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第九話 捕捉、そして接触

第九話です。


あまり筆が進まず、今回はかなり遅れてしまいました…申し訳ありません。



「現況は確認出来ないのか!?」

 

「教員艦の『冬島』がいるだろ!最大速力で急行させろ!」

 

「了解!海軍司令部より『冬島』──」

 

「追跡はどうする!?」

 

「『冬島』からヘリ出して追跡させろ!」

 

「それだったら航空機を使った方が早いぞ!」

 

「付近に航空機は!」

 

「小松のP-3Cが一機います!」

 

「よし!追跡させろ!」

 

「海軍司令部より『カワウ』──」

 

 

現在、国防軍海軍司令部は『浜名』襲撃の報告を受け、蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

 

将校が指示を出し、オペレーターが各所にそれを、矢継ぎ早に伝え続けていた。

 


既に指示を受け、曳航のため『浜名』に向け航行していた、東舞校の教員艦『冬島』が急行しており、襲撃した船舶、及び強奪されたと思われる『浜名』の追跡のために、たまたま付近を哨戒中だった小松基地のP-3C対潜哨戒機も指示を受け、行動を開始している。

 

とそこに、扉を開いて入ってくる人物がいた。

 

「…現況はどうなっている?」

 

「そ、総統閣下!」

 

入室してきた人物を見るなり、その場にいた人間全員が敬礼を行う。

言わずもがなウィストレル皇国総統、蒼月総悟そのひとである。

 

「今は敬礼はいい。それよりも現状を報告しろ。えーっと…君は?」

 

「は…田母神たもがみ 武尊たける一等海将です。ですが、未だ現況が把握出来ていませんので……」

 

「…何故だ?」

 

「は…僚艦がいた訳ではありませんし、現在急行中の教員艦が到着するまでは、はっきりとしたことはなんとも……」 

 

「ならせめて、現在までにわかっていることを教えてくれ。」

 

「…分かりました。」

 

そう言うと、田母神は机の盤面に備え付けてある液晶パネルを操作し、海図を呼び出す。

 

更にパネルを操作すると、海図上に、青い船と赤い船が寄り添うように現れ、さらにそこから離れた位置に、青い船と、青い航空機のイラストが出現する。

 

それを確認した田母神が口を開く。

 

「これが、現在までに把握出来ている艦艇、及び航空機の配置です。まず、ことが発覚したのがつい先程、十分ほど前のことです」

 

「なぜ分かったんだ」

 

「まず最初に、曳航のため『浜名』に向かっていた教員艦『冬島』が、『浜名』に通信を図ったところ、応答がなかったことです。その報告があった十分後、海洋安全管理局に男の声で、『この船はハルヴィア帝国軍が制圧した。女は貰っていく。』と通信があったそうです」

 

「それで海洋安全管理局が気付いた、と……」

 

「はい。その後、我々に事態解決のための協力要請が来たということです」

 

「ふむ…」

 

そこまでの話を聞いた蒼月は黙り、考え込む姿勢を取る。

 

 

「…しかし、いかに学生艦と言えど近づかれれば気づけたはずだ…撃てばよかったのではないか?」

 

「…学生艦ですし、撃つのを躊躇ってしまった可能性はありますね…」

 

「しかし、制圧されたものをもうどうこう言っても仕方ないでしょう。今は学生の救出に尽くすべきです」

 

別の将校がそう言う。

確かにそう言われればそうだろう。

理由の究明は、学生を助けてからいくらでもやればいい。

と、その時モニターに向かっていたオペレーターが 、叫ぶように報告してきた。



「『カワウ』より入電!『浜名』を捕捉したとのこと!『冬島』からも同様の報告が入ってきています!」

 

 

この報告に、総悟達が安堵する。

しかし、ここで一人の将校があることに気づく。

 

 

「あれ…?この進路で行くと……あっ!!?」

 

「ん?どうした?」

 


総悟は何かを悩む様子を見せる将校に声をかける。

 

 

