第八話 強襲事件
第八話です。
あ、そう言えば。
前話から、少し書き方変えました。
見にくかったら教えてください。
「アルセイア王国外務局所属、ベルフェースト・アンゴレラです。宜しくお願いします。」
「ウィストレル皇国外務省、岸田萌です。こちらこそよろしくお願いします。」
あれから数十分後、アルセイア王国から派遣された外交官が、岸田達が待機していた部屋に入室してきた。
アルセイア王国外交官のベルフェーストは入室した直後、外交官にしてはあまりに幼い岸田の見た目に一瞬驚いてしまうが、今までに経験が無い訳では無いので、すぐに自分を納得させた。
「それで、貴国は捕虜返還交渉を行いたいということですが…」
「ええ、事情の方は…」
「既に彼の方から聞いています。我が国の艦隊が貴国の領海で戦闘を行ったのですよね。」
そう言うと、ベルフェーストはグレイルの方に目線を向ける。
「端的に言えば、そうなります。」
岸田はベルフェーストの話に頷いてみせると、 早速、交渉に入った。
「まずは、我が国から貴国に捕虜を返還するにあたって、要求したいことがあります。」
「要求、ですか…」
ベルフェーストは、不安を覚えた。
港に停泊した艦隊を見て、確実に自国を超える軍事力をバックに何を要求されるかわかったものではないと思ったからだ。
だが、ウィストレル皇国側が要求してきたのは、予想とは少し違うものだった
「我が国から要求するのは、国交の樹立です。」
「………は?」
一瞬、呆気に取られるベルフェーストだったが、すぐに気を取り直す。
「こ、国交樹立、ですか…」
「はい。我が国はこの世界に転移したばかりでして、まだ、この世界のいづれの国とも国交が樹立出来ていないのです。」
「て、転移ですか!?……なるほど……」
ベルフェーストは考え込む。
自身だけで決めていいものかわからなかったからだ。
暫し考え、結論を出す。
「…流石に、私ひとりの判断で決めるわけにも行きませんし、取り敢えず、国交の樹立の件は一度持ち帰らせていただけませんか?」
「…分かりました。」
こうして、ウィストレル皇国とアルセイア王国の最初の接触は終了するのだった。
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「はー…なんとかうまく行きそうね…」
会談終了後、岸田は港に停泊している、空母『あまぎ』の艦内にて休んでいた。
ベルフェースト、もとい、アルセイア王国側からもてなしが提案されたが、丁重にお断りし、岸田は艦に戻ってきていた。
艦内で割り当てられた部屋は、当然ながら一人部屋で、めいいっぱいくつろぐことが出来るようになっていた。
時刻は既に夜九時を回っており、岸田は夕食も済ませてあった。
会談はかなり手応えがあったと言えた。
そして、その手応えを感じつつ、岸田はくつろいでいた。
「明日も会談して…国交樹立が出来たら、次はハルヴィア帝国に行かないとなぁ…めんどい……」
と、岸田が部屋でぼやいていると、部屋のドアがノックされる。
彼女が「どーぞー」と返事をすると、一人の女性士官が入ってくる。
「失礼します…岸田さん、至急艦橋までお越しください。」
「………わかったわ。」
岸田はモゾモゾと起き出すと、身なりを整えて、女性士官に先導されつつ、艦橋に向かうのだった。
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「お、来たね?」
「こんな時間に呼び出して…一体なんのつもりですか?」
飄々としたような態度で椅子に座って、こちらに喋りかけてくる浦地司令に対し、若干イライラしたような口調で、岸田は応じた。
「いや、至急君に伝えておきたいことがあってね…」
「…何かあったんですか?」
こんな時間に呼びたされるということは、かなり重大なことであるという事は、なんとなく岸田にも理解出来たが、考えてもそれがなんなのかは全くわからなった。
