボと歩みを勧めていて、白良木はきりっと前を向いてはいるが、こちらの会話に入ったりするようなこともなく、ただただ、軍隊の行進のようにひたすら歩き続けていた。
神奈は少しくらい表情ではあるが、しっかりと歩き続けていて、時折冷峰達の方にも目線を向けて来ていた。
結局、空気感は変わることなく、彼らは王城に帰還するのであった。
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「そう言えば…」
セルジュオン城に戻った二組の生徒達は、食堂で夕食をとっていた。
すると、食事の最中にリーフェル王女が思い出したようにポツリと切り出した。
「そう言えば、東方のアルセイア王国という国と、その隣国が今戦争になっているそうですね」
「そうなんですか?」
「はい…」
そう言うと王女はそこで一度言葉を切って水を飲んだ。
それを見た二組の誰かが、リーフェルに質問する。
「でも、それって俺達にはあんまり関係ないですよね?」
「はい…そうなんですが…少し気になる情報がありまして…」
それを聞いた誰かが、思わずと言った感じの声音で聞き返す。
「気になる情報…ですか?」
「ええ…なんでも、小島のような大きさの鉄の船を持つ国…確か、ウィストレル皇国という国ががアルセイア王国に味方しているとか…」
「ウィストレル皇国、ですか?」
「えぇ…」
それを聞いた二組の生徒達は、若干ザワつく。
木造戦列艦が主力とされるこの世界で、鉄の船はかなり珍しいとされる代物なのだ。
まして、鉄の船ともなれば第二次世界大戦時のような戦艦などでなくとも、第一次世界大戦の時のような装甲艦のような船である可能性があるのだ。
そうなれば、この世界に科学技術を持ったウィストレル皇国という国がある可能性が出てくる。
科学の世界の住民であった彼らからすれば、そういった国はまさに行きたい場所なのだ。
どんな国なのかを、各々が想像していた。
「その国とは、この国は交流があるんですか?」
「いえ、残念ながら…」
そう言って王女は肩を落とす。
それに合わせて二組の生徒達からも、「残念だ…」という感じの雰囲気が漂ってくる。
それを見かねたのか、王女が生徒達に声をかける。
「あ、そう言えば皆さん」
「はい?」
「二週間後ぐらいには東の方に遠征に出て、しっかりとした実戦経験を積んでもらいたいと思っていますのでよろしくお願いします」
「あー…なるほど」
すると今度は生徒達は遠征の事について話し始めたのだった。
その間、クラスのひとりの女子は別のことを考えていた。
「ウィストレル皇国…鉄の船ってまさか…あの世界の国なの…?……蒼月総統…」
彼女は暮原 充希。
彼女もまた、あの世界───『the another world』───で、大国と言われた、『とある国』を率いていた人間であった。
そしてこの2週間後、彼らはアルセイア王国へ遠征に向かう事となったのだった。
次話もなるべく早く上げていきたいと思います。
これからも、本作品をよろしくお願いします。