「…『浜名』が直進した場合の航路上に北佐世保校の学生艦『湯浅ゆあさ』と『天涙てんる』がいます……」

 

「なんだと!?じゃあ…『浜名』とは……」

 

「…確実に接触します」

 

「…なんてこったい」

 


一瞬、ディスプレイに集まっていた将校全員を沈黙が包むが、二等海将の階級章を付けた将校がまず、口を開く。

 

 

「…この際、『湯浅』と『天涙』を先回りさせて、抑え込む…そうでなくとも、遅滞戦ぐらいはやらせれば…」

 

「馬鹿を言え!学生艦だぞ!?」

 

「だが…『湯浅』、『天涙』は『湯布院ゆふいん型重巡』の系統だろ?基準排水量1万トン越えの高速重巡程、今回の駆逐艦相手の遅滞戦に使える艦はいないぞ」

 

「確かに、1万トン級の36ノット越えの『湯布院型』なら駆逐艦相手の遅滞戦は早いだろうが…」

 

 

『湯布院型重巡洋艦』とは、最上型重巡洋艦を元に海軍技術研究所が作り上げた高速重巡洋艦である。

現在は既に第一線から退き、海洋安全管理局の所属を経て海洋安全管理学校の学生艦となっている。

 

この時、『湯浅』、『天涙』の二隻は、東舞校との合同訓練の為、たまたまこの海域に進出していた。

そして、待機をしていた所に『浜名』が突っ込む形で接近していたのだ。

 


「どうする…どうすればいい…?」

 


総悟達が頭を抱えはじめる。

 

そもそも、今回はただでさえ領海外で起こった一件だ。

対応を間違えれば、外交交渉中のアルセイア王国も敵に回す可能性がある。


 

「…『カワウ』が『浜名』を捕捉しました!」

 


この報告に、総悟達が頭を上げる。

 


「現在地は!?」

 

「我が国の領海外42km地点です!……報告!『冬島』搭載の『シーホーク』も『浜名』を確認したとのこと!」

 

「よし!」


  

総悟は思わずガッツポーズをとる。

シーホークには機銃が載せてある。それを使えば威嚇射撃で足止めぐらいはできるはずだ。

 


「あれ?待ってください」



ここで、一人の将校が

 

 

「よく考えてみれば『浜名』の機関は止まっていたはずです。ならばなぜ動いているんでしょうか?」

 


と、尋ねる。


 

「恐らく、ハルヴィア帝国が何かやったんだろうな…」

 

「なるほど…」 

 

 

この時点で既に、国防軍司令部はハルヴィア帝国が『浜名』の向かっている方向に存在している事を、薄々気付いていた。

つまりは、ハルヴィア帝国が『浜名』から技術を盗もうとしているのだということも分かっていた。

 

 

「と、それより…シーホークに威嚇射撃をさせろ!」

 

「了解!司令部よりシーホーク────」


 

オペレーターのその声を聞きながら、将校全員が椅子に座り込む。

  


「これで一安心……」

 

「……出来たらいいな…はぁ…」

 


総悟達は、ため息をついていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

「シーホークより司令部。命令了解。威嚇射撃開始しまーす………」

 

「…司令部は何だって?」

 

「『『浜名』前方の海面に向け、威嚇射撃を実施せよ。』との事です」

 

「…AGM-114(ヘルファイア)は?」

 

「…撃たないみたいですね」

 

「そうか…わかった」

 


司令部で総悟達が伸びている頃、現場の『冬島』搭載機であるシーホークの機内では、乗員達が会話していた。

 


「────M2、装填よし。各部異常なし……射撃用意完了。いつでも撃てます」

 

「…目標との距離を詰めてから発砲する。いいな?」

 

「了解」

 

 

機内に響き渡るメインローターの音をうるさく感じながらも、乗員四名は『浜名』にむけ、飛行していた。

 

 

「…不安か?」

 


機長である山根やまね 源一郎げんいちろうが、副操縦士の佐田さた 廉士れんしに問いかける。

佐田はまだ一年目で、若かった。

故に、学生艦を撃たなければならないかもしれないという恐怖に、押しつぶされてしまいそうになっていた。


 