「いや、先程、本土から連絡があってね…」
そう言うと、一度そこで、浦地は言葉を切る。
そして再び開かれた口から飛び出した言葉は、岸田に衝撃をもたらした。
「…夜間訓練中の横須賀海安校の教育艦一隻がハルヴィア帝国を名乗る海賊に強襲されたそうだ。」
時刻は三時間ほど前に遡る…
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ウィストレル皇国旧日本海側領海より更に40kmほど進んだ位置に、一隻の駆逐艦が停泊していた。
ウィストレル皇国、海洋安全管理局横須賀女子校所属、教育艦『浜名』である。
普通、洋上停泊なんてことは行われないのだが、『浜名』が洋上停泊しているのには理由があった。
『浜名』がここまで進出していたのは、新入生の外洋訓練のためである。
しかし午後4時ごろ、『浜名』の機関が故障、停止を余儀なくされたのだ。
レーダーも、電力節約のために30分ほど前に消してしまった。
既に二時間以上が経過しているが、機関は未だ修理が終わらず、低速航行すらやっとの状態だった。
既に曳航のための支援は学校に要請しているが、到着までにはまだ一時間以上が残っていた。
「はぁー…ツイてない…」
「ま、まぁまぁ。そんな気を落とさないでよ副長さん。」
「いや、私には久海という名前がありますから…」
「あ、そっか。じゃあ、久海さん。」
「別に二回いう必要ないでしょ…」
『浜名』艦橋では艦長の氷見 結花と樋口 久海が会話していた。
「それにしても平和だね…」
「艦長それフラグですよ?」
微笑を浮べながら氷見の問に応じるのは、井田 海来瑠。『浜名』の航海長である。
「あはは、確かにそうだね。」
と、たわいもない話をしていると、唐突に伝声管から報告が上がる。
『艦橋、こちら見張り台。不審船団発見。数は3。右舷側、距離は…3km程です。』
「!?…近いね…気付けなかった?」
『すいません、新月なので真っ暗なんです。艦種もハッキリとは……』
「まぁ、新月なら仕方ないよ。敵だったら困るなぁ…取り敢えず副長。ライトガンで信号送るように右舷の見張りの人に伝えて。文面は『貴艦ノ所属ヲ知ラセ。』で。」
「分かりました。」
そう言うと、副長は右舷側の見張りデッキに向かって行った。
しかし、その直後、
『…対象船舶に発砲炎を確認!発射弾数は不明!』
悲鳴のような報告が飛ばされてきた。
「!?」
咄嗟のことに未だ一年生の氷見は対応出来ず、耐衝撃姿勢も満足に取れないまま『浜名』は、周囲に着弾した弾頭によって大きく揺さぶられ、艦内で何人もが転倒してしまう。
しかし、矢継ぎ早に次の報告が飛ぶ。
『対象船舶、急速接近!距離2km!』
「ッ!…各部被害報告!砲雷員は正当防衛射撃用意!機関も始動!低速でもいいから出して!以上を各部に回して!」
「わ、わかりました!」
海来瑠が、すぐさま伝声管に駆け寄ると同時に、久海が戻ってくる。
「艦長…これは…」
「副長…総員戦闘配置。」
「…撃つんですか!?」
「相手が撃ってきたってことは、私達と敵対しているということ。なら、私は『浜名』艦長として、クラスメイトを守る義務があるの。」
「ですが……!」
「もう迷ってる暇は…」
しかし、伝声管より、再び悲鳴のような報告が上がる
『対象船舶、我が艦に接触します!』
ゴウン!ガ、ガガガッガン!
直後、艦体が軋むような音を立てる。
艦橋の天井ハッチが開き、マスト見張りの中田 恵美が飛び込んでくる。
「艦長!艦に接舷突入されました!」
「ええっ!?」
「接舷突入だと!?」
直後、剣を持った屈強な男達が、艦橋に雪崩込んでくる。
剣を向けられ、四人は動けなくなる。
「動くな!」
と、男達が叫ぶ。
教育艦『浜名』が制圧された瞬間だった。
いやー、物語がついに動き出しました。
ここからどうなっていくのでしょうか?
ご期待下さい!




