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真贋

 最初に彼を見た時、衝撃を受けた。

(素敵な人だな)

 そう思って視線が釘付けになった。脊髄に稲妻が通り抜けたような衝撃だった。

 周りの人は彼を不細工と評価していることを後になって知ったが、何度見ても私にはとても素敵な人に見える。もしかしたら人と美醜の判断基準が違うのかもしれない。

 ただ、話しかけるのは恥ずかしいから、彼の横に座るだけだった。

「初めまして、同じ期ですね。俺は一之瀬隼人っていいます。よろしくお願いします」

 話しかけてくれた。

 嬉しかった。

「……」ペコリッ

「あの、お名前は?」

「しらとりさお」

 恥ずかしさを隠して精一杯の勇気を振り絞って彼に応える。この瞬間、きっと私は一日分のエネルギーを使っただろう。


 私は口下手だから上手く言葉にはできないけれど、行動でなんとか気持ちを表現したかった。

「……」グイッ

「ん? 何だい?」

 こんな私でも彼は無下に扱うことはなかった。

 そのままでいいんだと言われているようで嬉しかった。

 彼と一緒にいたいから、些細な質問も彼にするようになった。

「はっはー、せやろせやろ」

 ボディータッチはずるい。

 頭を撫でられると嬉しくて、どうしようもなくあなたを好きになってしまうから。


「じゃあ、次の問題ね。甲が乙に土地を貸して――」

 彼と一緒に口述の対策をしたおかげで、以前の私に比べてだいぶ話せるようになった。

「おお、よくできたね」

「えへへ」

 彼とずっと一緒にいたい、そう思うようになった。


 彼を好きであること以外に、告白をする理由はいらなかった。

「でも僕たちはかなり年が離れているし、親子みたいじゃないかい。それに――」

 告白を聞いた彼は傷ついているようだった。今まで見え隠れしていた「傷」がはっきりと見えた。

 何かを抱えて生きているように、苦しそうだった。


 私が彼の心の扉を開くことができるしかない。

 今まで彼に助けてもらった、彼を好きになることができた、そのお礼をするときが、今来たのだとそう思った。


 涙を流す彼の横で、がんばれ、がんばれ、と心の中で応援する。

 この声があなたに届きますように、そう祈りながら。


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