「いえ、そんな事は…」

 

「そうか…無理はするなよ」

 

 

佐田は強がってみせるが、体はまだ少しだけ震えていた。

 

後ろの兵員室には、機銃手の三上みかみ 優聖ゆうひと、中山なかやま 祐希ゆうきがいた。

彼らは、佐田より一期先輩にあたり、ソマリア海賊の制圧で人を撃ったこともあったため、比較的落ち着いていた。

 

 

「…『浜名』の子達、大丈夫なんかな」

 

「…今は…信じるしかないさ」

 

「…まぁ、確かにそうやね。信じるしかないか…」

 

 

そう言うと、三上は弱々しい笑みを浮かべる。


───彼女は過去に、『浜名』に乗っていたことがあった。

だからこそ、思い出の詰まった艦と自分の後輩達のために、この作戦にかける思いは人一倍強かった。

 

 

「目標との距離、約2000。…そろそろ撃つぞ」

 

「分かっとるよ…」

 

 

中山の言葉にそう応じると、彼女はM2に取り付く。

 

 

「目標との距離、約1800…射撃用意よし。」

 

「………撃て!」

 

 

中山の号令と共に、M2はけたたましい射撃音を立てて12.7mm弾が吐き出されていく。

 

2秒間引き金を引いたあと、すぐに引き金を引くのをやめる。

 

吐き出された12.7mm弾は、航行する『浜名』の前方に着弾する。

 

それを眺めていた三上は、次の瞬間あることに気がつく。 

 

 

「艦中央!機銃旋回中!」

 

「…退避!しっかり捕まってろ!」

 

 

急激に機体が傾くと同時に、今までシーホークがホバリングしていた場所を、『浜名』の機銃の曳光弾が通り過ぎる。

曳光弾の光は、舐めるようにこちらに向かってくる。

 

 

「退避、退避、退避!下がれ!」

 


急激な降下に、機体が揚力を失いかける。

同時に、三上たちの体が浮かび上がる。

 

 

ダンッバンッ!…チュイン!

 

「きゃっ……」

 

「くっそ…!」

 


数発の機銃弾が機内に飛び込み、音を立てる。


しかし、弾切れを起こしたのか、銃弾の雨はすぐに止んだ。

 

 

「よし、今のうちに安全圏に…!」

 

 

シーホークは、命からがら『浜名』から離れるのだった。

 

 


 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「…っ…!…はぁ…はぁ…」

 

「大丈夫なん!?中山君…」

 

「大丈夫……ちょっと脇腹かすっただけだから……」 

 

 

そう言う中山の額には、脂汗が浮かんでいた。

 

あの時、三上を庇うように上に被さった中山は、脇腹に一発の25mm弾が掠っていた。

 

…いや、掠るというのには語弊があるだろう。


25mm弾が掠った彼の左脇腹は、抉れていると言った方がいいくらいに、損傷していた。

 


「そんな怪我して…大丈夫なわけないやんか!」

 

「大丈夫だって…」

 

「…三上、中山をあんま喋らせんな。余計にひどくなるぞ」

 

「う………了解……」

 

 

シーホークは既に『冬島』の上空に達そうとしていた。

 

着艦でき次第、中山は艦内に一時的に搬送され、ヘリの準備が整い次第、近くに来ている病院船に移し、そこから更に本土に移されることになっていた。

 

 

そして『冬島』は、『浜名』を武力で制圧することとなった。

 

沈めはしない。

ある特殊部隊を使った救出作戦を、司令部は実行することにしたのだ。

 

勿論、失敗すれば最悪撃沈だが…

 


撃沈か生存か…それは彼等の作戦の可否にかかっているのだった───

 

 


『浜名』奪還作戦はまだ続きます。


次話もなるべく早くにあげたいのですが…何分、受験生なもので…下手すれば三月中旬まであげれません…


でも、なるべくあげたいと思いますので、これからも本作品をよろしくお願いします!

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