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身近な犯罪

 俺の仕掛けた罠は簡単なものだ。

 岩崎に犯罪をさせて、その行動を録音録画する。そして警察に捕まえさせて、刑務所に入ってもらう。とても単純なことだった。


 まず俺は家に強盗が押し入ったと警察にあらかじめ通報しておいた。岩崎がちょうど車を発車する瞬間を目撃するように通報のタイミングを合わせておいた。

 その後、トランクの上に人が乗った車が暴走している旨の通報をしておく。

 結果、いつの間にか複数のパトカーに囲まれている、というわけだ。

 もっとも、南さんに危害が及ばないように配慮する必要はあったが、それもスキルで可能性を消しておいた。



「まず、お前は南さんに付きまとった。彼女が何度も嫌だと言っているにもかかわらずだ。ストーカー規制法違反だな」

 倒れた状態から起き上がった俺は、岩崎に罪状を突きつける。

「ぐっ」

「次にお前は、勝手に南さんの家に入った。住居侵入罪だ。ナイフを盗んで窃盗罪、ナイフで俺に南さんを渡せと俺を脅した、強要罪だ」

 俺が罪状をあげていると、警察が彼を逮捕しようと降りてきた。

 彼らは岩崎が逃げないうちに後ろ手に手錠をかける。

「そして、ナイフを俺の顔に向けて脅し時計を盗んだ。これは強盗罪だ。この時点で犯罪は5つだ」

 ロ〇ックスの時計は柏原様にお願いして用意してもらった。きちんと返しますという前に幾つも渡してこようとしてきたので、一つだけでいいと断った。

 これ一つだけで俺の年収に匹敵するらしい。

「ぐぬぬぬぬ」

 手錠をかけられた岩崎が悔しそうにうめく。

 なぜか警察の人も俺の演説を聞いていた。

「南愛さんの車を脅して盗んだ。またもや強盗罪だな」

「借りただけだろうが! な、そうだろ、愛!?」

「はっ、犯罪者はみんなそう言うんだよ」

 見苦しい言い訳だ。

 車を降りた南さんが、視線から逃れるように俺の後ろに隠れる。

「南さんを無理やり車に乗せた、加害目的略取罪に、監禁罪だ。おめでとう、8つ目だな」

「監禁? 車の中に入れただけで監禁かよ。ドアを開ければ逃げられるだろうが!」

「車で走れば降りられないだろう。実質的には閉じ込めているのと変わらないんだよ」

 これだから法律を知らないやつは困る。まあわざとこういう犯罪ばかり選んだんだけどな。

「南さんの手をつかんだり、手を出そうとしたりした、暴行罪だ」

 まあ暴行罪は軽いので大したことはない。きっと起訴されないだろう。

「車から俺を振り落とそうとした。これは……殺人未遂罪だ! おめでとう二桁達成だぞ」

 そして俺はとどめの一撃を入れる。頭の中でファンファーレが鳴り響く。

「な!? せいぜい危険運転致傷罪だろう!」

 急に強気に法律の知識を披露してくる。しかもなかなか良い線の主張だ。

「面白い主張だ。一理あるだろう。しかし今回の車はボル〇S80という車種のタイプで、それなりの高さがあった。下はコンクリートで落ちれば危ないだろ。それにお前は急発進急ブレーキをかけたり、左右に振ったりと、明らかに振り落とす動きをしていたな。極めつきは時速90キロを超えた速さ、俺を殺そうとしているとしか思えない」

 横にいたベテランの刑事さんがうんうん、と頷く。なんでこいつこんなに詳しいんだという顔をしている。

「は、速さはそんなに出てねえよ。せいぜい40キロくらいだったぜ」

「甘いな。この表示が見えないのか」

 俺は手元に隠してあった測定器を見せる。車の上で振り落とされそうになりながら、スピードガンでも測定していたのだ。そこには98km/hの文字があった。

 刑事さんが「なんでこいつそんな余裕があったの?」という顔でこちらを見てくる。やめて、俺は逮捕しないで。


 岩崎の顔が怒りに染まる。

「違う! 俺ははめられたんだ! そこの男に! 全部そいつの仕業なんだ! そもそもそいつの言っていることに証拠はないぜ!」

「はいはい、詳しい話は所で聞くから」

 あたらずとも遠からずな発言をした岩崎がパトカーに押し込まれる。


「お二人にも詳しい話を聞きたいので、署までご同行願えますか。

「「はい」」

 俺と南さんもその日は一日中話を聞かれることになった。

 全ての犯行を録音録画したボイスレコーダーとボールペン型カメラを見せると、警察の人はきちんと納得してくれたので、捜査公判はスムーズにいくだろう。



(コメント)

 実質的には7個、住居侵入、窃盗、強盗、強盗、監禁、加害目的略取、殺人未遂罪です。

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